道路交通法の第一条「道路の円滑を図る」
歩行者に自転車、クルマにバイクといった自分以外の他車が行き交う公道を走る上で考えなければならないのは、自車と他車の関係性だということをここまで述べてきた。そんな関係性の究極はズバリ「思いやり」を持つことだ。
この思いやりとは、「誰しもに優しく接しましょう」というような道徳的なお題目ではない。他車との関係性を考えて走ることで、交通の流れがスムーズになり、最終的にはそれがめぐりめぐって自分のスムーズな走りにつながるものと考えてもいい。
この「いかに道路交通をスムーズにするか」ということは、実は道路交通法の第1条に、その目的として「この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする」と記されている。
つまり道交法は、安全はもちろんのこと、交通の円滑を図ることも大きな目的なのだ。そのためには、単に自分の権利を主張するだけでなく、ちょっと考えたり工夫をすることで、自分とその周囲の交通がスムーズに流れるなら、積極的に行いたい行動なのだ。
たとえば、上り勾配のきつい追い越しのできない山道で、荷物を満載したトラックが後方から来たバイクに対して、車線の左にクルマを寄せてやや速度を落とし、進路を譲ることがある。本来はその必要はなくても、それによって交通の流れが良くなれば、後続者であるライダーの「前を塞がれている」というストレスが解消され、スムーズに気持ちよく走ることができる。そんなときにはトラックの前に出た後に、オーバーアクションなくらいのしぐさで感謝を示したい。
この「思いやり」とは、単に心がけというわけではない。実はここまでに紹介した予測、想像力に基づいたアクションなのだ。相手の動きを読み、何をしたいかを考えて走ることで、自分の安全を守ったうえで、周囲の流れをスムーズにする行動につながっている。
思いやりから始まるスムーズな交通が実現すれば、渋滞や混雑と無縁なストレスフリーなツーリングが楽しめるハズ。そんな大局を見ながらバイクに乗るということこそが、オトナのライダーではないだろうか。