【Thinking Time 55】バイク業界の未来図|自工会が掲げる2025年度の4大重点課題とは?

第11回自工会二輪車委員会メディアミーティングが開催された。コミューター市場の将来を占う新基準原付の登場など2025年国内市場の課題と展望について議論された
BikeJIN2025年4月号 Vol.266掲載
1月30日、第11回自工会二輪車委員会メディアミーティングが開催された。今回のテーマは「自工会二輪車委員会委員長就任ご挨拶および2025年国内二輪市場の展望」というもの。新たに委員長に就任した設楽元文さんのもと国内二輪市場の課題や展望について議論された。

自工会の二輪車委員会委員長にヤマハ発動機の設楽元文さんが就任
日本自動車工業会でバイクに関する活動を担当する二輪車委員会。その委員長は代々ヤマハ発動機社長が務めてきた。今回委員長に就任した設楽元文(したら・もとふみ)さんはこの時点では同社副社長だったが、後日の同社決算説明会で社長就任が発表された。
保険加入率を上げるには?新基準原付は大丈夫か?
まず、バイクメーカー各社で構成される自工会二輪車委員会から2025年度の活動方針が示された。国内仕様のバイクにも関わってくる技術基準調和などのグローバルな課題と国内市場に特化した課題の双方に取り組むが、現在、国内市場に対しては、バイクラブフォーラムで設定された「二輪車産業政策ロードマップ2030」に基づいて、4つの政策課題(事故ゼロ、脱炭素、利用環境、ファン化醸成)を置き、11の施策が進められている。
課題の中でも今回、最重点とされたのは次の4つ。
①任意保険加入率の低さ
②新基準原付の施行
③二輪駐車場の整備
④二輪車の魅力訴求
バイクの任意保険の加入率(普及率)については、2024年3月の時点で、自家用普通車が8割を超えるのに対し、対人・対物補償ともに5割以下という現状で危惧されている。これはファミリーバイク特約を除いた数値だが、125cc超のバイクが国内で約396万台も登録されていることを考えると心配な状況だ。
メディアとの質疑応答の中でも、バイクに乗り始めた若年層にとって高額な保険料がハードルとなっている、複数台を持つユーザーにとって車両ごとの保険加入が大きな負担となる、メーカー系販売店とネット通販など車両購入先での説明・勧誘の有無といった意見が出された。自工会としては、損害保険会社とこうした課題を共有し、加入率を向上すべく新たなバイク向け保険商品の開発を促すなど状況の改善に務める意向だ。
なお、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)を搭載する先進安全自動車(ASV)へのASV割引など、四輪車での安全装備と保険商品の関係は良好で、実際に乗車中の死者数が減っているという。ABS義務化等でコスト増を負担し、あおり運転防止法施行(2020年6月)以降、ドライブレコーダーを装着するライダーも増えているいま、モノ・コトにおける安全技術と意識の高まりをさらに醸成・加速させるためにも、利用者の行動分析を行うなどエビデンスの整備も必要とされるだろう。
次に、この春から施行される新基準原付についても心配事が多い。区分の詳細は欄外に記したが、いかんせんこれまでの報道やSNSによる誤解がかなり浸透してしまっている。「クルマの免許や原付免許で125ccに乗れるようになる」といった誤解は道交法違反の検挙に直結する恐れがある。また新基準原付の駐輪についても全国一斉で対応が行われるわけではなく、公営から民間へと徐々に広がるだろうから「駐められない!」「ここに駐めるな!」といった問題が各所で起こる可能性が高い。車格は125ccクラスのため、既存の自転車等駐車場や自転車駐輪場で受け入れるのにも物理的な限界がある。
なお、自工会は施行以降、関係各所と協力しながら周知に務めていくとしたが、警察による取り締まりの難しさなども予測される。新基準原付だということが車両の外観からもひと目で分かるような対策(大きなステッカーを貼るなど)も講じるべきではないだろうか。二輪業界によるコミューターシェア維持・拡大のためにもユーザーやステークホルダーの視点に立って細部を詰めていってほしい。

設楽委員長は今年の抱負を「心」とした。「いろいろなものを動かすときに重要なものが心。心に触れるような活動を進めたい」
前年の40万台を割り36万台に減少原付一種は2割弱の伸び!
24年の二輪車登録・出荷実績合計は36万7960台と前年から約10%減少した。ガソリン原付生産終了の報道もあり、原付一種だけは駆け込み需要の影響か20%弱も増加したが、その他の排気量ではのきなみ減少を見せた。40万台を下回ったのは20年以来4年ぶりのこと。

2025年度自工会二輪車委員会の方針
下は二輪車委員会の今年度方針だ。グローバルではIMMA(国際二輪自動車工業会)やJASIC(自動車基準認証国際化研究センター)との法規・基準調和での連携、インド・アジアなど新興国での二輪事故削減など、国内ではロードマップの施策推進やバイクファンの醸成など。

バイク単独では加入率が低かった!任意保険普及率を高めるためには?
25年度最重点課題のひとつが任意保険加入率の低さ。125㏄以下が加入できるファミリー特約を除いたバイク単独での加入率は対人補償で約46.7%、対物補償で約47.7%といずれも50%を下回り、街中を走っているバイクの2台に1台は未加入という状態。人身事故が対象の自賠責保険だけだと被害者とその遺族への死亡慰謝料は400〜1350万円しか支払われないため、まずまかないきれない。



四輪車に比べると安全装備の劣る二輪車だが、近年はABSの義務化やドライブレコーダーの任意装着も増えた。エビデンスとなるデータを集め、四輪のASV(自動ブレーキ)割引のような保険商品開発にも取り組んでほしい
課題も多い! 新基準原付の施行は4月1日から!

4月1日に道路交通法が、11月13日には道路運送車両法が施行規則の一部改正を行うことで、排気量125㏄以下かつ最高出力4.0kW以下に制御した二輪車が新たに一般原動機付自転車(いわゆる原付)に区分(追加)され、新基準原付として運用されるようになる。しかしこれまでの報道・SNSなどにより普通自動車免許や原付免許で原付二種に乗れるようになると誤解する人が多く、周知の段階ですでに大きな課題を抱えてしまっている。今後は誤解を回避すべく、自工会の公式媒体や販売会社、加盟団体、販売店、試験場、教習所などで積極的な広報を行う。


4月1日以降、ポスター(左図はサンプル)やデジタルサイネージも活用して誤認を回避したい意向だ。運用開始時から課題は多いと言えるだろう