R1250GSはBMW最新の電子制御技術により
オンロードでもオフロードでも
類まれなる快適性と安全性を実現する
年々進化し続けている電子制御テクノロジー
電子制御テクノロジーは、この10年ほどの間で著しく進歩しており、バイクそのものの進化のカギを握っているといって過言ではない。とりわけ、走行性能と安全性能の高度化の要因は、コンピュータの高速化と大容量化、そして小型化といわれている。
とくにABSやトラクションコントロール、電子制御サスペンションは、各種センサーから送られる膨大なデータを瞬時に分析処理することで高性能化している。これらのデータは、ECU(エンジン制御装置)で総合的に解析され、各機能を同時に調節するようにもなっている。電子制御の進歩は速く、R1200GSでもイヤーモデルごとにアップデートされ、各機能が高性能化している。
R1250GSには最先端の電子制御テクノロジーが採用され、強力なパワーを安全に引き出し、走らせることに成功している。
点火・燃料噴射制御
BMS-O(エンジンマネジメントシステム)
エンジンの改良に伴い、エンジン制御装置(ECU)は最新版となるBMS-Oとなった。燃料噴射系では、ジェットインジェクションバルブを2基としてより効率的な燃焼を実現。ノックセンサーを2基とすることで不完全燃焼を防ぎ、従来どおりオクタン価95のガソリンの使用を可能としている。これはレギュラーガソリンへの対応を示すが、日本のガソリンのオクタン価はレギュラーが89~91、ハイオクが96以上になっているため、R1250(1200)GSは日本国内においてはハイオク指定となる
ライディング・モード・プロ
標準装備では「ロード」と「レイン」の2種。上位グレードの「ライディングモード・プロ」では「ダイナミック」「「エンデューロ」「エンデューロ・プロ」が加わり、計5種から走行モードを選択可能(おそらく日本仕様はフルパッケージになるだろう)。エンジン出力特性と同時にABS、ASC、DTC、ダイナミックESAもそれぞれ最適な設定へと変更される
シフト・アシスタント・プロ
クラッチ操作をすることなくシフトアップ/ダウン操作を可能とする電子制御テクノロジー。シフトペダルの操作を検知すると、アップ時には点火カット、ダウン時にはブリッピング(瞬時の燃料噴射)を行うことでクラッチ操作を不要としている。運転操作の簡易化によるメリットは、スポーツライディングの高度化、一般走行における安全性に大きく貢献する
ヒルスタート・コントロール
坂道発進する際、リヤブレーキが自動で作動することでバイクが後退することを防ぐ機能。制動力は車速に応じて弱まり、一定速度で解除される。R1250GSでは「ヒルスタート・コントロール・プロ」にアップデートされ、5%以上の勾配では自動でヒルスタート・コントロールが作動するようになった。これについては設定で自動と手動を切り替えることも可能だ
駆動制御
DTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)
強力な駆動力をかけた際、グリップ力(トラクション)を失って後輪が空転する現象を抑制する機能。たとえば濡れて滑りやすい路面や砂利道などでスロットルを大きく開けるとタイヤが空回りしてしまうが、DTCはそのような状況を検知すると燃料噴射や点火を調整して駆動力を抑え、エンジンパワーを適切に設定することでタイヤを空転させずに駆動力を変える。オフロード走行においても優れた性能を発揮し、確実な推進力を生み出す。公式資料ではアップデートが明記されていないが、通例から推測するとR1250GSではさらに改良されているとも考えられる
ASC(オートマチック・スタビリティ・コントロール)
ASCもDTCと同じように後輪の空転を抑制する機能で、DTCとは機能的に重複する部分も大きい。しかしASCとDTCとは別々の機能だ。その違いを簡単にいうと、DTCがバイクを前進させるために空転を抑制することを主眼としているのに対して、ASCは後輪が横滑りして転倒してしまう事故を防ぐことを主眼としている。つまりDTCは加速性、ASCは安全性に大きく貢献する電子制御テクノロジーだ。これによってR1250GSは濡れた泥の路面でも安定した駆動力を発生し、車体を前進させるとともに横滑りを抑制し、安全な走行性能を確保しているのだ
ブレーキ制御
DBC(ダイナミック・ブレーキ・コントロール)
R1250 シリーズで新たに採用された機能で、ブレーキ中に誤ってスロットルを開けてしまった際に、点火や燃料噴射を抑制することでエンジン回転の上昇を防ぎ、エンジンブレーキを確実に利用することで安全に減速・停止させるための機能だ。通常の運転中はあまり動作する機会がない機能だが、衝突回避のための制動、いわゆるパニックブレーキでスロットルを誤操作してしまった場合の安全性を担保する電子制御テクノロジーだ。ABSを万全に機能させるための補助的な役割だが、DBCの新採用によってBMWの安全性はさらに高まったといえるだろう
ABS Pro(アンチロック・ブレーキ・システム・プロ)
一般的にはコーナリングABSと呼ばれている高性能なABSで、車速と車体のバンク角(倒れ具合)を検出して最適な減速制御を行うテクノロジー。通常、バイクが傾いているときに強いブレーキをかけるとバイクは起き上がろうとする挙動を示す。また、コーナリング中の急制動はタイヤのグリップ力を失わせ、転倒を引き起こす要因になる。しかしABS Proはそのような状況でも制動力を適切に制御し、バイクを確実に減速させる。GSでは2016年式から採用されており、公式資料では明記されていないもののR1250GSでは制御が洗練されている可能性もある
サスペンション制御
ダイナミックESA
GSに採用されるのはセミアクティブ式と呼ばれる電子制御サスペンションで、車速、加速あるいは減速状態、バンク角、路面状況に応じてサスペンションの減衰力とスプリングプリロードを電気的に調整する機構。これによっていかなる状況でも車体を安定させ、タイヤのグリップ力や駆動力を最大限に発揮できる。基本的にライディングモードと連動して自動設定されるが、2017年式からはダイナミックESAのみを個別に調整することも可能だ。R1250RTには“次世代”と冠されたダイナミックESAが採用され、「ダイナミック・プロ」が追加された4モードが装備される。R1250GSには、レイン、ロード、ダイナミック、エンデューロ、エンデューロ・プロの5モードが搭載される