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未来を切り拓く YAMAHA MT-09“Y-AMT”

新型MT-09に搭載されたATとMTを兼ね備えた新機構“Y-AMT”
気になるツーリングシーンでの使い勝手をいつもの道で検証

取材協力:ヤマハ発動機 70120-090-819
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/

オートマなんかいらない? そんな声も上がっているが

MT‐09 Y‐AMTは「オートマのバイク」と紹介されがちだが、遠心クラッチ+無段階変速のスクーターとは根本的に異なる。

ヤマハの新機構Y‐AMTは、変速機構の新しいインターフェースの形なのだと思う。

その昔、バイクが生まれたときに変速機構はなかった。やがて出力が上がり、変速機構が生まれたが、イギリスなどの欧州車はペダルを右足で操作していたし、ハーレーなどはクルマのような左足クラッチ+ハンドシフトの時代もあった。現在の操作系が主流となったのは70年代に入ってからだ。既存のギアチェンジのインターフェースを進化させて、左手に集約したといえるのではないだろうか。

以前のオートマチックは、極低速のデリケートな加減速がライダーの意思にシンクロしにくいという課題があったと思う。しかしY‐AMTはそこが劇的に進化している。まるで自分の半クラッチの癖とスロットルワークを、事前に学習させたのかと思うくらい自然にスタートし、極低速で自分の感性に見事にシンクロしている。

駐車場から斜めに発進して合流するときや渋滞路などでも、まるで自分で半クラッチを使っているかのようだ。

街中に走り出してみる。Y‐AMTの運転フィーリングはミッション付きのバイクだ。MTモードでもATモードでも、頭の中のリズムはこれまでのバイクのリズムで運転している。ブーン、カチャ、ブーン、カチャ、ブーン〜といった感じで、それが大変スムーズに上質な感触で行われていく。クラッチ操作をバイクが介助してくれているような感覚だろうか。

こうしたアシストが渋滞路やロングツーリングで、労力を減らして疲労を軽減してくれるのは否定しない。しかし「楽をする」というのとは少し違う気がするのだ。ヤマハの「より上質なスポーツバイク」の提案だと感じた。

さて、次はいつものツーリングルートに持ち込んでみよう。

新世代インター フェース
CP3エンジンンの変速機構にシフトとクラッチのアクチュエータ―(変換装置)を搭載

YRC7つのモード

右側ハンドルスイッチの奥側のボタンでMT、ATモードを選択。手前のボタンで走行モードを切り替える。MTはスポーツ、ストリート、レインと任意に設定できるカスタム2種。ATはDとD+だ

SPORT
STREET
RAIN
CUSTOM1.2
D+
D

各モードはPWR(出力特性)、TCS(トラクション)、SCS(スライド)、LIF(ウイリー)の4つの電子制御を組み合わせている。レインとDモードのPWR4は、出力特製だけでなく最高出力も抑えている

街中や渋滞路では抜群の利便性

シフトペダルとクラッチレバーを廃している。シフトチェンジは左スイッチ下のシーソー式レバーで行う。シフトアップは人差し指で引き、シフトダウンは親指でボタンを押す。手を開いたとき、僕の人差し指と親指の間は12㎝。Mサイズ相当の小さな手でも良好な操作感だ

街中ではATモードが便利。スピードに感じてギアを選んでくれる。時速22㎞程度に落ちると1速に入る。停止時はニュートラルにできる

各種モードを試しながらY-AMTの理解度を高める

自分でシフト操作をするMTモードはスポーツ、ストリート、レイン、そして4つの電子制御を任意に設定できるカスタムが2種。そしてATモードはDとD+で、全部で7種類が設定されている。

パワーを一番抑えたPWR4が設定されているのはレインとDなので、穏やかに走りたければ天候にかかわらずどちらかを選ぼう。

東名高速道路で東京から沼津に向かう。大和から厚木あたりはいつも流れが悪い。時速80から50㎞を行ったり来たり。高速ではATのパワフルな方のD+で決まりだろうと思っていたが、いつもより低めのギアを推奨してくる。MT‐09のエンジンは非常にトルクフルなので、もう一段高いギアで走りたいタイミングが多いことに気が付いた。となると、MTモードの方が自分でギア選択のタイミングを決められるので心地良い。時速80㎞出てれば6速で低い回転域でいいよね。という感覚だ。

