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【HONDA・CB650RE-Clutch】ホンダ新技術「Eクラッチ」登場|DCTに続く次世代MTの進化とは?

マニュアルトランスミッションバイク。いわゆる“ギヤ付き”にも関わらずクラッチレバー操作が必要ないというHonda E-Clutch(ホンダ Eクラッチ)その使い勝手や実力はいかほどか?

問:本田技研工業 70120-086819
https://www.honda.co.jp/motor/

DCTはAT免許でOK一方、Eクラッチは!?

2008年、世界で初めて二輪車用のデュアル・クラッチ・トランスミッション(以下:DCT)の技術を確立したホンダ。DCTはその名のとおり、2つのクラッチを使うことでギヤ付きエンジンをオートマチックトランスミッション(以下:AT)化する技術で2010年のVFR1200Fで初搭載。

以来、DCTはVFR1200XやNC700X(現750)やX‐ADV、ゴールドウイングツアーと様々なモデルに搭載。現在ではアドベンチャーモデルのCRF1100Lアフリカツインのほか、NT1100やレブル1100にも採用されるなど、いつの間にかDCTモデルは6台にまで増加。しかも、ホンダのビッグバイクのラインナップでAT限定免許で乗ることができるモデルはすべてDCTという状況だ。

そんなDCTモデルの中でも最も進んでいるのはアフリカツインとNT1100に搭載されたユニットで、車体の姿勢や加速度を計測する6軸IMUを活用することによって、走行状況にマッチしたより自然な変速を入れてくるような制御にまで進化している。

正直なところ、DCTがここまでホンダのラインナップの中で幅を利かすようになるとは、登場時には思わなかった。むしろ〝クラッチレバーを使った変速操作こそバイクの醍醐味だろ?〞なんて斜に構えていたくらいだ。

だが登場から17年。ホンダのDCTはすっかり世界中で受け入れられた。MT仕様とDCT仕様が選べるモデルに関しては、半数近い割合を締めるまで成長しているなんて話も聞こえてくる。少なくとも日本国内においては、ゴールドウイングやNT1100などは、DCT仕様のみでMT仕様は取り扱わないくらいの割り切りようである。もはやDCTはホンダのラインナップになくてはならない存在にまで成長したのだ。

さて、今回の主役はEクラッチである。冒頭でDCTの話を持ち出したのは、2023年にホンダがこのEクラッチの技術を発表した時にも、やはり似たような印象を持ったから。17年で技術は進歩しても人間の頭の中はそれほど成長しないらしい。

引用ついでに、DCTとEクラッチの違いを書いておくと、まずAT限定免許で運転できるDCTに対して、EクラッチはAT限定免許では運転できない。自動でギヤが変わるDCTに対して、クラッチ制御のみが電子制御化されたEクラッチにはシフトチェンジ操作が必要となるため、運転には通常の免許が必要になる。……〝あれ?スーパーカブの自動遠心クラッチはギヤチェンジが必要だけどAT限定免許でOKだよ?〞なんて思った方、実に鋭い!! Eクラッチはクラッチレバーで操作する余地を残したことでMT車に分類されることになったのだ。

しかし、乗ってみるとこれがなかなか興味深い。特に2速以上の通常走行域では、電子制御スロットルを備えたクイックシフターと遜色ない自然な制御レベルに仕上がっている。

ただ、始動の作業に関してはかなり異質。エンジンをかけてEクラッチ作動のインジケーターを確認したら、〝クラッチレバーを握らず〞にチェンジペダルを踏んでニュートラルから1速に入れる……のだが、このチェンジペダルを踏み込む瞬間がなかなか緊張する。長年MT車に慣れ親しんできたライダーなら、この行為がどれだけの暴挙であるか想像できるだろう。とはいえ、そんな緊張も2、3回発進すればすっかり慣れてしまうのだが……。いやはや技術の進歩とは恐ろしいものである。

発進してしまえばE-Clutchの操作はよくあるクイックシフターとなんら変わりない。クラッチレバーを使わずシフトチェンジが可能。6速での発進も可能なほど丁寧なクラッチ操作をするが、高いギヤでの発進はクラッチの摩耗を促進させるとのこと

+2㎏増、+5.5万円でクラッチ操作から解放される!

