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【第1回】アウトドアMONOローグ「バイク」

 BikeJIN2022年6月号 Vol.232掲載

さて、第1回の今回は培倶人ならではのバイクの話。

バイクと自動車の決定的な違いはバイクがアウトドアギアだということです。基本、自動車はドアの中(インドア)にいるエアコン付きの空間なワケで、移動はできても、極論を言えば家の中にいるのとまったく変わりません。

バイクのおもしろさの基本は、まさしく「操縦者が外界にむき出しになっている」ことに尽きる気がします。そうでなくては、暑くて寒くて濡れるバイクにわざわざ乗る意味がありません。

バイク小説をたくさん書かれている片岡義男氏も「自動車は窓がテレビジョンのように思えてきて、退屈このうえない」「車の室内には生活のにおいとかたちが残り続けて、開放感などありはしない」と言い、「そうだ! バイクという乗り物があるじゃないか!」という意味のことも語っています。

 バイクもタイヤ2本、人も2足歩行。バイクのタイヤの接地面積は、人間の靴の接地面積とほぼ同じである、と聞いたことがありますが、バイクに対してさらに親近感が湧いてくる話です。

 僕もこれまでモトコンポからカタナまで、さまざまな種類、さまざまな排気量のバイクと付き合ってきました。警察に最初にお世話になったのも、中2の時のバイクの無免許運転(親父のスーパーカブ)でした。

それまでは自転車で遠出(住んでいた青森市から秋田の県境まで行ってみる、北海道での自転車ツーリング、等)をしていましたが、バイクの免許を取った時には背中に羽が生えた気がしました。「これでもう、どこへでも行ける!」と思ったものです。

 また、さまざまなバイクでキャンプツーリングにも行きましたが、一番印象的だったのは友人ふたりと原付(ホンダMB50F、新設計のエンジンと斬新なスタイルでタミヤの1/6プラモデルにもなった)で北海道を周った時です。

降りて押さないと越せない峠がいくつもあって、すれ違ったり、追い越していくライダーたちに「頑張れよ~!」と声をかけられました。

悔しい気持ちもありましたが、バイクとの一体感をより強く感じたものです。もちろんスマホなどない時代ですから、次のガソリンスタンドの場所を簡単に調べることもできません。

前もって地図で調べておいて、せっかく着いたのに休業日で、スタンド脇で野営したことも1度や2度ではありません。

でもそういう事のひとつひとつがたまらなく楽しかった。不便を楽しんでいたのだと思います。

 キャンプも最低限のモノを使って知恵で工夫し、不便を少しでも解決し、リアルな経験を積み重ねていくのが楽しいのであって、簡単に快適さを追求したいという人には「それなら家にいろ!」と言いたくなってしまいます。

「バイクがなぜ楽しいのか」の原点も、この「不便さ」「不完全さ」があるからこそ、のような気がします。なにしろ、バイクは人が乗っていないと倒れてしまうような乗り物なのですから。

ホンダMTX200Rはパワーはあったもののマフラーからオイルを撒き散らして後輪はドロドロ、背中もシミだらけになった。それに耐えきれずXR400に乗り換えた
鈴木アキラ
バイク、自転車、登山、バックパッキング、キャンプなど、アウトドアでの遊びが大好きなライター。さまざまな視点から道具の考察をするのが得意。著書に「アウトドアで活躍! ナイフ・ナタ・斧の使い方」(山と渓谷社)ほか、多数

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