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【第7回 】アウトドアMONOローグ「クッカー」

BikeJIN2022年12月号(Vol.238)掲載

アウトドア用の鍋、クッカー(コッヘル)の進化は凄まじい
2重3重の入れ子式収納は当たり前のこと
底に熱吸収パネルを装備したモデルまであって
家庭用のそれを、はるかに凌駕していると言っても過言ではない

前回のテーマはストーブ(バーナー)であったが、食いしん坊の僕の場合、ストーブの次にくるのは、やはりクッカーこと鍋の話である。

 収納性、素材、熱効率などにおいて、キャンプ用クッカーにはアウトドアの叡智が詰まっていると言っても過言ではない、と僕は思っている。家庭用でもティファールなどがハンドルが取り外せて、本体が入れ子式に収納できるものを出しているが、これはアウトドア用クッカーの考え方そのもので、逆に言えばバイクキャンパーやバックパッカーのレベルまで収納性を突き詰めねばならぬほど、日本の住環境、台所の収納環境は切迫しているのかと心配になってしまうくらいだ。

 まずは素材の話。アルミ製クッカーは熱伝導性もよく軽量なのでアウトドア用クッカーの主流となっている。ぶつけるとへこむがそれも使い込まれた味のうちという人も多い。一時期、アルミ製の鍋はアルミ成分が溶け出してアルツハイマーの原因になると噂されていたが、結局その話は立証されなかったようだし、アウトドア用アルミ製クッカーのほとんどは内側にアルマイト加工やテフロンコーティングが施されているので、その心配はないようだ。 チタン製クッカーは軽くて丈夫だが熱伝導性の低さと、軽量性を追求したその薄さのために非常に焦げ付きやすくなってしまっている。湯沸かしなどには適しているが、粘度の高いカレーのようなメニューにはまったくと言っていいほどに向かない。チタン製クッカーを使ってキャンプでカレーを食べたいと思ったら、レトルトカレーがいいだろう。 ステンレス製クッカーは丈夫だが少々重たい。熱伝導性もアルミほど良くないので多少焦げ付きやすい。

昔、コールマンは山岳用のピーク1シリーズでステンレスクッカーの底に銅を張り込んだモデルを作っていたことがあるが、現在は廃番だ。 僕としてはチタンクッカーの底にピーク1のように銅を張り込んで、軽量性、堅牢性と共に熱伝導性を高めたモデルがあれば最高だと思うのだが、今のところ製品化はされていない。加工が難しく、作れても高価になり過ぎるということなのだろうとは思うけれど、どこかで作ってくれないかなあと思っている。今のところこれに一番近いのはEPIgasが作っているATSチタンクッカーとトランギアのデュオーサルクッカーだ。ATSチタンクッカーは底にアルミの粒を溶着させてあって、熱伝導性を上げるとともに滑り止めの役目を果たしている。デュオーサルクッカーは外側がアルミで内側がステンレスの2重構造だ。

 設計の話では、ポットの底にヒダ状の熱吸収パネルを取り付けたモデルもある。湯沸かしで約30%早いという。3割早いということは単純に言って燃料となるガスの消費が3割少なくて済むということで、時短だけでなく省エネにもなる。燃料が限られたアウトドアの世界では、これは画期的なことといえる。有名な製品はジェットボイルだ。

左から ・SOTO /ナビゲイタークックシステムSOD-501 ・トランギア/ストームクッカーS ・スノーピーク/チタントレッククッカー ・ソロセットチタン ・ギガパワーストーブ地 ・トランギア/メスティン(手前) ・兵式飯盒(奥) ・コールマン/ピーク1クッカー
パスタなどの調理に便利な湯切り機能がついた蓋、調理後の保温に貢献するコジー機能を持つケース、レトルトなどを引き上げるためのトング形状のハンドル、等々。さまざまなアイデアが凝縮された逸品、SOTO /ナビゲイタークックシステムSOD-501。
コールマン/ピーク1クッカー。野外用に作られた調理器具で銅貼りは多分これだけ。
日本の誇るライスクッカー、兵式飯盒。食器を兼ねる中蓋はすり切り2合の米が計れる。本体には2合と4合の水の目盛付き。キドニー型の形状は腰に付けるため。並べた時に場所も取らない。
ジェットボイルのポットの特徴とも言える熱吸収パネル(同社ではフラックスリングと呼んでいる)。ストーブの炎が風に流されないだけでなく、効率的に熱を吸収する

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