【ツーリングガイド秋田】寒風山から望む全方位パノラマ
寒風山パノラマラインの中腹から北側となる大潟、能代、白神山地を見渡す。
ロードサイドの木々の丈は低く、山頂付近は芝生に覆われるなど、とにかく見通しがいい。
風景の美しさもあるが、その走りやすさも特筆に値する。路面状況も上々だ
美しい国定公園を 駆け抜ける幸せ
ライダーにとって男鹿半島一番の魅力は、なんといっても寒風山のワインディングロードだろう。全国にはカーブの数や手強さでは寒風山の上を行くロードは存在するが、見通しが良く、緑の芝に覆われた美しい山を走るという特別な経験はココだけのものだ。
世界三景の一つと言われる、眺望の山、寒風山は秋田の自慢。諸説あるが、1913年に地理学者の志賀重昂さんが、アメリカのグランドキャニオン、ノルウェーのフィヨルドと並ぶ風光明媚な山として、寒風山を紹介したことに端を発しているという。
また、寒風山自体は標高3 5 5mと決して高くないので、下から眺めても迫力がある山ではない。しかし、頂上に登るとそこには360度障害物がない大パノラマが広がっている。寒風山を眺めるのではなく、寒風山から眺める景色もまた、正しい楽しみ方である。
晴れれば南には湾の向こうに秋田港、そして昨日その麓を走った拓地と調整池越しに大平山と森吉山。北は世界自然遺産の白神山地。そして西は寒風山の大噴火口越しに入道崎、八望台が見渡せる。寒風山回転展望台に登れば、もう1ランク上の景色が楽しめる。
レストランでは秋田フグ唐揚げ定食などの地産地消メニュー、男鹿名物しょっつる焼きそば、藻塩を使った男鹿塩ソフトクリームなどの地元グルメも楽しめる。少し時間に余裕を持って行きたいスポットだ。
【寒風山パノラマライン】
秋田県男鹿半島の根元部あたりを、蛇行しながら東西に走って寒風山の頂上に近づく県道55号が寒風山パノラマライン。八郎潟に近い東側からは県道54号から分岐して森林地帯を抜け、国道101号との交点からスタートする西側は滝川の集落と田園地帯を貫いて、標高を上げながら寒風山に近づいていく
標高355m寒風山を登りきったところに回転展望室を備えた展望台がある。1階は地元のグルメが味わえるレストランとおみやげプラザ、2階は男鹿半島・大潟ジオパーク展示室、3階は男鹿半島なるほど展示室、そして4階が360度ガラス張りの回転展望室となっている
DATA
住所:秋田県男鹿市脇本富永寒風山62
TEL:0185-25-3055
料金:550円(2階以上有料施設)
営業期間:3月下旬〜12月上旬
営業時間:8:30〜17:00
HP:https://www.akita-chuoukotsu.co.jp/kanpuzan/
今回の旅の相棒はカワサキのZ900RSだ。名車Z1の流れをくむデザインが美しいヘリテイジモデル。デビュー時はこれぞZ1という火の玉カラー、その後イヤーモデルとして当時国内最高峰だったナナハンのZⅡカラーが登場し、老いも若きもZ900RSが大好きという状況が続いている。佐藤モーターサイクルで借り出したのは輸出仕様のシルバーの車体で、タンク上部にさし色のグリーンと黒のラインがあしらわれている。ガソリンスタンドでも「RSイイですね」とか「珍しい色ですね」などと声をかけられ、注目度の高さを再認識した。
スタイルはノスタルジックだが、倒立フロントフォークとリンク式リヤサスペンション、LEDの灯火類、そしてトラクションコントロールを搭載している。雨の中で現れたダートでも、恐怖を感じることなく走行できた。
余裕のパワー、素直なハンドリング、快適なライディングポジションのネイキッドバイクZ900RSは、ツーリングバイクとしてのポテンシャルも非常に高い。
さて30年ぶりに訪れた秋田県だったが、都市部の街並みや観光地の道路などは大幅に整備が進んだしかし、鳥海山や海岸線、そして男鹿半島といった美しい自然は変わらない。こうした大自然の美しさは変わりようがないと思いがちだが、自然環境は人間の傲慢さで一気にバランスを崩して失われてしまう。わがままな話だが、多くのライダーに秋田の魅力を伝えたい。絶景の中を駆け抜けてほしい、おいしいものをたくさん食べてほしいと思う反面、あんまり観光客であふれかえって欲しくないとも思ってしまう自分がいる。秋田はそのくらい愛すべきところなんです。