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【バイク日和】一度は諦めたバイク再び乗りたい一心で多難を乗り越えた

RZ50でのバイク人生がスタートしてわずか1カ月、病魔が尾澤さんを襲った
バイクを楽しもうと胸を膨らませていた18歳の青年の夢は絶たれた
だが右足を失った尾澤さんのバイクへの思いは消えることはなかった
23年という歳月を経て、困難に立ち向かい、バイク人生を再スタートさせた

BikeJIN2024年10月号 Vol.260掲載

免許取得へのハードルは予想外に高かった

カスタムしたCB1000Rで颯爽と走る尾澤さんの姿に、四肢に障害があるとは想像できなかった。しかし右足が義足であることは紛れもない事実である。

右足は義足のため力が入らない。それでもバイクに乗るんだという強い気持ちで立ちはだかるいくつもの壁を乗り越えた

渡良瀬川が流れる栃木県足利市に生まれ育った尾澤佳宏さんは、当たり前のように18歳になると同時にクルマの免許を取得。クルマやバイクが好きだった尾澤さんはまず、ヤマハRZ50を手に入れた。順風満帆にバイクのある生活が始まり、早い時期に中型へステップアップする予定だった。そして大学へも行き充実した学生生活を送るつもりでもあった。そんな矢先、尾澤さんを病魔が襲った。

右ヒザに骨肉腫が見つかり、入院、手術、治療の日々が始まったのである。右足を失った状態でのリハビリは長くつらかったことは想像に難くない。今でこそにこやかに話す尾澤さんだが、精神的なダメージは計り知れない。

半年後、尾澤さんの新たな生活が始まった。取得していたクルマの免許は当然マニュアルだったのだが、運転免許センターで適格審査を受けなければいけない。結果的にはAT限定にされてしまい、クルマの改造も余儀なくされた。尾澤さんはさらにバイクの免許も取りたいと伝えると、その場にあったカブに跨がされ支えてみろと試された。

「そのときはまだ義足に慣れていなかったし、しかも仮の義足だったので、車体を右側に押されると支えられない。それでバイクに乗るのはダメって烙印を押されたような感じでした」

障害を抱えた者に決して寄り添ってはくれなかったのだ。「まあ当時はそんなもんですよ。だからもうバイクは諦めようと思ったんです」 

尾澤さんのバイク生活はたった1カ月で終わった。それからはクルマでのドライブが楽しみのひとつになった。操作の仕方は異なるけれど峠道を走ることは楽しく、サーキットにも通った。「クルマで山道を走っているとバイクをたくさん見かけるじゃないですか。そうするとやはりバイクはいいなぁ〜って思うんです」 

バイクで駆けたいとの願いが消えることはなかった。そうこうしているうちに娘さんがスクーターを購入。借りてみると、乗れることを実感した。

「確かに手だけで操作できるスクーターなら乗れるんですけど、僕はマニュアル操作で走りたかったんです。そこでネットでいろいろ調べてみたところ、同じような障害を持っていても実際にバイクに乗っている人がいることが分かりました。そして実際に会いに行ったりして情報を得、中型二輪免許を取ることを決意しました」

免許センターに行き挑戦。引き起こしなどうまくできず失敗。やはり400のバイクは重たく一筋縄ではいかなかった。そこで尾澤さんがとった行動は、先にCB400SFを購入してしまい、引き起こしなどを練習。そして46歳のときに見事に中型二輪免許を取ったのである。

50歳のときには大型二輪免許を取得。このときも先にCB1300SFを購入して決起した。

尾澤さんにとって最初のバイクがRZ50だった。中型二輪免許を取ろうと決心したとき、改めてマニュアル操作に慣れるために新たなRZ50を購入。またCB400SF、CB1300SFも事前購入し免許取得に備えた

そんな前向きで努力家の尾澤さんは現在、愛車のCB1000Rでツーリングをしたり、レース観戦や友人のサポートでサーキットへ出かけたりと、思い切りバイク生活を満喫している。

ブレーキペダルが操作できないので、今まで乗り継いできたバイクにはすべて、左手で操作するリアブレーキレバーを装着している。現在の愛車であるCB1000Rではさらに、前後サスペンションに手を加えてローダウンさせ、足着きを良くしている
現在は3台のバイクを所有しているが、出動回数がもっとも多いのがCB1000Rだ。主に関東周辺のツーリングに使用していて、サーキットに足を運んだりもしている
尾澤佳宏さん
栃木県足利市在住。愛車のホンダCB1000Rを駆ってツーリングを楽しんだり、友人の応援やサポートでサーキットに足を運んだりと、精力的にバイクに関わっている義足のライダーである

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