【ツーリングガイド】長崎で音楽と考古学に浸る
懐かしい空間が広がり郷愁が心を潤す
「貴重なモノはありませんが、懐かしいモノがあります」と笑顔で話すのは館長の中村昌彦さん。初めて音浴博物館を訪れると、歴史を交えながら館内のコレクションを解説してくれる。
戦後に引き上げてきた満州開拓者を、長崎の農業開拓として受け入れた時代があった。当時の人口増加に伴ってできた学校が、廃校後長い時を経て2000年に、岡山に住んでいたコレクター栗原栄一郎さんが引っ越してきて、音浴博物館としての歩みを始めた。
コレクションはカメラ、印刷機、家電、雑誌、楽譜など多岐にわたるが、なんと言っても圧巻なのはアナログレコードだ。LPレコードが16万枚あり、すべてを手に取って試聴可能なのだ。ビートルズやレッド・ツェッペリンなどのアナログレコードを大音量で聴くのはこの上ない幸せだ。故にリピーターが多く、平日にお弁当持参で丸一日過ごす人もいるほど魅力がある。お気に入りのマイレコードを持参して、施設のステレオで楽しむ事もできる。というのも世界基準のテクニクスのレコードプレーヤー、マッキントッシュのアンプに、JBLやダイヤトーンなどの巨大なスピーカーで聴けるからだ。音楽を空気の揺れと共に全身で感じられるライブ感。
1月号のコラム「マイプレイリスト」で紹介した、杏里のファーストアルバムもありました。ステレオの前にゆったりと腰かけて、ライナーノーツ(解説文)や歌詞などを読みながら音楽と向き合う。これこそ「音楽鑑賞」というものだ。
しばらく滞在したいと思った!
音浴博物館
山の中にある廃校を利用した音に関する博物館。ゼンマイ式の蓄音機や、16万枚を超える昭和時代のレコードのコレクションは必見。すべての所蔵レコードが試聴可能で、何日通っても興味が尽きることがない音楽の楽園だ
1903年にエジソンが開発した包式のレコード、スタンダードフォノグラムや、後に主流となるビクター円盤式レコードプレーヤーも、惜しみなく実演してくれる
LPとシングル盤以前にSP盤というレコードがあった。端唄、小唄、民謡、歌謡曲、戦況を伝えるプロパガンダなど。1万5000枚ほどを所蔵し試聴可能
長崎県西海市大瀬戸町雪浦河通郷342-80
TEL0959-37-0222
開館時間:10:00〜18:00(入館受付17:30)
休館日:木曜(祝祭日の場合は開館し翌平日休館)、12月29日〜1月3日
入館料:750円
https://http://onyoku.org/
本物の圧倒的迫力恐竜を肌で感じる
新たにティラノサウルス科の歯の化石が見つかった。これは長崎に大型のティラノサウルス科の肉食恐竜がいたことを示している。今、世界中から注目を集めているホットなスポットが長崎恐竜博物館だ。
僕が取材のために長崎空港に降り立ちバス乗り場に行くと、大学生に声をかけられた。観光の研究のために、長崎を発つときにアンケートに答えてほしいと言ってQRコードを渡された。そのときに、オススメスポットを聞くと、間髪入れず「恐竜博物館がとても楽しい」との答えが返ってきた。「でも規模が小さいんです」とも付け加えていた。
しかし行ってみると、標本のスケールも数も充実。オランダのナチュラリス生物多様性センターからやってきた、トリックスと愛称で呼ばれる6700万年前のティラノサウルス、全長約13mの全身骨格レプリカだけでも見に行く価値がある。そしてもう一つ、ティラノサウルス科復元ロボットがすごい!
全長約6mの巨大ロボットは、最新の学説に基づいて羽毛や鱗などを再現。鼻の穴を開け閉めしてにおいを嗅ぐしぐさや、吠える様子はほぼ本物。
大学生の彼女が規模が小さいと言ったのは謙遜しすぎ。きっとジュラシックパークと比べていたのだろう。
長崎市恐竜博物館
国内で初めて発見されたティラノサウルス科大型種の化石など、他では見られない長崎市産の恐竜をテーマとし、石炭ができた時代を経て現代に至るまでの長崎市特有のストーリーを活かした博物館。展示物の本気度が凄い
これが話題のティラノサウルス科の恐竜の歯の化石。実物が展示されている。長崎半島西海岸の三ツ瀬層(後期白亜紀:約8000万年前)から新たに発見され、クリーニングと鑑定がようやく完了した
恐竜博物館は常設展示のほかに、研究者の仕事ぶりがのぞけるオープンラボや各種お土産が揃うミュージアムショップがある。広い駐車場を完備しているが、バイク専用のスペースも別途用意している
DATA長崎県長崎市野母町568-1
TEL095-898-8000
開館時間:9:00 ~ 17:00(最終入場16:30)
休館日:月曜(祝日を除く)
12月31日~ 1月1日
常設展観覧料:500円
https://nd-museum.jp/
野母崎地区の観光名所夫婦岩と軍艦島を望む
夫婦岩と呼ばれる2つに分かれた岩は、なんと4億8千万年も前にできたものだという。二つの岩の間に夕日が沈む光景は美しく撮影スポットだ。その向こうには軍艦島の姿が見える