阿蘇五岳にもっとも近づけるルート
周囲を外輪山に囲まれた阿蘇カルデラの中央付近にそびえ、阿蘇の中核となるのが、標高1592mの高岳を最高峰に中岳、根子岳だけ、烏帽子岳、杵島岳だけで構成される阿蘇五岳。その中心部付近までアプローチできる登山道路が、絶景に溢れる阿蘇パノラマラインだ。
このルートは、阿蘇五岳に対して北側から延びる県道111号阿蘇吉田線(東登山道)、同じく県道111号ながら阿蘇五岳の南側から山頂方面を目指す南阿蘇側ルート、そして西側からアプローチして途中で東登山道につながる県道298号阿蘇公園下野線(北登山道)という、3本の道で構成されている。ちなみに、山頂近くでは中岳火口に至る有料道路の阿蘇山公園道路につながっている。
阿蘇パノラマラインの魅力は、荒々しさを感じさせる阿蘇五岳に向けて標高を上げながら、それぞれのルートで異なる絶景をつむいでいけるところにある。眺望のよさではナンバー1となる東登山道は、阿蘇五岳を眺めながら牧草地を抜け、代表的な展望地となる草千里ヶ浜を通り、草原に美しい小山が突如として出現する米塚の近くも走る。南阿蘇側ルートは山岳道路の雰囲気が濃く、南側や西側の阿蘇外輪山や麓の町並みをチラ見しながら走るイメージ。阿蘇公園下野線は、麓側こそ阿蘇ファームランドやゴルフ場の横を抜ける普通の観光道路なのだが、終盤の4㎞弱は雰囲気が一変して、時おり杵島岳を正面に見据え、広大で美しい草原の中を駆けられる。
草原が緑に包まれる春から夏にかけては爽快で、周囲の草が枯れ始めてススキが色づく秋から冬は、どことなく牧歌的な雰囲気。そこに現在も中岳が火山活動を続ける阿蘇五岳のダイナミックな容姿が加わり、心奪われる風景をつくる。
ここはまさに、至福の道。まずは全ルートを両方向で走って、お気に入りの場所を見つけたい。
阿蘇パノラマラインは、広大な草原地帯と雄大な阿蘇五岳の競演が最大の見どころ。愛車を走らせると、さまざまな表情に変化する。ハイライトとなる草千里ヶ浜は、烏帽子岳の北麓に広がる火口跡にある大草原と、雨水が溜まってできた池が織りなす自然のコントラストが美しい
待望の全面復旧で再び阿蘇巡りの中心に
阿蘇パノラマラインは、16年に発生した熊本地震の影響により一時は全区間が通行止めとなっていたが、同年9月に東登山道、昨年10月に阿蘇吉田線(南登山道)、そして今年4月にはついに阿蘇公園下野線が復旧。これにより再び、全ルートを走ることが可能。
さらに、火山活動の影響で14年8月から連続して通行できずにいた阿蘇山公園道路も、今年4月から利用できる状態になっている。
完全復旧により阿蘇パノラマラインと阿蘇山公園道路の注目度は一気に高まっている。“旬な道”を、ぜひ今年のうちに走っておきたい。
なお、阿蘇パノラマラインのうち阿蘇公園下野線の麓側は、9月10日~10月10日までの期間、県道149号河陰阿蘇線の工事通行止めに対応した迂回路となっている。多少の交通量増加が予想されるので留意しておきたい。ただしこの区間は、絶景が点在しているようなエリアではないので、旅情に関しては大勢に影響はないだろう。
国の名勝および天然記念物にも指定されている米塚は、草千里下の草原にある、高さ80mほどの均整がとれた小山。頂上には、直径約80mの火口跡が残る
草千里ヶ浜には、阿蘇の地形や動植物などに関する展示を実施する阿蘇火山博物館や、併設された複数の休憩施設がある。また、阿蘇山公園道路の麓に位置する阿蘇山ロープウェーの阿蘇山西駅にも、売店や食堂がある
つい阿蘇五岳と草原にばかり目を奪われがちだが、阿蘇パノラマラインは阿蘇外輪山やカルデラで暮らす人々の営みを遠望できるスポットでもある。この道で会える絶景は本当に多彩だ
DATA
高速道路利用時は、九州道・熊本ICから国道57号を東へ。ICから約21㎞走って大津町を抜けると、国道の通行止めを長陽大橋ルートで迂回。国道325号で南阿蘇側へ
区間距離:約37㎞