こだわりの職人たちが生む使い心地のいい逸品群
創業地であり現在も本拠地である東京・上池台にある夫婦坂にちなんで名づけられたペアスロープ。ここ、夫婦坂工房でも革製のジャケットやアクセサリーの製作をしているが、テキスタイルジャケットは埼玉県、グローブは香川県東かがわ市、ブーツは東京・浅草と新潟、コットン製品は東京・江戸川、皮革製品は長野にあるあさま工房でも生産している。
生産地が分散しているのは、それぞれの分野の職人がその地で生業を営んでいるからで、それゆえ質の高い製品を生み出す。
このようにペアスロープ製品はさまざまな土地で作られているのだが、そのすべては国内だ。あらゆるメーカーが海外生産で製造コストを削減するこの時代においても追従することなく、「良いものを作るため」に日本製であることにこだわっている。
そのような経緯で生まれた今季の新作は実に豊富すぎ、残念ながらここでは載せきれない。ここでは新作と定番から厳選した、ジャケットとブーツの3品を紹介しよう。『スウィングジャック』は、ペアスロープのロングセラーテキスタイルジャケットのスタイルはそのままに、耐摩耗性に優れるコーデュラを素材とした新作だ。撥水加工も施しているため防水透湿性もあり、走行中に雨が落ちてきてもレインウエアを着られる場所まで慌てることなく進んでいける。
また、キャンプツーリングの野営地でもコーデュラのタフさが生きてくるため、アクティビティを積極的に楽しめる。『ワークブーツジップ』は、靴ひもタイプながら内側にファスナーを備え、すばやく手軽に着脱できる。もちろんファスナーのスライダーはクローズ状態ならすべてが革で覆われるため車体にキズをつけにくい。
ファスナーに角度があり、クッションを内蔵した履き口だから脱ぎ履きがラクで、ツーリング中の食事で座敷に上がるときもまったく苦にならない。『ツアラー2』はシンプルに仕立てたロングブーツで、内側ファスナーを採用。素材の牛革は1・8㎜厚で、丈夫さとしなやかさのバランスに優れる。ブーツインでもアウトでも許容するデザインにしてあり、くるぶし部の内蔵パッド、足首部のシャーリングによって運動性も良好。大判の一枚革をふんだんに使った贅沢な作りは所有欲も満たす。
長年にわたるものづくりのノウハウを込めた新作も魅力だが、改良を重ねながら進化してきた定番アイテムにも良さがある。
ペアスロープのそうした製品群は通好みではあるが、ライディングウエアをこれから揃えようとしているビギナーやリターンライダーにこそ、良いものを使ってほしいし、だからこそ薦めたい。ていねいに作られた品々は使い勝手や使い心地が良いことはもちろん、きちんと手入れをすることで長持ちするし、とくに革製品は思いがこもった意義のある道具になりえるからだ。