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しっくりくるライディングポジション考

世の中には古今東西、たくさんのバイクがあり、そのバイクにあった乗り方がある
本誌連載「深堀りバイク日誌」を担当し、
毎月キャラクターの違うバイクに乗るライター谷田貝洋暁氏に
どうやってバイクに合わせた乗り方、ポジションを決めているのか?
バイクに合わせた“しっくりくる”ライディングポジションの作り方を聞いてみた

“バイクが素直に走る”がポジションの最適解

バイクの試乗記を書くという仕事をして、とっかえひっかえ色々なバイクに乗っていて気付くのは、〝しっくりくる〞ポジションはモデルによって千差万別ということだ。バイクの数だけポジションがあり、どんなバイクにも〝しっくりくる〞乗り方、ポジションがある。しかも、そんな乗り方をすると、コーナリングでバイクが無理なく素直に動いてくれてくれるから、気持ちよく走ることができる。つまり〝しっくりくるライディングポジション〞とは、そのバイクを〝一番気持ちよく操れるポジション〞であるというのが僕の持論だ。

面白いのは、作り手の意思は外見や性能だけでなくポジションにも色濃く現れるということ。大前提として、走りを楽しむ〝スポーツバイク〞なのか? ツアラーなどの〝実用性重視〞なのか? それらはメーカーのHPやカタログに採用されている〝絵〞を見れば作り手の意思は一目瞭然だろう。

そんな用途の大前提を踏まえながら、実車で走り出してまずするのは、「前乗り」、「後ろ乗り」のポジションの見極めだ。

「前乗り」とは、〝前輪荷重重視〞で操るバイクことで、その名の通りフロントに荷重をかけ気味にすると素直に曲がる。スーパースポーツを筆頭に現代的な〝スポーツ〞バイクは「前乗り」のキャラクターであることが多い。

一方、「後ろ乗り」とはクラシック系など〝スポーツモデル〞ではないバイクに多い。「後ろ乗り」しかしようのないアメリカン系のモデルはもちろん、SRやトライアンフ、モト・グッツィなどのクラシックスタイルのバイク達。これらのモデルはヒップポジションをやや引き気味の「後ろ乗り」をして、〝後輪荷重重視〞で操作した方が気持ちよく曲がる。ただ中にはブリクストンのクロムウェル1200のように、フロント18インチホイールの正調クラシカルスタイルなのに、ポジションや乗り方は現代的な「前乗り」の方がしっくりくるなんてこともある。

そんな「前乗り」、「後ろ乗り」を見極めたら、スタンダードなリーンウィズポジションで走るだけでなく、「リーイン」、「リーンアウト」を試してみる。

ポイントは〝やり過ぎくらいな大袈裟なポジション〞をとってみること。本人はリーンインしているつもりでも客観的なにみるとほとんどリーンウィズと変わらないなんてことはよくある話。〝やり過ぎ〞くらいにフォームチェンジするとマシンの挙動も確かめやすい。

……なんてことをコーナーへの進入速度を変えながら試していると、「リーイン」で乗るか? 「リーンアウト」で乗るか? はたまた〝両方できる〞のか? といった、そのバイクにしっくりくるライディングポジションの方向性がわかってくる。あとは最もそのバイクが気持ちよく操れる乗り方を探っていくと〝しっくりくる〞ライディングポジションが完成させられるはずだ。

モト・グッツィのステルビオは、アドベンチャーツアラーなのでオフロードポジション風のリーンアウトはもちろんだが、ロード風のリーンインもしっくりきた

谷田貝的ポジションチェック

長年編集者としてプロライダーの走りを見たり、写真を選んだことで、“マシンを操るライダーの意思は写真に写る”ということを経験的に学んだ。特に「目線」、「つま先」、「ハンドルポジション」には“操る意思”はもちろん、“漫然運転”もしっかり露見する

車種別ポジション

リーンイン
YAMAHA YZF-R7

現代のセパパレートハンドルのバイクはその時点で「前乗り」&「リーンイン」に決まってしまう。とくにYZF-R7などは同クラスのセパハンモデルに比べてより前のめりなポジションにするとしっくりきた
リーンイン
aprilliaTuono660

「リーンイン」、「リーンアウト」どちらの乗り方も気持ちよかった。“公道走行を前提にアップライトなバーハンドルで視界を確保して攻めてくれ!”という、作り手の強い意思を感じることができたポジションだった
後ろ乗り
BMW R nineT

「前乗り」で乗るとしっかりハンドルを保持する必要があり、ちょっと力も入ったが、着座位置を「後ろ乗り」に切り替えると格段に回頭性がアップ。腕の力が抜けて、素直なコーナリングをするようになった
リーンイン
HARLEYDAVIDSON X500

「リーンイン」、「リーンアウト」、どちらの乗り方もできるバーハンドル……というか、あまり作り手の明確な意思がポジションや走りから読み取れなかったため迷って両方の乗り方をした記憶がある
リーンイン
SUZUKI V-STROM800 DE

元来Vストロームシリーズはロードセクションが得意。それは21ホイールでダート性能を備えた800DEも同じ。アドベンチャーなので基本はリーンアウトだが、リーンインポジションで走っても実に気持ちよかった

谷田貝洋暁
初心者向けバイク雑誌の編集長を経てフリーしたライター。本誌連載「深堀りバイク日誌」をはじめ、二輪バイク雑誌・Web 媒体にこれまで1000稿以上の試乗記事を寄稿

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