ホンダのE-Clutchは、自動変速のAT機構と勘違いされることがあるがそうではない。あくまでクラッチ操作を自動で行う“電子制御クラッチ機構”である。そのためライダーによるチェンジペダルの操作は必要であり、運転免許の区分も“AT限定免許”では運行できず、一般的なバイクの運転免許が必要になる。またこのE-Clutchの最大の特徴は既存のエンジンに転用がしやすいシンプルな構造にある。CAN通信のハーネスは必要になるものの、3分割されたエンジン側クラッチレバーを2コのモーターで動かすというシンプルな構造のため、電子制御スロットルを持たないような250ccクラスのモデル既存のエンジンへの搭載がしやすいのだ。実際2025年3月にはレブル250にもE-Clutch仕様が登場する。

エンジンのクラッチユニットの外側に取り付けられたE-Clutchユニット。エンジン側クラッチレバーを操作するためのギヤとモーター2コがその主要構成部品だ
E-Clutch化に必要なメカニカルパーツはこれだけ。ノーマル比+2㎏と軽く、しかも価格も5万5000円増程度で済むのが魅力
E-Clutch作動中はシフトレバーの遊びが非常に大きくなり、握り込むとE-Clutchのシステムが一時的に切れ、クラッチレバーの負荷が戻ってくる。また速度とギヤが合わない場合にはギヤチェンジを促す表示がギヤポジションインジケーターに表示
E-Clutchの機能はON/OFF が可能なほか、シフトペダルを操作する際の負荷レベルが「ハード」、「ミディアム」、「ソフト」3段階から選べるが、そこまで大きくシフトタッチは変わらない
フルロックでのUターンも可能だが、電子制御スロットルを持つDCTやY-AMTに比べると、E-Clutchは極上低速域の制御にスムーズさを欠く。……が電子制御スロットルなしでここまでの精度に仕上げていることに驚く

CB650R E-Clutch

エンジン:水冷4st.直列4 気筒648 ㏄
最高出力:95ps/12000rpm
最大トルク:6.4㎏ -m/9500rpm
重量:207㎏(スタンダードは205㎏)
シート高:810 ㎜
燃料タンク容量:15L(レギュラーガソリン)
タイヤサイズ:F=120/70ZR17 / R=180/55ZR17
価格:108万9000円(スタンダードは103万4000円)

他の新世代CBシリーズ(250、125 /1000は生産終了)と同様、ネオクラシックテイストの丸目ヘッドライトを採用。灯火類はナンバー灯に至るまでフルLED
648㏄の直4エンジンは実に素直で扱いやすいオールマイティキャラ。通勤通学などの日常からツーリングまで使いやすく、トラクションコントロールも装備
テーパータイプのバーハンドルを採用しており、リーンウィズはもちろん、リーンアウト、リーンインとライディングポジションの自由度が非常に高い
E-Clutchの操作感覚は、発進してしまえばクイックシフターとほぼ同等。ただ停止中はもちろん、発進時や停止直前にもクラッチレバーを握る必要がない
燃料タンク容量は15L。WMTCモード値による燃費は21.3㎞/Lで、計算上ワンタンクで約320㎞の走行が可能。燃費はE-Clutch の方が0.2㎞/L悪い
2分割式のシートを採用。ライダーシートは前方の跨り部分の角がしっかり面取りされており、車幅が大きくなりやすい直4エンジンモデルにも関わらず足着き性が良い
タンデムシートの下には、車載工具とETC車載器が収まるくらいのスペース。またタンデムシート裏には左右に荷かけフックを引っ掛けるループがある
倒立フォークにラジアルマウントキャリパーと見た目はスポーツ性が高そうだが、乗ってみるとオーソドックスなロードスポーツキャラクターで非常に乗りやすい

テスター : 172㎝ 75㎏
シート高810㎜。直4エンジンのモデルながら着座部はしっかり絞り込まれており、カカトまでしっかり付けられる足着きの良さ。上半身は街乗りからツーリング、ス

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