ここで旅人たちは出会い、別れる
今回の拠点は、銭湯が営んでいるライダーハウス「みどり湯」。独特な雰囲気を持つ、なんとも魅力的な場所だ。ライダーだけでなく、自転車や電車などさまざまな手段で旅人が訪れ、ここで出会いと別れを繰り返している。
このみどり湯には決まりごとがある。それは「自己紹介」と「合唱」。5人以上集まるとそれらを行う決まりがあるそうで、ロビーに全員が集まると、店主の口上が始まる。すると部屋は暗転し、昭和ちっくなミラーボールが回り、各自の自己紹介タイムへ。どこからきて、ここにはなにをしに来たのか。全員が思いおもいの自分語りをして、そのあとは肩を組んで松山千春の北海道の地を想って作った曲「大空と大地の中で」を肩を組んで全員で歌うのだ。
「肩を組む」なんて、恥ずかしさもあって、そうそうやる機会なんてない。だが、ここに来た道のりと、北の大地がそうさせるのか、自然に受け入れている自分がいた。人とのつながりを強く感じ、それがまた「北海道っていいな」と思わせてくれるのだ。自己紹介をしたので距離も近く、それぞれの旅の話を聞きながら夜は更けていく……。次の日になると、旅人達は、お互いの旅の無事を祈ってそれぞれの目的地に出発する。ある人は利尻島へ渡り、ある人は海沿いを走って日本の外周を自転車で周る旅を再開する。そして僕は、日本最北端・宗谷岬。そこで、夢にまで見た憧れの道「シェルロード」をついに走ることができたのだ。