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【第10回 】アウトドアMONOローグ「コーヒーメーカー」

BikeJIN2023年3月号(Vol.241)掲載

野外で飲むコーヒーは本当に美味い。酒よりも美味いと思うことがあるほどだ
好きな風景の中でコーヒーを飲むために100kmバイクを走らせる
そんな旅の仕方があってもいい

 夕方、プシッと開けるビール、とくに最初の一杯目の喉越しは大好きだ。しかし、酒とコーヒーどちらかひとつ選べと言われれば、僕はコーヒーと答えるだろう。酒は飲まなくてもいられるが、僕はコーヒーがないと一日が始まらないコーヒー中毒者なのだ。なによりいいのはコーヒーには二日酔いがないということだ(単に飲み過ぎなければいいだけの話なのだが)。

 西部開拓時代には「美味いコーヒーなら馬の鞍と交換してもいい」とまでいわれたそうだ。それほどまでに美味いコーヒーなら僕もぜひ飲んでみたいと思う。当時のカウボーイたちが野外で飲むコーヒーは、革袋に入れた豆を袋の上から叩いて砕き、湯と一緒に鍋で煮立て、差し水をして豆が沈んだところで上澄みのコーヒーを飲むという手法が取られていたという。コーヒーを飲みつつ、時折口に残った豆の破片をペッと吐き出す光景は西部劇映画でも見ることができる。ブラックコーヒーもいいが、身体をコテンパンに使った後の砂糖入りのコーヒーはまた格別だっただろう。「馬の鞍と交換」の話は、コーヒーが今より格段に高級品であったことも教えてくれる。

コーヒーは豆の種類やその焙煎(炒り方)の仕方もさまざまで、同じ豆でも浅煎りと深煎りでは別物と思えるくらいに味が違う。自家焙煎をしている店で買うならば、3段階くらいに変えてみてもらってもいいだろう。店によっては面倒だと断られることがあるかもしれないが、「面白い」とやってくれる店はいい店だ。このあたりの人付き合いはバイクショップやアウトドアショップと似ていると言えなくもない。

 また淹れる方法とその道具もさまざまあり、それによって味も異なる。その組み合わせを探すのがまた楽しい。ナポレターナは水と挽いた豆をセットしたポットを火にかけて、沸騰したら天地をひっくり返してドリップさせるユニークなコーヒーメーカーだ。湯が沸騰した際に豆が蒸されることで、マキネッタ(直火式エスプレッソメーカー)が出る前は最も濃く淹れることのできるコーヒーメーカーとして知られていた。普段僕はカリタのカントリーでコーヒーを入れているが、たまに少し濃い目のコーヒーを飲みたい時にはこのナポレターナで、さらに濃いコーヒーが飲みたい時にはマキネッタを使っている。

 ドリッパーは別にケトルを用意しなければいけないが、パーコレーターやカリタのカントリー、ナポレターナなどは内部のパーツを取り外せばケトルとしても使用が可能だ。ティーバッグ方式のお茶や粉末のスープ、カップラーメンなどのための湯を沸かすことができ汎用性が高い。マキネッタも豆を入れずに火にかければ湯を沸かすことができなくもないが、その構造上、少量の湯しか沸かすことができない。コーヒー専門の道具である。

こうやって自分の使い方と道具との相性をあれこれ試していくことも、ひとつの「旅」と言える。

奥列左から、フランス軍ドリップポット、カリタ/カントリー、イルサ/ナポレターナ4Cup。中列左から、コメット/パーコレーター2Cup、スノーピーク/チタンコーヒープレス、イルサ/マキネッタ2Cup。前列左から、モンベル/ O.D.コンパクトドリッパー4、ユニフレーム/コーヒーバネットGrande。
フランス軍ドリップポット。金属製のドリッパーで豆は粗挽きを使う。デザインがオシャレだ。
カリタ/カントリーはウオーターポットの下に微細な穴が開いていて、お湯を入れると下のドリッパーにタツタツ細かく湯が落ちる仕組み。細~く長~く湯を注ぐのとまったく同じ作用で、美味しいコーヒーを簡単に淹れることができる。現行品はステンレス製のドリップバディ102。
スノーピークのコーヒープレス。お湯と挽いた豆を入れてプランジャーを押し下げると漉し器がコーヒーを抽出する構造。
モンベルのO.D.コンパクトドリッパーは繰り返し使えるポリテステルメッシュの自立式ドリップフィルター。ユニフレームのコーヒーバネットはバネ式でコンパクトに収納できる

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