その時銘品は生まれた(Vol.6)
[ 今回の逸品 ]
DRN(JRP)
グローブは技術や品質の差が出やすく、走りに大きな影響を与える
グローブ専門メーカーのJRPによる「DRN」は“日本製”にこだわり
妥協のないモノづくりを追求する同社のシンボルの一つ
違いが分かるライダーから年々支持が高まっている
作り手の顔が見える
“安心感”は安全につながる
香川県と言えば、讃岐うどんが有名だが、縫製手袋の実に9割をハンドリングするグローブのメッカでもある。この地で1987年に創業されたのがJRPだ。
「なかでもDRNは、JRPのモノづくりを象徴するアイテムの一つです」と中川武雄社長は話す。JRPの歴史はまさにDRNとともにあると言っていい。
中川社長はウインタースポーツ向けグローブなどをOEM生産する「中虎」の社長を1976年から務めている。
中虎でバイク用グローブのOEM生産をしていたが、発注元からのオーダーに合わせて製品をつくるうちに「グローブメーカーとして、一切妥協のないグローブをつくりたい」と痛切に思うようになった。なぜなら中川社長自身もライダーだったからだ。
こうして、中虎を母体にJRPを創業。NASAで採用された衝撃吸収材を搭載した〝衝撃吸収ライダーグローブ〞を業界に先駆けて送り出し評判となる。
バイクブーム絶頂期だけにグローブもたくさん売れたが、ブームも下火になり、販売も減少していく。
そんな中、1990年に登場したのが初代「DR」だ。レザーは他では類を見ない1・5㎜という厚みで〝安全性〞を確保している一方で、操作性は抜群だ。
手の甲側にオイルで柔らかさを増した強靭な牛革を使い、平側には柔軟にして丈夫な北米産ホワイト・テールディアスキン(鹿革)を組み合わせた。
まさに妥協のない贅沢な素材使いである。さらに革は背中、腹等、部位よって性質、伸び方が違うが、この特性を見極めて、職人が裁断、そして指側に縫い目のない「ガンカット」を採用している。
さらに握りの部分、親指の角度といったさまざまな箇所にマイナーチェンジを加え続けて、既に32年が経過している。
JRPのグローブは、野球のグローブのように使い込むほどにその人の手に馴染むのだ。この特質は職人の知恵と技、そして、より良いもの、さらに良いものを作りたいという姿勢によって実現しているのだ。
中虎は中国に自社工場を持ち、コストを下げた製品をつくることも可能だが、ライダーに気に入ってもらえるモノをつくるため、香川県東かがわ市の本社自社工場生産にこだわり続けている。
DRの発売後JRPを扱う店が徐々に増えていったが「存在を認知された」と感じ始めたのは2005年頃という。
他ブランドとの違いが浸透するまで15年かかったわけだが「いいものを作ればお客様は必ず分かってくれるという自負が今はある」と中川社長。
言葉では説明できない〝良さ〞が使った人には分かるので、〝リピーター〞によって少しずつ受注は増えてきたそう。
「バイク用グローブは繊細な操作性に加え、万一の際の安全性が求められるが、人は〝メンタル〞な存在なので、作った人の顔の見える〝安心感〞は〝安全〞に繋がるはず。それゆえにJRPは、日本で作り続けているのです」
近年、海外製の安価なグローブが市場を席捲している。ただしコストを下げると裁断や縫製の質が落ちてしまう。海外工場はどこも出来高による生産体制なので〝質よりコスト〞の現実がある。
そんな中、日本製であるJRPの存在感は増すばかり。まさに同社が掲げる「QUALTY OF JAPAN」が成功のカギとなったのだ。加えてアフターサービスが万全で補修にも応じてくれる。
「大量生産して安価に販売し、消費していくマーケットは必要だと思います。ただ、モノであっても大切に扱う気持ちは大事。
昔の欧州でペッカリー等の高級革のグローブを世代を超えて引き継いでいたように、いいものを後世に伝える考え方は大切。モノを粗末にする人は人も粗末にしてしまいがちですからね」
そして2014年頃から一段と販売が好調になった。その要因が「プレミアムショップ」の存在という。当初、全国5店舗で立ち上がった、JRPの工場でモノつくりや理念のレクチャーを受けた認定店。
靴の〝シューフィッター〞のように、研修を受けたJRPマスターがユーザーに的確なアドバイスを提供している。
中川社長は御年75歳ながら、終止バイタリティに溢れていた。元気の秘訣を尋ねると、「バイクのおかげ、今は愛車のW650を一旦手放したが、バイクは元気の元です」と話してくれた。
深いバイク愛の結果として生まれるべくして逸品が生まれたのだ。
DRN JRP
価格: 1万6500円
カラー:ブラック、ブラウン
サイズ:S〜LL
問い合わせ
JRPプロダクツ
TEL:0879-25-5078
http://www.jrp.co.jp/
BikeJIN2022年4月号(Vol.231)掲載