日本一を誇るアーチ式ダムのドラマ
景色がよく、走りやすいという信濃大町だが、最大の魅力は黒部ダムだろう。2018年には扇沢~黒部ダムをつなぐバスの乗車人数が年間100万人を達成するなど、市を代表する超メジャースポットなのである。
この黒部ダムは長野県の大町側から入る方法と、富山県の立山側から入る方法と2通りのアクセスがあるが、アルペンルートの中で乗り換えが4回必要(ケーブルカー→高原バス→トロリーバス→ロープウェー→ケーブルカー)な富山県側よりも、乗り換えなし(電気バスのみ)の長野県側からの方が圧倒的にアクセスが容易である。起点となる扇沢駅からは、関西電力が運行する電気バス(以前はトロリーバスだった)に乗るだけだ。なお、黒部ダムだけなら、扇沢駅から帰って来るのに2時間も見ておけば大丈夫だと思うが、立山や室堂などダムから先まで行くとなるとまる1日はかかるので注意が必要だ。
登山者で賑わいを見せる扇沢駅。ハイキング姿の人も多い
このバス内から破砕帯と呼ばれるエリアを眺めることができるのだが、ここが感慨深い。そもそも黒部ダムは、関西電力が第2次世界大戦後の復興期に関西方面の電力不足を解決するために、黒部峡谷に水力発電のためのダム建設を1956年に着工したのが始まり。その竣工は困難を極めたが、7年の歳月をかけて、1963年に完成。戦後の関西電力の社運と、関西地域一帯の命運をかけた一世一代の大プロジェクトだったという。
当日、運よく晴れて絶景を目の前にサムアップを決めているボクがいうのもなんだが、当時、人が行くこと自体が命がけだった秘境の黒部峡谷にダムが作られ、現在でも日本を代表するダムとして多くの観光客が訪れているなんて、感涙ものではないか。聞いた話では、この展望台からは放水も眺められるそうで、以前は激混み必至だったとのこと。そうなのだ、現在は外国人観光客が不在のため、ごった返すこともなく、ゆったりと観光できる状況らしい。このダムの絶景を見るなら、行くのは今かもしれない。
黒部ダム駅に到着したら、220段の階段を登って展望台を目指す
なお、この黒部ダムのレストハウスには黒部ダムカレーという大町市のご当地グルメもあるので、こちらもチャレンジしてほしい。
レストハウスで名物・黒部ダムカレー
「ライスは堰堤の形」「ルーは堰堤の内側に」「ガルベ(遊覧船)に見立てたトッピング」「値段は700円以上」「必ず水をつける」という5つのルールを基本に展開されるメニューが黒部ダムカレー。大町市内の多くのお店で食べられる。写真はレストハウスの黒部ダムカレー(1100円)
緑の中を走る大町アルペンライン
扇沢駅までは県道45号、大町アルペンラインで向かう。この道は適度にコーナーがあり、走っていて気持ちのいいワインディングだ
黒部ダムへ向かう大町側の拠点・扇沢駅
扇沢駅は関電バスの発着所でバイク駐車場も完備。この扇沢で標高はなんと1400mオーバー。扇沢駅から黒部ダム駅までは所要16分(6.1㎞)で片道1570円、往復で2610円
扇沢駅には名物販売員がいる!
扇沢駅でバスに乗車するまでの待ち時間は名物販売員・中里さんの軽快なトークを楽しむのがいい。YouTubeで「黒部ダム」「中里さん」などで検索すると、たくさんヒットする人気者
往時の激闘区間があっと言う間
関電の電気バス(当然、CO?を排出しない)に乗り込み、黒部ダムに向かう。関電トンネル内は夏でも気温は10度前後。黒部ダム建設で最も困難で7カ月かけて突破したという破砕帯の青い看板や水を目にすることができる。乗車16分ですぐに到着、早い!
黒部ダムで人気なのが観光放水だ。毎秒10t以上の水が日本一の高さから噴き上げ大迫力。放水時間があるので事前に確認したい(放水期間は10月15日まで)