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【DUCATI・Scrambler Icon】ドゥカティ・スクランブラー最新モデル|進化したトラクションコントロールとライディング性能[深堀りバイク日誌]

2023年のモデルチェンジで、ドゥカティ・スクランブラーはさらなる進化を遂げた。軽量化された空冷SOHCデスモドロミックエンジン、ライドバイワイヤ導入による電子制御の充実、そしてトラクションコントロールの新搭載。オンロードはもちろん、フラットダートでも楽しく走れる最新スクランブラーの実力を徹底検証!

ドゥカティジャパン 70120-030-292
https://www.ducati.com/

しっかり作り込まれた電子制御が好印象

エンジンに関しては2023年のモデルチェンジで、空冷SOHCデスモドロミック2バルブ803ccという従来からの仕様はそのままに2.5kgもの軽量化を行ってユーロ5に対応。目を見張るのは新たにライドバイワイヤのスロットルを得たことで電子制御装備が劇的に進化したことだ。

従来からのABSに加え、トラクションコントロールシステムを803ccスクランブラーシリーズとして初搭載。この他、ライディングモードの切り替え機能やクイックシフター(モデルによってはオプション)も追加されている。

さらにはボッシュ製の6軸IMUまで積まれたことで、ABS&トラクションコントロールはより高度なコーナリング制御も行うようになっている。この新採用のトラクションコントロールについてはもう少し深掘りしてみよう。

システムの介入度は、機能を全カットするオフに加え4段階の介入度を用意。ライディングモードにおけるトラクションコントロールのデフォルト設定は、スポーツが「2」で、ロードが「3」。正直、ツーリングや街乗りといった通常走行なら、このデフォルト設定のまま十分楽しくスポーティに走ることができる。

元来、803ccスクランブラーのエンジンは、トルクフルかつ扱いやすく、ついスロットルを開けたくなるようなキャラクターである。そこにトラクションコントロールが加わったことでそのキャラクターをさらに際立つことになった。もしもの時にしっかりスリップ転倒を防いでくれる電子制御のサポートがあるおかげで、より気持ちよくスロットルをワイドオープンできるからだ。試乗ではドライ路面をメインに砂の浮いた路面やフラットダートまでいろいろ試してみたのだが、エンジンのワイドオープンキャラをいい感じでサポートする、ドゥカティらしいスポーティな味付けになっている。

そこで今度はトラクションコントロールの介入度「1」まで落としてみる。するとスロットルオンに対して若干の空転を許容するような玄人好みの設定になった。面白そうなのでしっかりダートセクションへと持ち込んでみれば、スロットルを開けた瞬間にはバリッと路面を掻く感触が味わえた後に、しっかり空転を抑制する制御を入れてくる。おかげでスクランブラーらしい元気なライディングがダートセクションでも気持ちよく行えるのだ。

いくらスクランブラーシリーズが軽量コンパクトとはいえ、803ccのエンジンを積んだ大型バイクである。トラクションコントロールシステムを装備してなかった頃のスクランブラーでダートセクションを走らせるにはそれなりの気合と覚悟が必要だった。だが、このトラクションコントロールシステムを備えた最新型なら誰もがフラットダートくらいなら簡単に走れてしまいそうである。戯れに介入度「4」まで強めてダートを走ってみれば、スロットル操作をどう間違ったってリアタイヤが空転しないような確実な制御設定に切り替わった。しかも、それがとても自然で違和感がないから、おっかなびっくりの初心者だとしても確実に砂利道を進んでいける。今回は雨天での試乗はできなかったが、この自然な介入具合ならウエットコンディションだって安心して走れるはずだ。

コンパクトな扱いやすい車体ながら、ワインディングではしっかりスポーツ走行が楽しめ、しかもトラクションコントロールシステムのおかげでどんな道でも走れてしまうドゥカティ・スクランブラー。街乗りが似合いそうなストリート系のナリなのだが、なかなかオールマイティなキャラクターに仕上がっている。こんなバイクが旅の相棒なら、スクランブラーらしい遊び心でいろいろな景色を見 ることができるに違いない。

Scrambler Icon
エンジン:空冷4st.90°L型2気筒803 ㏄
最高出力:73ps/8250rpm
最大トルク:6.7㎏ -m/7000rpm
重量:176㎏(燃料除く)
シート高:795 ㎜
燃料タンク容量:14.5L(ハイオク指定)
タイヤサイズ:F=110/80R18・R=180/55R17
価格:129万9000円~

タンク容量は14.5L&公表燃費19.2㎞/Lで、計算上の航続距離は約278㎞。アイコンのアクセサリーにはタンクカバーなどの計8色の樹脂パーツセット(5万1601円)がある
幅広かつアップライトなミリバー(φ22.2㎜)タイプのアルミ製ハンドルを採用。ポジションの雰囲気はオフ車というより、昔のトラッカー系車両のイメージに近い
スイングアーム、フレーム、エンジン刷新で先代から4㎏のシェイプアップに成功。ホイールはアイコンとフルスロットルはキャストで、ナイトシフトがスポーク
2023年のモデルチェンジで電子制御スロットルを装備してからはUP/DOWN対応のクイックシフター(4万7300円)もオプションで用意(フルスロットルは標準装備)
スクランブラーシリーズの象徴である“×”マークを大きく取り入れたヘッドライト。リングタイプのDRLを採用し、手動切り替えとオートを選ぶことができる
フロントホイールは大きめの18インチだが走りは軽快。スタイル的にはダート適性が高そうだが、サスストロークは前後150㎜でダートでの走りはソコソコという印象
スイングアームマウントのナンバーステーのおかげでテール周りが特徴的。シート高が780㎜になるローシート(4 万854 円) や810㎜のハイシート(5万1601円)もある

ドゥカティ空冷Lツインが楽しめる稀有な存在

“軽量コンパクトな空冷Lツイン”にこれまた“スリムな鋼管トラスフレーム”の組み合わせ、軽快感が際立つスポーツバイクを作るメーカーというイメージが強かったひと昔前のドゥカティ。しかし現在は、騒音規制に排出ガス規制の影響で水冷化&大排気量化が進んだところで、このスクランブラーシリーズで空冷エンジンが復活したのが10年前。以来、ドゥカティのラインナップで空冷Lツインが味わえるのはスクランブラーシリーズのみとなっている。

シリンダーを90度、直角にレイアウトすることから“Lツイン”と呼ばれる。空冷のLツインは単気筒並みにスリムで鋼管トラスフレームとの相性がよく、軽快でスポーティなキャラクターの車体が作りやすい

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