【キャンプで”火”を使いこなせ!】LIGHT MY FIRE「薪割り」
薪割りは焚き火には不可欠な作業のひとつ
しかし、ナタや斧など大型の刃物を使うから
十二分な注意が必要になる
今回は初心者にもできるだけ安全な
薪割りの方法を紹介していこう
BikeJIN2024年3月号 Vol.253掲載
薪割りは楽しい。家に薪ストーブがある人以外は、ふだんなかなかしない作業だから、いかにも「焚き火の準備をしている」ということで、なおのこと楽しい。
しかし、ナタや斧など重量のある大型の刃物を使うことになるから、ケガをする時は大変な傷を負うことになってしまう。だからこそ安全には十分気をつけなくてはいけないし、使う刃物の扱いも熟知しておかなくてはいけない。
刃物の扱いに共通していることは「刃の向かう先に手を置いてはいけない」というまったく当たり前のことなのだが、これがついつい守られていないことが多いのだ。
薪を割る最初の段階で「薪にナタや斧の刃を食い込ませる」という行為が必要になる。この時、薪の上端や下側を持って上からナタや斧を振り下ろす人が多いが、ナタや斧の刃先がズレたらどうなってしまうか、言わなくても分かるだろう。防刃の金属製グローブでもしていない限り指を落とすことだってありうる。ふだんからナタや斧を扱い慣れている人ならできるかもしれないが、「狙った場所に寸分違わずナタや斧などの重量物の刃先を振り下ろす」のは結構難しい作業なのだ。カナヅチで釘を打つ時に、誤って釘を持った手を打ってしまったことがある人もいるだろう。カナヅチならば打撲で済むが、ナタや斧ならどうなるか、考えるだけでも恐ろしい。
この事故を防ぐためには刃物を振り下ろすのではなく、薪の上端に刃先を当ててその上からバトニング(薪や棒などで叩く作業)をして食い込ませるのが安全だ。右利きならまず左手で薪を持ち、右手に持ったナタや斧の刃先を薪の上端の中心に当てる。固定したら刃物を左手に持ち替えて右手に他の薪や棒を持ち、ハンマー代わりにして刃物を打ち込んでいく。刃物を一度持ち替えるという手間はあるし、確かにナタや斧の重量を利用して一気に割るのはスッキリして気持ちもいいが、これはかなり慣れてからにしたほうがいいし、慣れてからでも気の緩みで事故は起きることも忘れないようにしたい。刃先を食い込ませた先もバトニングで小刻みに割っていく方がより安全な方法と言えるだろう。
僕がオススメしたいのはクサビを使って割る方法だ。2~3枚のクサビを用意して、まずはナタや斧でやるように薪の上端に最初のクサビを割り込ませる。そこからバトニングでクサビを打ち込んで、割れた隙間に次のクサビを横から打ち込んでいく。最初に打ち込んだクサビは2枚目を打ち込んだ時には簡単に抜けるから、抜いて割れ目の先にまた打ち込む。この繰り返しだ。
また「ナタや斧で割れないような太い薪や硬い薪でもクサビなら割れる」という長所もある。石や岩もこの方法で割っているくらいだ。刃先もそれほど尖っていないから安全性も高く、コンパクトに収納ができるのもいい。クサビは林業の盛んな街のホームセンターでは安価で入手可能だ。
❶上から、日本の手斧。ヨーロッパの手斧。新潟のアウトドアメーカー、モチヅキのオリジナルブランドであるTEPPAのナタ(ナタは基本的に片刃で右利き用だがこれは両刃。切れ込みがなく左利きでも違和感なく使うことができる)。先端に鼻とか箸と呼ばれる刃の保護のための突起を持つナタ(地面に打ち付けても刃が欠けない。フックとしても使える)。
❷危険な例。振り下ろした刃先が誤った方向にそれると、薪を持っている指を落としかねない。
❸安全な例。ナタや斧を持ち替える手間はあるが、いきなり振り下ろすよりはるかに安全。
❹上は日本の手斧で刃が厚く「割る」のに特化している。下はヨーロッパの手斧。刃が薄くナイフのような「切る」作業もできる。
❺クサビを使えばナタや斧などの鋭い刃物を使うよりもはるかに安全に薪割りができる