春に備える! 愛車を守る正しい冬季保管術
秋が終わり、本格的な寒さが訪れようとしている
寒いとバイクはツラい! じゃあ、無理に走らなくたっていい。春まで冬眠だ!
その選択は十分アリ。けれど、乗らないからと放置すると、バイクは傷むばかりだ
来シーズンを快適に迎えるための、バイクの冬眠ノウハウを学んでおこう
ヒトもバイクも快適な“眠り”が大切
近ごろ、〝眠り〞の大切さを訴える言をよく耳にする。眠りが浅く、寝覚めが悪い。長時間寝たはずなのに、体調が思わしくない。そんな経験は誰にもあるハズだ。〝眠り〞の質はQOLに大きな影響を与えるのだ。
じつは、眠りの重要性は、バイクにだって当てはまるコト。寒い季節の到来で、バイクに乗らなくなるライダーは多いし、雪国住まいであれば乗りたくても乗れなくなる。すると、バイクは放置されることになるのだが、コレがたいへんよろしくない。
機械であるバイクは、下手に放置すると加速度的に不動車化が進む。だが、〝放置〞ではなく、正しく〝保管〞すれば、愛車の劣化は最小限に抑えられる。来春、バイクが快適な目覚めを迎えられるよう、良質な〝眠り〞を提供する術を紹介しよう。
①冬眠前にガソリンは……
満タンにしておく
冬季に限らず、長期間バイクに乗らない場合は満タン給油しておくことがセオリー。ガソリンタンク内のガソリンが少ないと、空いた空間を埋めているのは空気。そうした状態では、気温の変化でガソリンタンク内に結露が発生する可能性が高い。バイクのガソリンタンクは、一部を除いて鉄製なので、結露による水分が錆の原因となる。また、ガソリンに水分が混入すると、エンジン性能にも悪影響を及ぼしてしまうのだ。
MOTOREX®フューエルスタビライザー
(ガソリン劣化防止剤)
価格:1980円
ガソリンも使わないと劣化する。使用限度は、給油してから半年ほどといわれている。保管前にガソリン劣化防止剤を使用すれば、劣化を遅らせることができる
②冬眠中バッテリーは……
車体から外して保管
キーをオフにしていても、バイクは僅かながら電気を消費してしまう。バイクのバッテリーは、車載スペースや軽量化のため容量にさほど余裕がないこともあり、乗らない時間が長いとバッテリー上がりを起こす。また、低温状態にさらされると、バッテリーの性能が落ちるので、電気の消費と保管温度の維持のため、車体から外して屋内保管するといい。それでも自然放電は抑えられないので、定期的に補充電を行いたい。維持充電が可能な充電器を使用すれば、繋ぎっぱなしで放置しても問題ないし、車載状態でもバッテリー上がりを防げる。
③キャブレター内のガソリンは……
カラにする
インジェクション車には関係ないが、キャブレター車の長期保管時には、キャブレター内部のガソリンを空にしたい。キャブレター内部に残ったガソリンが劣化すると、経路を詰まらせたりするからだ。燃料コックに「OFF」ポジションがあれば、その状態でエンジンをかけ、ガス欠状態で停止するのを待てばいい。燃料コックにOFFポジションのない車両の場合は、手作業でガソリンを抜く。抜いたガソリンの処理も必要なので、プロに依頼したい。
④タイヤの空気圧は……
抜く
長期間の保管時には、タイヤの地面と接する1カ所に負担がかかり、変形してしまうことがある。変形したタイヤは走行中の安定性を担保できない。保管時にはタイヤの空気圧を高めに保ち形状を維持させ、定期的に移動させて接地面を変えることを心がけたい。タイヤやサスペンションへの負担を考えると、車体を浮かして負荷のかからない状態で保管するのが理想だが、バイクを吊り上げての保管は現実的ではない。メンテナンススタンドの使用も有効だが、静止状態のバイクは前後タイヤとサイドスタンドでの支持が最も安定するので、安定性の確保が問題だ。
⑤オイル交換するなら……
乗り出す直前
バイクの冬眠前、走り込んで劣化した消耗品を交換するメンテナンスは推奨できる。だが、エンジンオイルに関しては難しいところ。保管中に気温の変化でエンジン内が結露して、エンジンオイルに水分が混入するとトラブルのもとになる。そうなれば、せっかく交換した新しいエンジンオイルを、走る前に再度交換する必要が出てくる。エンジンオイル交換は、シーズンイン前に再稼働に備えて施すメンテナンス時に行う方がオススメできる。
⑥冬眠中のチェーンには……
追いルブする
チェーンは鉄製のパーツだから、長期保管時に問題となるのが錆の発生。冬眠前に清掃して、チェーンルブを塗布しておきたい。一度しっかりと処置しておけば、保管中に追加しての注油”追いルブ”は不要。信頼のおけるメーカーのチェーンルブであれば、半年ほどの保管程度では保護性能を失うことはない。ただし、保管中にホコリが付着したりするので、再稼働前に再度洗浄と注油を行い、張り具合を確認し、必要なら調整すべきだ。
⑦冬眠中のカバーは……
定期的に外して乾かす
保管時にはカバーで車体を覆って保護しておこう。汚れ防止だけでなく、紫外線による塗装や樹脂部品の劣化防止にも効果大だ。屋内保管ですら、カバーなしでは車体にホコリが溜まる。だが、カバーをかけっぱなしにするのは良くない。内部に湿気が溜まり、錆の発生や部品の劣化の原因となりかねない。カバーは定期的に外し車体の乾燥を促し、カバー自体も干して湿気を取り除いておくべきなのだ。
[ 冬眠前洗車の意義 ]
冬眠前に欠かさずやっておきたいのが洗車。シーズン中に溜まった汚れを落とすだけでなく、トラブルの予兆を見つけられることもあるからだ。バイクがキレイになれば、オイルや冷却水の漏れや滲みが見分けやすくなるし、破損した部分を発見するかもしれない。寒い時期はバイクに乗らないのであれば、その期間ゆっくりプロに修理してもらえるチャンスでもある。“洗車はメンテナンスの基本”といわれるのはダテではないのだ。冬眠前の洗車は念入りに!
【目覚めのメンテ】最低限ココだけは見ておきたい
- レバーやペダルといった可働部がスムーズに動き、押し歩きに問題はないか?
- エンジンや冷却水、サスペンションやブレーキに液体が漏れた跡はないか?
- エンジンオイルや冷却水、ブレーキフリュードが規定量入っているか?
長期間動かさなかったバイクは、どうも調子が悪いという経験をしたライダーは多いだろう。経年劣化が原因の場合もあるが、動かさないことで可動部が固着してしまったり、消耗品の劣化が理由であることが少なくない。冬眠からの目覚めメンテナンスは、各部の機能チェックと消耗品の状態確認を欠かさずに行おう。