1. HOME
  2. お知らせ
  3. 特集記事1
  4. ヤマハのコト創り:VOL.8 対話すること。それが原点であり、未来である


ずらりと並ぶ製品群は
ヤマハファンを大いに楽しませてくれる「コト」だ

実物は最高のコミュニケーションツール

「2ストの復権は、現実にはあり得ないかもしれません。でもヤマハはもともと、『2ストエンジン屋』だったんです。2ストは、ヤマハの内燃機関技術の根本と言ってもいいかもしれません。そこを見失うわけにはいかないんです」と畑﨑さん。

松尾さんも言う。
「確かに今は4ストエンジンが主流ですが、内燃機関であることには変わりありません。もっと言えば、モノが動いているという意味では同じ(笑)。 今、そして未来に壁にぶつかった時、元を辿ることができるのは技術者にとっては非常に価値があること。『進歩』というのは、元があっての話ですからね」

さらに畑﨑さんが付け加える。
「ヤマハにはロボティクス事業部があって、サーフェスマウンターを製造しています。 ……と口で言っても、何がなんだか分からないですよね(笑)。でも、実際にモノを見ると、『ああ、なるほどね』『こんな風になってるのか』とみんなが語り合えるんですよ。モノを挟んでのコミュニケーションが始まるんです」

ちなみにサーフェスマウンターとは「電子部品実装関連機器」のこと。プリント基板に電子部品を搭載していく装置だ。

ヤマハは大きな企業なのだ。バイク、マリン製品、産業用ロボット、プール(!)、そして産業用マルチローター(農薬散布に使うドローン)と、造っている製品も陸海空の全領域かつ多岐にわたる。

それらを横通しにして眺める機会は、なかなかないのだ。コミュニケーションプラザで自分が普段造っているのとは違うモノを前にして語り合うことで、さまざまなアイデアが広がっていく。

このように主に社内向けだった「コミュニケーション」は、今、どんどん外へと広がっている。

以前は一般の見学には予約が必要だったが、現在は11名以上の団体以外は予約不要。入場も無料だ。「ヤマハは、社会に、そして地域に開いた企業でありたいと考えています。コミュニケーションプラザのあり方も、時代の変化にともなってどんどん変わっていくのが自然」と松尾さん。

展示物を通じてヤマハの過去・現在・未来を知ってもらい、ユーザーとのコミュニケーションを図ろうという狙いだ。

畑﨑さんは、「オーナーズクラブミーティングなどの目的地にしていただくなど、コアなヤマハファンの方たちには聖地扱いしてもらえているようで、ありがたい限りです」と笑う。

その一方で、「地域の人々にもっとヤマハを知ってもらいたい」という思いもある。静岡県西部でヤマハと言えばよく知られた「有名な大企業」ではあるが、楽器のヤマハとの違いや、バイク以外でも多岐にわたっている事業については、実はあまり知られていない。

知ってもらうためには、情報発信が欠かせない。いくらネットが浸透しても、実際のモノ以上の情報源はない。コミュニケーションプラザを有効活用すれば、地域の人々とも質の高いコミュニケーションを取れる、というわけだ。

さらに重視しているのは、子供たちとのコミュニケーションだ。コミュニケーションプラザでは、03年から小学生の親子を対象としたモノ造りの体験教室を開催している。「子供のうちからモノ造りへの興味関心を持っていただければ」と畑﨑さん。

昔なら身の周りにある目覚まし時計など簡単な機械を片っ端から分解して壊したものだが、電子化、ブラックボックス化が進んだ今の製品は、ネジを見つけることすら難しい。今の子供たちは分解遊びの経験がほとんどないのだ。

「教室では、機械いじりに限らず手作りバッグやデザインにも挑戦してもらっています。おかげさまで好評なんですよ」と松尾さん。

「モノ造りが好きな子供たちは、必ず一定数います。コミュニケーションプラザが、そういう子たちが集まる場になれば……」と目を細める。「こうした取り組みは、すぐに何か効果が得られるものではありません。でも、一足飛びにはいかないのがモノ造りの本質。これも、未来につながる重要な事業だと考えています」

過去、現在、そして未来へ。モノ造りに不可欠な人と人とのコミュニケーションが、この施設を軸にして留まることなく延々と続く。

2Fには、ヤマハ関連の書籍や歴史的な刊行物、主立った雑誌などが閲覧できるライブラリーを備える。過去の知識を重んじるコミュニケーションプラザらしい空間となっている

サウンドシミュレーターでは、同施設が所蔵するバイクのエンジン音を聞くことができる。エンジン音を耳にすることで、よりリアルにモノの動きを感じてもらう狙い

地産地消を心がける地域密着型のオシャレカフェ
遠州の山並みを眺めながら軽食やドリンクが楽しめるプラザカフェ。ちょっと「モーター魂」を感じさせるあしらいの料理は見応えあり。オシャレなヤマハらしさと地産地消を心がける地域密着型カフェだ

モノ造り好きな子供たちがメーカーの未来を担う
夏休みには小学生親子を対象にしたモノ造り教室が開催されている。「エンジン分解・組立教室」「手作りバッグ教室」「デザイン教室」など内容は幅広い。自分の手を使ってモノを造る子供たちの目の輝きは、メーカーの未来を照らす光だ

好きだからこそ触っていたい人気のレストア
バイクのレストアが続けられているコミュニケーションプラザのバックヤード。往年の名車に存分に触れられるレストアは、社内でも人気の部署だという。みんなバイク好きなのだ

走ってナンボの乗り物だから動態保存を重視
実際に動くことに意味がある、価値がある。動態保存されたバイクを袋井テストコースで走らせる「ヤマハ歴史車両デモ走行会」は、往年の名ライダー、ケニー・ロバーツさんの参加などもあり、開催のたびに大好評。WEBでの事前予約は瞬く間にいっぱいになるほどだそう

DATA

ヤマハ・コミュニケーションプラザ
ヤマハ発動機本社敷地内にある企業ミュージアム。正面左手の円筒形はシリンダーを模していて、小型エンジン技術をベースにしたヤマハの起源を象徴している。見学は自由だ
住所:静岡県磐田市新貝2500
TEL:0538-33-2520
営業時間・定休日:WEBサイト参照
入館料:なし
HP:https://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/cp/

関連記事