【数字はウソをつかない!】スペックの ミカタ!
一般的な量産二輪車は「主要諸元」と呼ばれるスペックが発表されている
じつはこれを読み解くと、ある程度まで車両の乗り味が想像できてしまうのだ
そのために知っておく必要があるのが、各項の数字が表わす意味
ここでは、いくつかの項目をなるべく簡単に解説しよう
感覚には個人差もあるが数字はウソをつかない!
数字にこだわることは悪いことではない。数値で表されるスペックというのは、個人の感覚とは異なるその車両の絶対的要素だ。コロナ禍以降、新車デリバリーは全体的に遅延傾向。悠長に試乗機会を待っていたら購入予約の順番が遅くなり、納期がいつになるか……なんて問題もある。となれば、ウェブサイトなどに掲載されている車両紹介文書とともに、主要諸元と呼ばれるスペック表を読み解いて、そのバイクがどんな性格と乗り味なのか推測して早めに予約するほうが、バイクライフは充実するかもしれない。
では、主要諸元を見るときにはどこに注目すればいいのか? 多くのライダーは、最高出力とシート高にまず目を向けるはず。これは、最初の一歩としては悪くない。どれくらい速くて、足は着きやすいのか、把握できる。 でも、そこで終わってしまうのはじつに惜しい。最大トルクの大きさからは加速のパンチ力、さらに最高出力と最大トルクの発生回転数まで見ればそのエンジンが得意とする回転領域、車重やタイヤサイズやキャスター角からは旋回時の軽快さ……というように、注目する項目を増やせば、よりそのバイクを想像しやすくなる。
諸元の見方を覚えれば、発表されたばかりのバイクでも、数字だけで〝乗った気になれる〞かも……。そのために、その数字が何を表わしているのか覚えておこう!
今回はこのバイクの数字を紐解く!
エンジン:水冷4st.並列2 気筒754 ㏄
全長×全幅×全高:2325×840×1450mm
軸距:1561mm シート高:850mm 車両重量:208kg
最高出力:91ps/9500rpm
最大トルク:7.6kg-m/7250rpm
燃料タンク容量:16L キャスター角:27°
タイヤ:F=90/90-21 54H R=150/70R18 70H
馬力
91ps/9500rpm
大昔は、1頭の馬が発揮する仕事率を1馬力と定めていた。日本では以前から、フランス発祥の仏馬力(PS)が使われ、これは75㎏重の物体を毎秒1m動かす仕事量を表わすが、1999年の新計量法施行で国際単位系のワット(W)が基準となった。1PS=0.7355kWだ。馬力はトルクにエンジンの回転数を掛け算した数値と考えるとイメージしやすく、排気量(=トルク)が小さいエンジンでも、多気筒化などで回転数を増やせば発生馬力は大きくなる。諸元ではその最大値が「最高出力」として示される。
例えば、、、
トルク
7.6kg-m/7250rpm
自転車で考えるなら、ペダルを踏みこむ力のこと。二輪エンジンの場合、1回の燃焼で生じるクランクシャフトを回そうとする力のことを指す。基本的に、排気量が大きくなるほどトルクも比例して大きくなる。多気筒の場合、それぞれのシリンダーが発するトルクを足したものが最大トルクだ。低回転や高回転になるとさまざまな抵抗が生じて発生トルクが減少するため、トルクがピークとなる回転数も併記される。
例えば、、、
[Column]常用領域の数値を見たければカタログのグラフ“性能曲線”を見るべし!
エンジン単体で考えれば、トルクが大きいほど加速力に優れるのだが、高回転で最大トルクを発揮するエンジンは、低回転域だと十分な力が得られないことも……。最高値だけでなく過渡特性も大切!
シート高
850mm
空車状態で車体を直立させたとき、地面からシートのもっとも低い位置までの距離を示したのがシート高。基本的には、高いと重心が上がるため旋回時のレスポンスが高まり、低いと安定性に優れる。またハイシートは、悪路走破性を向上するために最低地上高を稼ぐことや、ハングオフ時にライダーの下半身がイン側に収まる空間を確保することにもつながる。シートが高ければ停車時に足が地面に届きづらくなるが、足着きはシートの幅や形状、サスが乗車時に沈む量にも大きく影響される。
例えば、、、
車重
208kg(軸距 : 1561mm)
つて、バイクの車重は燃料や油脂類や冷却水などが入っていない「乾燥重量」が基準だったが、現在はそれらを含む「車両重量(装備重量)」を表記するメーカーが多い。ただし外国車の場合、燃料90%搭載時とか乾燥重量しか発表していないこともある。「軸距」は軸間距離(ホイールベース)のことで、水平な地面に直立した車体を真横から見たときの、前後輪中心点の水平距離を表わしている。一般的に、車重が軽くて軸距が短いほうがクイックな動きにつながる。
例えば、、、
タイヤ
F(フロント)=90/90-21
R(リア)=150/70R18
*タイヤ幅(mm)/ 扁平率(%) リム径(インチ)
タイヤサイズに関する理論はかなり複雑で、一概に語れない要素ではあるが、例えば幅に関しては、太いと同じバンク角までリーンするときに接地点の移動距離が長くなり、エネルギーを余分に必要とするので旋回時に重さを感じやすい。ただしこれは、安定感にもつながる。後輪は、太くすることでバンク角が深いときのコーナリングフォースが増し、旋回力は上がる。また、外径が大きいほどジャイロ効果により直進安定性が増す傾向にある。
例えば、、、
キャスター角
27°
バイクのキャスター角とは、ステアリングヘッド部に収まる操舵軸(ステアリングシャフト)の傾斜角を指し、水平路面に車体を直立させて真横から見たときの、路面垂直線に対する操舵軸の角度を表わしている。ちなみに、操舵軸の中心線を延長して地面とぶつかった点と、前輪中心部を通る垂直線が地面とぶつかった点の距離を示すのがトレール量となる。キャスター角が大きいほどハンドリングは安定性指向で、小さいほど旋回性重視の設定となる。
例えば、、、
以上を総合して,,,乗らずにインプレッション!
並列2気筒エンジンなので車体はスリム。シートは高めだが、幅が狭く角が落とされており、足着きに対する不安は意外と少ない。エンジンは、常用する低中回転域に十分なトルクがあり、ナナハンクラスの並列2気筒としては高回転域がパワフル。旅の移動シーンで扱いやすく、伸びやかな吹け上がりが高揚感も演出する。21インチの大径フロントホイールと27度のキャスター角で、舗装路におけるハンドリングは穏やか。代わりに、ダートでは適度な安定感があり、ライダーを冒険に誘う……はず。