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その時銘品は生まれた(Vol.5)

[ 今回の逸品 ]
ヒートガード
スクランブラーパンツ2(MFP-2381)

普段着でも違和感のないバイクウエアが一般的になった昨今
その先駆けが2000年に創業した「マックスフリッツ」だ
アパレルブランドで活躍しながらバイクを
楽しんできた趣味人の知恵と技が活きている

自分で欲しいモノが原点
流行を創り、取り入れる

「とくにないんだよね」

 開発で苦労したエピソードを尋ねると、マックスフリッツ代表にしてデザイナーでもある佐藤義幸さんは、こう言って笑った。

 ヒートガードスクランブラーパンツ2は、30年以上前に佐藤さんがプライベートで自作したものが原型という。

当時は有名な一般アパレルブランドに在籍し、デザイナーのほか、デザイン画から服をつくるための型紙を起こすパタンナーも兼務していた。
 
2つの役割をこなす人は異例だが、佐藤さんは「いずれ独立」を考え、多くの技を身に着けた。

 同時に、少年時代から大のバイク好き。20代からアーリーショベルのハーレー、BMWのR 1 0 0GSなどを乗り継ぎ、国産ビッグオフも楽しんでいた。

そんな中、「キャンプツーリングにあったら似合うし便利だな」と思い、デニムパンツの膝に切り替えを入れ、中にスポンジを縫い付けて自作した。

 佐藤さんは2000年に自らのブランドであるマックスフリッツを立ち上げ、2年後に「スクランブラーパンツ」を製品化する。

これが年々バージョンアップし、現在のモデルとなるわけだが、「今から考えると30年前の自作パンツが原点だった」と振り返る。

 初代スクランブラーパンツは、当時としては珍しく膝にスポンジを内蔵し、さらにカジュアルとして成立するデザインを採用。

バイク用ボトムが革パンツかジーンズの時代に、とても新鮮だった。「バイクらしいテイストを反映しつつ、電車に乗っても恥ずかしくない。

それがマックスフリッツのコンセプトなんです」

 さらに個人的に履いていたクライミングパンツにヒントを得て、股下を一枚布とした。縫い目がないため、足の開きを邪魔しない。

 発売直後の人気はそれなりだったが、06年に素材をチノからストレッチデニムにした「スクランブラーデニムパンツ」に進化させると一気に販売が伸びた。

当時バイク用のストレッチパンツは皆無ながら、佐藤さんはいち早く「フィット感と運動性能が両立できてバイクウエアに最適」と着目した。

 そして10年、外側からプロテクターが入るポケットを採用し、より人気が加速していく。「製品名のおかげなのか、ドゥカティとトライアンフの〝スクランブラー〞に乗る人がよく買いに来たんです。

皆さんに共通していたのは〝股下のアップマフラーが熱い〞という意見でした」

 そこで、目立たない太股内側の裏地にヒートガードを20年から配置。空気を含んで遮熱効果が高く、肌触りもいいことから素材にトリコットを選んだ。

普通の生地は厚味が出るとゴワゴワして着にくいが、トリコットなら問題ない。

 加えて生地の特性も計算に入れた。デニムとトリコットは縮率が違うため、洗うと縮んで不具合が出てしまう。

そのため、裁断前に洗いをかけて縮ませておき、縫製の後にもう一度洗うことで味わいまで出すという凝りようだ。

 ウエスト内側のコーデュロイも生地の特性を活かす。質感を出すため逆毛で使うのがセオリーだが毛を下向きにすることで摩擦が増え、シャツのズリ上がりを防ぐ。もちろん外見も肌触りもいい。


 しかも進化を欠かさない。2年に1回、ユーザーの要望や一般アパレルのトレンドを考慮してシルエットを調整。

バイク向けの機能を損なわない程度に最新スタイルを取り入れる。21年により細身の「2」に進化したのも、よりスリムを求める声に応じたからだ。

「ボトムはジャケットより消耗しやすく、買い替え需要が高いのですが、スクランブラーパンツはリピーターが多い。だからバージョンアップは欠かせません」

 個人的には、意外にも買いやすい価格が気になった。その理由は、デザインからパタンナー、生産まですべて佐藤さん1人で行うから。

製品テストも自らバイクで500㎞走り込む。企業では多くの人が一着の服に携わるが、マックスフリッツにはそれがないのだ。

 価格設定にもポリシーがある。「バイクって普通のサラリーマンの趣味だと思うんです。

だから普通の人が少し頑張れば買える値段をまず決めて、その中で機能やデザインをどれだけ頑張れるか、企業努力しているんです」

 昨年、マックスフリッツの売上げは過去最高益を更新。バイクブームで、インスタやユーチューブで自撮りする人が自発的に着ており、その影響もあったという。

「オシャレにバイクを乗りたい人に支持されているのはうれしいですね。僕は、一般の方に〝バイク乗りってカッコイイ、オシャレ〞って思わせたい。

カッコイイライダーがジェントルに走り去れば、子供の脳裏に焼き付きますよね。そう思える服をつくりたい」

 服と素材を知り尽くし、佐藤さん自らが欲しいと思った製品が集うマックスフリッツ。

開発に苦労するどころか、遊びの中から生まれ、根底には強い思いもある。それがユーザーに伝播しているからこそ深く支持されるのだろう。

ヒートガードスクランブラーパンツ2(MFP-2381)

価格: 1万6500円〜
カラー:ブラック、インディゴ、ホワイト
サイズ:S〜3L、Ladys-S〜L

問い合わせ
マックスフリッツ
TEL:03-5671-6335
https://maxfritz.jp/


BikeJIN2022年4月号(Vol.230)掲載


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