【DUCATI・Scrambler Icon】ドゥカティ・スクランブラーの進化|10年を経た最新モデルの実力とは?[深堀りバイク日誌]
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2015年に登場したドゥカティのスクランブラーは今年で丸10年直近のモデルチェンジでは車体刷新を行い4㎏軽量化同時に電子制御のシステムが劇的に進化することになった
ドゥカティジャパン 70120-030-292
https://www.ducati.com/
10周年を迎えたスクランブラーシリーズ
2015年、ドゥカティがこのスクランブラーシリーズを発表した時、正直ここまでのロングセラーモデルになるとは思わなかった。当時は排出ガス、音量などの各種規制が強化され、ドゥカティに限らず多くのモデルがパワーダウンを嫌って性能を維持したままこれらの規制対応がしやすい水冷エンジンへとシフト。2015年は確かドゥカティのラインナップも軒並み水冷化し終えたくらいのタイミング。そんな時流に逆らうような空冷エンジンを搭載したスクランブラーシリーズが登場したものだから、正直なところ次の規制強化までの中継ぎ的なモデルなんだろう。……失礼ながら勝手にそう解釈していた。
ところがどっこい、そんなドゥカティ・スクランブラーは売れに売れた。おかげで登場から10年を経た2025年現在もドゥカティのスクランブラーシリーズは健在。どれだけ売れたかと言えば、この803ccのエンジンを搭載したシリーズに加え、ドゥカティとしては日本向けの専用モデルだったモンスター400以来のミドルクラス、スクランブラーシックスティ2を翌年に発売。さらに2018年には1079ccエンジンを搭載したスクランブラー1100まで登場させることになったくらいだ。
2025年現在、国内外各社のラインナップには、〝スクランブラー〞と呼ばれるジャンルのモデルがちらほら見受けられるが、このジャンルの火付け役は、この803ccエンジンを搭載するドゥカティのスクランブラーであることは疑いようがない。
しかもこのドゥカティのスクランブラー、登場時のプロモーションがなかなか揮っていた。ドゥカティの他のラインナップとは完全に区別されており、オフィシャルホームページも別に作られた。イタリアンレッドで統一されたドゥカティのホームページにスクランブラーの姿はなく、隅のほうにある小さなバナーをクリックするとスクランブラーのイメージカラーである黄色で彩られた専用ホームページにジャンプするという凝った演出だったのだ。
当時のドゥカティ広報さんに、「なぜそんなまどろっこしいことをするのか?」なんてドストレートな質問をぶつけてみたら、スクランブラーはドゥカティのモデルとしては実験的な要素が強く、既存のモデルとプロモーションをきっちり分けることにしたとのこと。
よくよく聞けばこのスクランブラーは、アメリカの西海岸あたりで流行ったストリートカルチャーや、2000年代の日本のストリートバイク(いわゆるトラッカー)文化をドゥカティなりの解釈で昇華したモデル。イタリアンバイクの象徴的存在であるドゥカティブランドとは一緒にできない。……当時はそういうことだったようだ。
さて、今回試乗するスクランブラーアイコンを見てみよう。モダンなイメージは2015年とほぼ同じ、それこそどこが変わったのか?と初代の写真と見比べたくなるほどスクランブラーらしいイメージを引き継いでいるが、中身はほぼ刷新されている。
列挙すれば、車体はフロント18インチ/リア17インチという基本コンポーネントは一緒だが、メインフレーム&サブフレーム、スイングアームを新作して、ハンドルも低めにリセッティング。車体に関してはトータル4kg(乾燥重量170kg)もの軽量化を行い、シート高も3mm下げた795mmとなっている。それによって、車体はさらに扱いやすくなり、乗り手の裾野を広げている。
だが、単に〝乗りやすい、扱いやすい〞だけで終わらないのがドゥカティのバイクだ。元々ドゥカティは、お家芸であるスリムな90度Lツインのエンジンに、これまたスリムでコンパクトな車体が作れるトラスフレーム組み合わせた軽快なスポーツバイクを作るのが得意なメーカーである。
このスクランブラーももちろんドゥカティが長年培ってきたコンパクトかつスポーティなマシン作りのエッセンスをしっかり受け継いでいる。実際、どことなくトラッカー系のストリートバイクを連想させるスタイリングながらも、その走りはしっかりドゥカティ。峠道に持ち込めば、気持ちよく応力をかけたコーナリングが行える。
Scrambler Icon
エンジン:空冷4st.90°L型2気筒803 ㏄
最高出力:73ps/8250rpm
最大トルク:6.7㎏ -m/7000rpm
重量:176㎏(燃料除く)
シート高:795 ㎜
燃料タンク容量:14.5L(ハイオク指定)
タイヤサイズ:F=110/80R18・R=180/55R17
価格:129万9000円~
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テスター:172㎝ 75㎏
シート高795㎜で先代比で3㎜低くなっている。両足で支えてもカカトまでべったり付けられる良足着き性。上半身は高めかつ幅広のハンドルのおかげでアップライトなポジション
最新モデルは電子制御装備が充実!
2023年のモデルチェンジでフレーム、スイングアーム、エンジンをリニューアルし、4㎏ものシェイプアップに成功したスクランブラーシリーズ。ただ最大のトピックは電子制御装備の充実だ。電子制御スロットルの導入に合わせててトラクションコントロールシステムやライディングモード切り替え機能を搭載。さらには6軸IMUを搭載したことにより、ABSやトラクションコントロールシステムの制御はコーナリング対応型となっている。
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