1. HOME
  2. バイク
  3. 【単車倶楽部/YAMAHA Y-AMT】自動変速で誰でもプロ並みの加速を実現! ヤマハ「MT-09 Y-AMT」試乗インプレッション【インプレッション】

【単車倶楽部/YAMAHA Y-AMT】自動変速で誰でもプロ並みの加速を実現! ヤマハ「MT-09 Y-AMT」試乗インプレッション【インプレッション】

ヤマハが新たに開発した自動変速システム「Y-AMT」のメディア試乗会に参加。ケニー佐川がその実力を体感してきた

TEXT:ケニー佐川(佐川 健太郎) PHOTO:NANDY KOSUGE

クラッチ&シフト操作なしで楽に爽快な走りを楽しめる

「Y-AMT」はヤマハの最新自動変速システムで、バイクの発進や変速を自動化するまさに革新的な技術である。試乗したのはMT-09をベースにしたテスト車両だったが、これを搭載した市販モデル「MT-09 Y-AMT」がすでに2023年9月30日に登場している。

Y-AMTはクラッチレバーとシフトペダルを持たない新オートマ機構だ。変速を左ハンドル手元にあるシーソー式のシフトレバーで行う「MTモード」と、変速を完全自動化する「ATモード」を搭載する。MTモードでは左手のシーソー式シフトレバーを使って変速ができるので、従来のバイク同様に積極的な走りも可能。ATモードに切り替えればすべて自動で変速してくれ、初心者でもストレスなく運転できるのがポイントだ。

Y-AMTは「人機官能」というヤマハの理念に基づいて開発されていて、運転の楽しさを味わいつつ、誰もがスキルに関係なく爽快なハンドリングを堪能できるという。構造もシンプルだ。ベースのMT-09の変速機構はそのまま使いながら、電動のシフトアクチュエーターとクラッチアクチュエーターをコンパクトに装備している。

見た目もすっきり、重量も約2.8kgと軽量なため、ハンドリングに影響を与えることもほとんどない。また、AT限定の大型二輪免許でも乗れるため、乗り出しへのハードルが低くなる点もメリットだろう。

Y-AMTによりクラッチ&シフト操作から解放される
Y-AMTによりクラッチ&シフト操作から解放されることで、その余裕をブレーキやスロットル操作、ライン取りなどの作業に振り分けることができる

エンストなくUターン楽々瞬間変速でサーキットも速い

さて試乗してみた感想だが、まず操作がとてもイージーだ。ATモードには「Dモード」と「D+モード」という2つの選択肢があって、それぞれ穏やかな走行とスポーティな走行を楽しめる。市街地を想定した低速コースではDモードでUターンやスラロームにも挑戦してみたが、リアブレーキを使っても違和感なく安定して曲がれる。

さらに信号待ちや一時停止時には自動でシフトダウンしてくれるのでストレスフリー。半クラを使わずに済むのでエンストの心配もなく安心だ。ただ、停止するギリギリまで速度を落とすと、クラッチが自動的に切れてしまうので、その点にはちょっと慣れが必要かも。

サーキット走行ではY-AMTの特性がさらに際立った。D+モードはエンジン回転数を適切に維持しつつ、しっかりトルクを乗せてシフトアップしてくれるので普通に楽しく走れる。さらにサーキットを本気で攻めたいなら「MTモード」がオススメ。

自分の意志でギアを選択できるのでマニュアルシフトと同じ感覚で走れる。最初の数周はシフト操作にちょっと戸惑ったが、慣れてくるとその快適さを実感。シフトレバーを軽く押すだけで瞬時にギアが入る感じが気持ちいい!ちなみにY-AMTが変速に要する時間は0.1秒とクイックシフターと同等レベル。これはプロライダーがクイックシフター装備のマシンでフル加速するのに匹敵するという凄さだ。

さらに言うと、クイックシフターが苦手な低速でも常時変速可能でしかもシフトショックも少ないことにも注目。低速でギアチェンジを繰り返す公道では特に大きな利点となるはずだ。

 最後に、ホンダの「DCT」や「Eクラッチ」との違いにも触れておきたいところ。DCTはデュアルクラッチを使ったシステムでシームレスな変速が特徴だが、構造が複雑なので重くなりがち。一方、Eクラッチはクラッチレバーを備え自動でもレバー操作でも変速できるがチェンジ操作はペダルで行う必要がある。

これに対しY-AMTはクラッチとシフトの両方の操作を自動化している点が大きな違いだ。まとめると、Y-AMTは特に街乗りやツーリングを楽しみたい初心者や中級者におすすめしたいシステム。パイクの操作自体を楽しみたい人やサーキット志向のライダーにはマニュアルミッションの方が向いているかも。いずれにしてもY-AMTの操作のしやすさや快適さは体験してみる価値があると思う。実際に乗ってみることで、その価値が分かるはずだ。

MT-09 Y-AMT。外観の違いはスタンダードモデルと見比べても分からないレベルだ
エンジン右側はクラッチレリーズ部分を覆うようにカバーされていて、その内側にあるアクチュエーターはほとんど見えない
v左側スイッチボックス下にシフトレバーを装備。+スイッチを人差し指で引くか裏から弾いてシフトアップ、後ろの−スイッチを親指で押してシフトダウン。クラッチレバーは付いていない
「Y-AMTユニット」CG図
Y-AMTユニットのCG図。シリンダー背面に小さくユニットを組み込んでいる。ユニット重量はわずか2.8kgと軽量でハンドリングへの影響は最小限< /i>
Y-AMTユニットのCG図。シリンダー背面に小さくユニットを組み込んでいる。ユニット重量はわずか2.8kgと軽量でハンドリングへの影響は最小限
右から「MT-09 Y-AMT」、中央が「MT-09スタンダード」、左が「MT-09純正カスタム」
向かって右から「MT-09 Y-AMT」、中央が「MT-09スタンダード」、左が「MT-09純正カスタム」によるツーリング仕様。選択肢が増えることはユーザーにとってもメリットだ
右側スイッチボックス前側に「AT/MT」の切り替えスイッチを装備。それ以外はスタンダードモデルと同じ
シフトペダルも付いていない。低速バランスでステップを踏ん張ったり、ステップワークで切り返す場合にペダルの誤操作がないこともメリットだ
極低速でのUターンも楽ちん
極低速でのUターンもこのとおり。調整が難しい半クラ操作をせずともスロットルとリアブレーキだけで小さく曲がることができる

・SPEC ・

カラーディープパープリッシュブルーメタリックC(ブルー)、マットダークグレーメタリック6(マットダークグレー)
軸間距1,430mm
シート高825mm
車両重量196kg
エンジン形式水冷4ストDOHC4バルブ 直列3気筒888cc
最高出力88kW(120PS)/10,000r/min
最大トルク93N・m(9.5kgf・m)/7,000r/min
燃料タンク容量14L
タイヤサイズF=120/70ZR17M/C (58W)(チューブレスR=180/55ZR17M/C (73W)(チューブレス)
メーカー希望小売価格1,364,000円(消費税10%込)

 

関連記事