【ROYAL ENFIELD・Guerrilla450】日本には2025年導入予定!? バイクの実力はいかに?
年間90万台をリリースするマンモスモーターサイクルカンパニー。ロイヤルエンフィールドが放つシングルネイキッドモデル。ゲリラ450をスペイン・バルセロナでテストライド。多くのライダーを魅了するロイヤルエンフィールド流の魅力がしっかり凝縮されたマシンとなっていた。
僕らが若かった時代と違い、速いバイクに興味がない人が増えているように思う。いや、決してまったく興味がないというわけではないとは思うのだけれど、昨今のハイパフォーマンスバイクは速すぎてちょっと行き過ぎていると感じる人が少なくないであろうことはこの業界にいても十分理解できる。必要ないものにお金もリスクも払う必要はない。
高性能な電子制御があったところで、スピードを出してしまうキャラクターのマシンでは、根本的にリスクを回避することにはならないのである。
その点、ロイヤルエンフィールドの作るマシンというのは堅実である。1901年にイギリスで設立された同社は現存する世界で最も古いオートバイメーカーである。インドの会社による経営体制となってから長い年月が経過しているのであるが、少し前までは、クラシックな見た目のクラシックな性能のモデルを継続して生産しているイメージがあった。
しかしここ10年で体制は一新され、クラシカルな見た目ながら現代的手法でマシンが作られるように進化。年間90万台もの販売台数を誇る同社は現在、650ccの空冷ツインモデルをフラッグシップに350ccや400ccの単気筒モデルを生産している商業的にもっとも成功しているモーターサイクルブランドの一つになったのである。
バルセロナで大々的に発表されたゲリラ450。ゲリラなどというかなり過激なネーミングではあるが、マシン構成はいたってシンプルである。搭載されるシェルパ450と命名されたシングルエンジンは昨年2023年モデルとしてリリースされたヒマラヤ450と共通とのことだが、セットアップは完全に専用。同社初となる水冷エンジンは排気量452ccで、40馬力の最高出力を誇っている。
スロットルに対するマシンの反応はなかなかにシャープであり、想像以上に速さを持っているのがバイク本来の楽しさをしっかりと感じさせてくれる。
現実離れしたスピードを求めなくとも、日常的に非日常感やスリルを楽しむことは十分可能なのだとこのマシンは教えてくれる。
いっぽうで、これまでのロイヤルエンフィールドらしさといったのんびりしたフィーリングが少し薄まっているようにも感じられるがこれは心配無用。あまり電子制御といった最新装備を持たないイメージではあるが、ゲリラ450は電子制御スロットルを採用するだけでなく、ライディングモードも装備。エコモードを選択すれば、のほほんとした穏やかな世界を味わうことも出来る。数値的に目立ったものはないものの、低回転域から豊かなトルクが生み出されるフィーリングは、ライバルとなるであろう400ccクラスのシングルマシンとは異なる魅力に溢れている。
車体はシングルならではのシンプルな設計ではあるが、華奢過ぎず安心感は抜群。そのうえで想像以上に軽快でよく曲がる。
見た目からの想像よりも走りの質は高く、ワインディングでスポーティに走らせることも許容する。
シングルの450ccのマシンとしてはボリューム感があり、また重量もそこそこあるものの、使い勝手としてはむしろ好都合でもある。これはインドの荒れた道路事情や、2人乗り+αでの剛性や操安性を考慮してのことだろう。存在感や手応えがマシンをコントロールする喜びにつながっているだけでなく、ツーリングシーンでのパフォーマンスもしっかり備えている。
また、古典的丸型メーターにはIT大国でもあるインドらしく、スマホと連携してグーグルマップを表示したりと機能面も高い。シンプルでどこか懐かしくはあるものの、中身は最新の機能を備えるという意外性が楽しい。
日本市場を完全に無視したかのような452ccという排気量に我が国での販売台数を危惧する声もあるが、数字にとらわれることなく、優れたバランスのマシン作り。使い勝手が良くて楽しいマシンとなっている。
日本への導入は2025年となる模様で販売価格も未定であるが、インド本国や欧州での設定を考えるとかなり戦略的価格となることが期待できる。
オリジナリティに溢れるだけでなく、さらに自分好みに手を加えられる可能性を秘めている点もロイヤルエンフィールドらしいといえる。
懐かしくも新しい。インドからの新風はまさにゲリラ的驚きでもあるが、スタンダードになるべき可能性を秘めていたのである。
Guerrilla 450
エンジン:水冷4st.単気筒451.6cc
最高出力:40ps/8000rpm
最大トルク:40Nm/5500rpm
重量:185㎏
シート高:780㎜
燃料タンク容量:11L
タイヤサイズ:F=120/70R17 R=160/60R17
価格:未定
ライディングポジション
シート高は780mmと兄弟モデルとも言えるヒマラヤ450の825mmに対して低めではあるが、運動性や走破性も考慮して闇雲に低められていないのがポイント。単気筒のマシンとしてはボリューム感があり、車重も特別軽いわけではないものの、プレッシャーのないフィット感。アップライトで自由度の高いオーソドックスなライディングポジションとなっている。
エンジン周り
ロイヤルエンフィールド初となる水冷エンジンは23年にリリースされたヒマラヤ450と共通となるがセットアップは専用。よりスポーティでレスポンスの良い印象。フライ・バイ・ワイヤを採用し、パフォーマンス/エコと2つのライディングモードを装備することで幅広いキャラクターを味わえる。
サスペンション
前後のサスペンションはSHOWA製を採用。ロイヤルエンフィールドの走りが高まった要因に、こういったパーツを採用している点は大きい。前後17インチのキャストホイールに装着されるブロックパターンのタイヤはインドのシアット製。グリップやハンドリング性能に不安はないどころか、かなり攻め込んだ走りも許容する。
タンク
懐かしさも感じさせるティアドロップ型燃料タンクは容量11リットル。オーソドックスな形状であるが、特徴あるカラーバリエーションにより多彩な印象を与えてくれるのが興味深い。
マフラー
コンパクトなアルミサイレンサーがスポーティな雰囲気に一役買うが、サウンドはトコトコとした鼓動感を伴うもののしっかりと消音されたクリーンな印象のもの。
モーターサイクルジャーナリスト
鈴木大五郎
1974年生まれ。4度渡米してレース活動をした後、試乗インプレライターやインストラクターを務め、現在も活動中