【Thinking Time】㊲清掃活動と地域活性化の意義。ライダー有志のマナー活動を追う
*BikeJIN vol.245(2023年7月号)より抜粋
ここ数年、SNSでライダーズスポットと呼ばれていた場所が
次々と閉鎖になってきた。その理由のひとつに
利用者のマナー問題がある。我々ライダーにできることはないかと
立ち上がった人たちの想いとは?
SNS時代の負の遺産、バイク立入禁止の理由は?
SNSの普及は第12世代バイクブームを生み、若年層を中心にオフ会やミーティングといった出会いの場を拡散し、お台場のエバグリ(写真)や大阪港のナナガンなど各地のライダーズスポットは多くのライダーで賑わった。しかし騒音・ゴミ問題等により立入禁止となった所も多くマナーが問われる結果に。
例えば、インスタ映えスポットとしても有名な埼玉県の有間ダムが夜間閉鎖となった。ダムの天端に延びている管理用道路のわきにバイクを停め、ダム湖をバックに愛車と写真を撮る。これがSNSでの定番となっていて、県外からも多くのライダーやドライバーが訪れるフォトスポットとなっていたのだが、残念なことになってしまった。
夜間閉鎖は4月24日から実施されているが、そうなってしまった大きな理由は管理用道路での喫煙とポイ捨てだ。今年の2月から全面的な禁煙として天端の至る所に周知のための看板やパネルを掲示してきたが改善が見られなかった。管理事務所では、ポイ捨ての多くが夜間に行なわれていることを把握しており、18時〜翌朝6時までの間、ダム管理用道路への車両の通行を禁止とした。
ライダーから変えていく!SNS時代のマナーアップ
このような措置に至る前から有間ダムの状況に危機感を持ち、管理事務所や県議会議員らと交渉を重ねてきたのが、宮ヶ瀬湖や奥多摩湖などでライダー有志による清掃ボランティア活動を行ってきた団体「ライダーズインアクション」だ。副代表である岩間さんは若いころから訪れていた有間ダムがSNSでインスタ映えスポットとして有名になり、訪れるライダーが増えるにつれてタバコのポイ捨てが目につくようになったことを危惧していた。
ダム管理事務所の県職員と交渉し、マジックハンドやゴミ袋、手袋といった清掃道具を管理事務所に置かせてもらい、有間ダムを訪れた際には誰でも気軽に清掃できるような態勢を整えていたのだが、現実的にはマナーアップが浸透する前に夜間車両通行止めという規制が実現してしまった形だ。これまでも宮ヶ瀬湖での活動などを取材してきた筆者は、岩間さんとダム管理事務所の話し合いの場に同席させて頂いたのだが、この問題の根本的な難しさに頭を抱えてしまった。
ライダーズアクションがこれまで取り組んできた宮ヶ瀬湖や奥多摩湖といった観光地とは違い、有間ダムは埼玉県の純然たる管理施設だ。多くのダムと同様、地域住民への配慮もあって天端への歩行者による通行は〝開放〞されてきたが、観光やレジャーを目的とした利用者を受け入れるための施設は一切ない。大型ダムにあるような展望台もなければクルマを停められるような駐車スペースもまったくないのだ。
なお、有間ダム自体は埼玉県の施設だが、自治体として内包している飯能市は有間ダムの別称である名栗湖についてフォトスポットという認識はしているものの、観光客を積極的に誘致するほどのベクトルは見せていない。もちろん、天端の管理用道路を含め、ダム自体は県のものだから飯能市がそこに対してなにかをしようということはとても難しい。いわゆるダム湖が「県のダム」と「市の湖」という2つの顔を持つことは珍しいことではないが、観光地としての受け入れ態勢がほぼ皆無の有間ダムにあたっては、来訪者へのマナーアップに関する呼びかけすら周知しづらく、飯能市がそれを呼びかけることもない
では、誰がこうした状況を変えていけるのだろうか。岩間さんはこれまでにない難しい状況であることを踏まえつつも、できることを模索している。
「県の施設である有間ダムは特殊な場所です。住民への配慮もあって完全に閉鎖するのは難しい。県議会議員の方に実情を踏まえて相談していますが、埼玉県も飯能市もまだ実態を把握できていません。ライダーだけがタバコを捨てているわけではないですが、我々ライダーから動き始めることで有間ダムというとても素晴らしいライダーの憩いの場所を守っていきたいと思うんです」。
宮ヶ瀬湖のように食堂や土産店が建ち並ぶような観光地ではない有間ダム。SNSで脚光を浴び、SNSでマナーの悪化も拡散した現在、岩間さんらはSNSを逆手に取って、善良なライダーの活動を発信していくことに力を入れている。地域活性化も含めたマナーアップ活動はこのSNS時代、ますます重要な意味を持つことになるだろう。
Riders in Actionのはじまりと今後
Riders in Actionの活動は佐藤隆さんが宮ヶ瀬湖の鳥居原園地駐車場でゴミを拾ったことから始まった。その後、同じように同園地でゴミ拾いをしていた岩間大輔さんと合流し、SNSで参加者を募り、行政とも連携するようになり仲間も増えた。佐藤さんは「ただで使わせてもらって汚して帰るってのはカッコ悪い。凄いことやってますねとか言われるけど、好きでやってるだけなんで実感はないんですよ」とゴミ拾いを始めたきっかけと想いを淡々と語ってくれた。今では支援企業も増え、同様の活動は全国へと広がり始めている。
誰でも手ぶらで参加できる!Riders in Actionの清掃活動
オレンジ色のビブスを着ているのが参加者のお世話をするスタッフ。実施前には注意事項の伝達もあるが区域の担当分けなどはなく、参加者は自らの意思でゴミ拾いに向かう。仲間と散歩しながら行うという感じで楽しそうだ
①鳥居原園地で清掃開始
ライダーズスポットでもある宮ヶ瀬湖の鳥居原園地駐車場がスタッフや参加者の集合場所。マジックハンドやごみ袋などの道具を借りたら各々で清掃を開始
②移動し湖畔園地でも清掃
宮ヶ瀬湖の場合は2カ所で行う。鳥居原園地で30分ほど清掃したら少し離れた湖畔園地にバイクで移動。移動先でも一旦集合してから清掃を再開する
③終了したらスタンプ押印
湖畔園地でも30分ほどで集合し最後にスタンプを押してもらって宮ヶ瀬湖での清掃活動は終了。スタンプは支援企業からの景品・サービス等と交換できる
全国各地の仲間とも連携!活動の幅を広げている
Riders in Actionは全国各地のライダーズスポットへと活動の幅を広げている。もともと現地で清掃活動をしていたグループと連携したり、ライダーズスポットの地元でリーダーとなれる人材を育成したり、集めたゴミの処分や地域活性化に寄与するための自治体との連携に関するノウハウを提供したりといった活動を行っている
No.1絶景ロード「ビーナスライン」で活動「SKY ROAD OF VENUS」
本誌「みんなが行きたい絶景ロード」第1位の「ビーナスライン」(長野県)でもSKY ROAD OF VENUSによる清掃活動や地域活性化への取り組みが行われている。自治体や支援企業・店舗とも連携するほか、主催イベントでは白バイ隊員による安全運転講話も行われ、安全運転やマナーアップへの活動にも取り組む