渋滞などで速度が落ちれば、MTモードでもシフトダウンしてくれるので、高速道路はスポーツかストリートが快適だという結論だ。これはいつもの僕の走りに近いので快適に感じたが、ライダーによってモード選択の好みは分かれるだろう。

伊豆縦貫道を抜けて、いよいよワインディングロードに入っていく。怖がりの僕は、まずはレインモードを試す。シフトアップはオートシフターが人差し指での操作になっただけといった感じで、瞬時に対応できた。自分で操作するより数段スムーズ。これは「楽をする」のではなく、圧倒的に「楽しむ」感覚だ。ところが、カーブに入っていくときは勝手が違う。減速しながら体勢を整え、最後のシフトダウンからブレーキリリースの瞬間までのルーティーンがいつもと違うので、タイミングがつかめない。これは少しアジャストが必要だと感じた。

スポーツモードの加速は、スロットルを開けているだけで、レーシングライダーのようなスムーズな加速ができるというが、それは僕が試すことではないので割愛。

僕は各モードを試した結果、ワインディングではATのD+モードが気に入った。というのは、自分のミスをカバーしてくれるからだ。ギヤの選択を間違っても速度に合わせたギヤにさっと入れてくれる。一度はシフトダウンしたいところで、操作ミスをしてシフトアップしてしまったが、ブレーキで速度を落としていたため、ブン、ブーンとすぐに2速落としてくれて事なきを得た。

ロングツーリング途中の峠越えでは、こうしたアシストがライダーの安全につながると思う。修行ではないので、こうしたアシストを僕は歓迎したいと思う。

スポーツバイクとしても上質で、大きな可能性を感じるが、旅の相棒としても、こんなに頼りになるやつはいない。言葉こそ交わしていないが、バイクといつもより濃密なコミュニケーションを交わした気がする。

最後にもう一度言うが、MT‐09 Y‐AMTは楽なだけのオートマバイクではない。新機構を手に入れた上質なスポーツバイクだ。

高速道路を降りて伊豆縦貫道で大仁まで行き、達磨山を抜けて西伊豆スカイラインへ。細かい峠道でもD+モードで快適かつスポーティに走行できた

高速道路はMTモードがオススメ

ハンドル左側スイッチボックスにはウインカー、ヘッドライト、ハザードランプに加え、クルーズコントロール、TFTメーターコントロールを集約している。YRCのセッティングやヤマハのアプリYコネクトなども、画面を見ながらボタンとスティックで操作可能

ワインディングはD+が快適だ

いつもはインカムで音楽を聴きながら走ることが多いが、今回は無意識のうちに、エンジンやミッション、吸・排気音を楽しんでいる自分がいた。数日にわたりMT-09Y-AMTと過ごしてみて、ヤマハが掲げる「人機共鳴」という言葉が腑に落ちた

シーソー式のレバーによるシフト操作に慣れたなら、ワインディングロードをスポーツモードで走るのもイイ。より上質で緻密な操作感により、バイクを操る新しい楽しみを実感できるはずだ

YAMAHAMT-09 Y-AMT

DATA
価格:136 万4000 円
エンジン:水冷4st.並列3 気筒 888cc
最高出力:120ps/10000rpm
最大トルク:9.5kgf-m/7000rpm
シート高:825mm
車重:196kg
燃料タンク容量:14L
タイヤサイズ:F=120/70ZR17 R=180/55ZR17

シフト操作を手元のシーソー式シフトレバーに集約したY-AMTは、ライダーをスロットルとブレーキ操作、ライディングポジション、タイヤのグリップに集中しやすくさせる。MT-09が持つスポーツライディングへの陶酔感・没入感・快感をさらに引き出す

操作系を集約した特徴的な左側スイッチ。クラッチレバーは廃している。タンク上側の網の部分は、吸気音をライダーに届けるAAグリル。ライダーの高揚感を高める装置だ。シート下にUSB電源ソケットを装備

燃費も良好
燃料はプレミアムガソリン指定。今回の燃費は1リットルで23㎞程度走行できた。満タンにすると250㎞程度は走れるようだ

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