有明海が生んだ奇跡の光景
嬉野温泉から一夜明けて、バイクを有明海方面に走らせる。ドゥカティ・スクランブラー400は気持ちよく走ってくれる。L字型に配置された2気筒エンジンは40馬力ながら、のんびり走るならなにも不足はない。車重は183㎏だから、とにかく軽い。ツーリングするうえで、この車重は身軽でストレスがない。
目指したのは太良町。そもそも、有明海は干満差が大きく、この太良では干満差による不思議な光景を目にすることができるのだ。佐賀から諫早をつなぐ国道207号の別名は「たらカキ焼海道」で、カキ小屋が立ち並ぶ国道を軽く流しながら、海中鳥居に向かう。ちなみに、全国各地にあるカキ小屋だが、その発祥は太良町。これを知ると、カキ小屋も立ち寄りたい。
海中鳥居には9時ごろに到着。この時間は干潮とのことで潮が引いており、鳥居にも行けるし道路も普通に通行できる。この海中鳥居をくぐっていくと、ラスボスが潜むダンジョンに続いてきそうな雰囲気があり、テンションも上がっていく。海中道路も問題なく走れたが、これが時間が経つとどうなるか興味津々である。
せっかくなので、太良の名物・竹崎カキと竹崎カニでランチを楽しんで時間をつぶしたい。そこで、漁師が営む勇栄丸に行ってみた。BBQスタイルでいただく竹崎カキは焼いた時に身が縮みにくく、身は厚くボリューミーだ。また、甘みと旨味が強く、カキ本来の味が濃く感じられるではないか。もうひとつ忘れてはならないのが、竹崎カニ。どちらも絶品なので、太良に行ったら味わってほしい。
ランチを済ませて海中鳥居に向かうと、4時間前とずいぶんと光景が違う。鳥居はまだ迫っていないものの、海中道路はまさしく文字通り。今回は取材時間の関係で待機することができなかったが、この光景は圧巻のひと言。時間をおいて再度訪れることができると、ここは面白いだろう。
そんなこんなで今回の旅も終了。「佐賀県は何もない」説を冒頭でしたが、皆さんはどう感じただろうか。意外にも、現地で地元の人たちからこの言葉を耳にした。しかも、1度や2度レベルではない。これは佐賀県民の生真面目な性格からくる謙遜なのだと思う。今回の旅のなかで気さくで温かい方々ばかりだったことも印象に残っている。佐賀県の一番の魅力は、この佐賀県民たちの温かい人柄なのかもしれない。
たしかに、佐賀県にはド迫力の山岳スカイラインはない。しかし、景色のいいエリアやグルメ、温泉など魅力はあふれている。佐賀県は九州ツーリングにおいて「通りやすい」特徴があるので、気になるエリアをつまめばいい。素通りするのはもったいないのだ。今回取り上げた呼子、嬉野温泉、太良はどれもが半日でも楽しめるエリア。自由自在に組み込めばいい。これは出張で九州入りしたときにも有効なハズだ。ボクはまた嬉野温泉に行きたい。