【カッコよく走りたい!】ワインディングを上手に走るための補完計画②曲がるきっかけどうやって車体を倒し込めばいい?
Q.バイクって勝手に曲がっていくんじゃないの?
リズム感を得るために公道で最良の方法は?
ヤ:そういえば、ワインディングを走るときに悩んでいることのひとつが、「どうやって曲がるきっかけをつくるか?」なんです。とあるライテク本に「イン側のステップを踏む」とあったので、意識して実践しているんですが……。
タ:そりゃあ物理学に反しているもの。うまくいくわけがないよ。
ヤ:どういうことですか?
タ:そもそも、ステップに対する荷重を左右で変化させただけでは、例え片足だけでステップに載ったとしても、マシン+ライダーの重心位置は変わらない。このあたりのことは二輪工学的にも証明されていて、姉妹誌のライダースクラブでも最近何度か取り上げているんだけど……。とりあえずこの話は置いておいて、ヤマキが目指す理想のライディングフォームは、ソフトなハングオフなんでしょ?
ヤ:そうです。膝をするほどではないけど、軽くイン側に腰をずらし、イン側の膝を開いたような。タ:だとしたら、イン側のステップを強く踏む行為は、そのフォームづくりと真逆!
ヤ:えっ、どういうこと?
タ:椅子に座って試してみると分かりやすいよ。膝を90度あるいはそれ以上曲げて、スポーツバイクにまたがっているときに似た下半身の姿勢をつくってみてね。
ヤ:はい、座りました。
タ:そうしたら、試しに右足で強く床を踏み込み、その状態で腰を右側にずらそうとしてみなよ。
ヤ:そんな簡単な……。えっ!?
タ:どうしたの?
ヤ:う、うまくできません!
タ:だよね。右足に荷重した場合、その反力により、身体は左側に移動しやすくなる。逆に、同じ方向へ移動するのは難しい。イン側のステップを強く踏めば、身体は必然的にアウト側へ移動しやすくなり、つまりハングオフとは真逆の動きになっちゃうんだよ。
ヤ:イン側のステップを踏みすぎていたから、ハングオフの姿勢になるのが難しかったのか……。でも不思議なのは、イン側を踏むことで車体を寝かせるきっかけを掴めたり、曲がりやすくなったりする場合もあるんです!
タ:このあたりがとてもややこしいところで、例えば低速域だと、たしかにそういうときもある。これも作用反作用によるもので、ライダーの身体が微少に移動し、さらにその反作用で車体が傾くという原理らしいのだけど、いずれにせよこの状態でハングオフするのは難しいから、とりあえずイン側ステップを踏むことは忘れよう!
ヤ:それなら逆に、アウト側のステップを踏んで体重移動するのを、曲がるきっかけに使えばいいということですか?
タ:表現としては、それも違うかな……。確かに上手なライダーは、微妙なステップ入力の連続でマシンを操っているけど、トップレーサーですら無意識に近い場合が多いみたい。それにバイクというのは、ライダーが体重移動しなくても曲がる乗り物だしね。
ヤ:いやいや、そんなわけ……
タ:これは二輪工学的にも証明されているけど、ちゃんと解説するとスゴく長くなるから、興味があるならライダースクラブ誌の24年10月号に載っている、プッシングステアに関連する記事を読んでみて。ちなみにその証明として一番分かりやすいのは、ヤマハが以前にショーで発表したモトボット。ほぼノーマルのYZF‐R1Mを操る自律走行ロボットで、体重移動機能はないけど、200㎞/hを超える速度域でのサーキット走行も実現している。
ヤ:きっと僕より速い……。ということは、我々人間も、寝かせるきっかけはハンドル入力で?
タ:いや、公道の速度域だと、プッシングステアは入力値も低いため無意識のことが多く、逆に意識的に入力したら強すぎて、かえってバランスを崩しかねない。プッシングステアの初歩的な部分は(右下で)解説するけど、これは知識レベルに留めて、減速後にバンクさせるシーンなら、フロントブレーキのリリースをきっかけにするのが、会得しやすいはず。
ヤ:リリースということは、つまりブレーキレバーを放すタイミングということですね。
タ:これまたトレールやら前輪接地点やらベクトルなどが複雑に絡む話なので、理論的なことは省くけど、一般的なバイクは、フロントブレーキを掛けると車体が直立状態を保とうとする。直線でブレーキを掛けただけでも、寝るのを妨げようとする力を感じられるはず。ブレーキをリリースするとこれがなくなり、少ない入力で車体を寝かせられるような感触を得られるので、そのタイミングでスッとバンクさせるイメージだね。
ヤ:レバーを放すだけなら、簡単にマスターできそう!
タ:大事なのは、このときも次の動作を“先取り”しておくこと。あと、これは公道走行でオススメしたいリズムづくりで、サーキットでのフロントブレーキ操作とはちょっと違うから、そのあたりのところを次に説明するね!
【前提】腕や肩の余分な力を抜くことは、ハンドルに絶対入力しないことではない
バランスを崩してバランスを取る究極の矛盾!!(公道ライダーも無意識でやっている!?)
直進するバイクの前輪にはジャイロモーメントが発生しており、これが車体を安定させる力になる。例えば直進するバイクの左側ハンドルグリップを少し押すと、ステアリングはごく微少に右側へ転舵し、バランスが崩れて車体はバンクする。一方、前進するバイクが傾くと、その方向にステアリングが自然に切れる。これがセルフステアで、旋回性を高めるが、強くなると車体を起こそうとする。そこでライダーは、無意識でもセルフステアの量を調整して、バンク角を安定させている
公道の速度域だと、イン側のハンドルを押すプッシングステアの入力値は微少。無意識でやっていることがほとんどで、逆に意識して操作しようとするのは難しい
体重移動ナシで旋回するモトボット
バイクを自律走行するロボットとしてヤマハが開発し、15年にVer.1、17年にVer.2を発表。体重移動機能はないが、Ver.2では最大40〜45度のバンク角で走行可能
車体を傾ける前に予めフォームを準備してコーナーへ!
①3秒先を予測しながら走行
例えばストレート区間でまだスロットルを開けている状態でも、その先にどんなコーナーが待つのかを確認。左右どちらに曲がるのか、カーブはキツそうかなど、なるべく多くの情報を早めに獲得すべし
②上体を起こし腰をずらす&フロントブレーキかける(ほぼ同時)
姿勢変化とブレーキングと体重移動を、すべて同時にやるのは、作業が多くて難しい。バイクがまだ直立に近く安定している段階で、コーナリングフォームに移行するための準備をある程度はやっておく。これで次の操作に余裕が生まれる
③ブレーキをリリースバイクを寝かすキッカケに
フロントブレーキを掛けると、車体を直立させようとする力が働く。コーナーの手前で、ブレーキ入力を緩めながらこれを感じ取り、完全にブレーキをリリースしてバンクさせやすくなったところでバンク開始
結論
- コーナー手前でフォームの準備をある程度やっておく
- フロントブレーキ解除で寝かせるリズムをつくる
- セルフステアを抑制すると車体は寝かせやすくなる