【Thinking Time 54】神戸市・三宮の街中に見るバイク駐車場の先進事例

国際港湾都市、神戸の繁華街を歩いてみると次から次にバイク駐車場が目に飛び込んでくる。原付から自動二輪まで、その多様で柔軟な物件・土地活用について紹介する。
※BikeJIN vol.265 2025年3月号参照
バイク駐車場の先進事例として神戸市の取り組みを紹介したい。海と山に囲まれた港湾都市、神戸は狭い平地の中に戦前から続く繁華街や住宅地が密集し、坂道も多いことから原付スクーターの利用者が多い。街中を歩いていると路地裏やアーケードにもスクーターが置かれ、首都圏ではもはや見られなくなった、ある種牧歌的な光景も見ることができる(東京だと原付でさえ、すぐに放置駐車違反となってしまう)。

神戸市の中心繁華街で目にするうらやましいほどの駐車環境
自動二輪駐車施設に関する附置義務制定自治体が少ないなか、2015年12月に制定した神戸市。三宮など繁華街で目につくのは、路上や公共施設をフル活用したライダーにとって使いやすい二輪駐車場の数々だ。行政主導のものも多く本当にうらやましい環境だ。
06年の改正道路法以降路上駐車場に取り組んだ
市民の足として原付スクーターが根付き、いまだ市民権を得ているというのは、めっきり原付を見なくなった東京都心と比べると、やはりどこかうらやましいものだが、神戸市内でこれだけ原付バイクが走っているのには訳がある。
その理由のひとつが、ライダー・原付利用者に寛容な駐車施設環境だろう。日本自動車工業会が全国の主な自治体に対して行った「自治体の二輪車駐車場政策に関する調査」(23年1月)の報告書を見ても、神戸市は他の自治体に比べてバイク駐車場設置に関して真摯に取り組んでいることがわかる。
市が関連条例の制定、改正などで取り組んできた公設駐車場に関しては、自転車等駐車場への125㏄以下バイクの受け入れ(民営でも一部実施)や、自動車駐車場への自動二輪車(125㏄超)の受け入れを実現している。また、自動二輪車に関する附置義務条例を制定しているため、商業施設でも大型バイクが当たり前のように駐車できる。
さらに特筆すべきは、神戸市が道路法施行令の改正(06年11月)に基づく駐輪・駐車場の整備を行うにあたり、欧州のような車道空間の活用を積極的に推進してきたことだ。改正道路法では道路管理者以外でも道路上に自動二輪車や自転車駐車場を占用物件として設置できるようになり、駐車設備に関する技術的な指針も策定されている。
神戸市は、改正道路法以降、歩道の拡幅工事など道路空間の再編時には歩道上に自転車駐輪場を設置したり、車道のロードサイドにバイク駐車場を設置したりするなどして駐車環境を改善してきた。その背景には、昔ながらの商店街には附置義務駐車場を新設するスペースがないといった物理的な理由もあるが、前述したように原付利用者が商店街に買い物に来た際に、放置駐車をするのではなくスムーズな短時間駐車ができるように配慮した結果だ。
改正道路法により自治体が主導しやすくなった路上駐車場の設置だが、日本全国、その他の自治体の取り組みと現状を見てもわかるように、残念ながら思うようには進んでいない。バイク駐車問題の本丸とされる東京都内でもまだ数か所程度だ。構造的には簡単なのでもっと増えてもいいはずだが、駐車需要に対応するための暫定的な措置とされているため積極的に取り組む自治体が少ないというのも理由だ。
駐車問題は地域の課題だ。多くの自治体では駅前や繁華街での自転車放置対策が喫緊の課題であり、コンパクトシティやスマートシティといったまちづくり計画、特定原付や自動運転車両の運行も想定した道路環境整備など、駐車施策の検討はいまが山場だ。そうしたなか、神戸市のバイク駐車施策への姿勢はもっと評価されてよいものだし、後に続くような自治体の登場にも期待したいところだ。


神戸三宮のまちづくりが素晴らしい!スムーズで使いやすい路上駐車場
神戸市は瀬戸内海と六甲山地にはさまれた細長い街だ。海から山までは数kmほどの平地しかなく坂道も多いため、買い物やちょっとした移動で原付スクーターがよく利用されるそうだ。スムーズで使いやすい路上駐車場が多いのも利用者の実態に即している。
「共同住宅にもバイク駐車場」の動き

神戸市には「神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例」に基づく「指定建築物制度」における共同住宅へのバイク駐車施設確保の基準がある。住戸数と同等の駐車施設を確保し、うち15%は自動二輪等に対応させるなどだ。
自転車から大型バイクまでをカバーする路上駐車場
三宮の繁華街には“放置禁止区域”の標識や標示がたくさん設置されているが、そのぶん車道上や歩道上を活用した停め場も数多く用意されている。自転車は歩道上に設置されたサイクルラック型、バイクは歩道部を大きく削ってスペースを確保してのチェーンロック型が多い。自転車から自動二輪車まで街なかに路上駐車場が点在しているのだ。


焼け残った高架下もバイク駐車場に!「元町~神戸高架下」(モトコー)の活用

神戸市で驚かされるのはバイク駐車場の多様さと柔軟性だ。中でもJR元町駅と神戸駅を結ぶ元町高架通商店街(モトコー)の活用は独特なもの。戦後の闇市から脈々と受け継がれるモトコーだが、その高架下沿いには「若菜神戸線(サンセット通り)【B】」駐車場(左写真)が、高架下スペースには「阪急三宮高架下バイク駐車場」が設けられている。


阪急三宮高架下バイク駐車場は文字通り高架下にある。昭和の戦後から残る歴史を感じる空間に最新のバイクが並ぶ
公設・民営を問わずレベルの高いバイク駐車場

神戸市三宮界隈のバイク駐車場をピックアップして紹介する。公設・民営ともに路上駐車場が多いので出入りがスムーズに行え、駅まで徒歩数分という立地も魅力。また、最初の60〜90分が無料という駐車場が多く、繁華街のお店にちょっと立ち寄りたい、軽く食事をしたいといった場合でも気軽に利用できる。ライダー、原付利用者にとってフレンドリーでレベルの高い駐車場が揃っているのだ。
エコステーション21 東町筋バイク駐車場
神戸市役所の裏通り(東町筋)にある125㏄以下用路上駐車場。チェーンロック式が採用され、利用料金は最初の1.5時間は無料、以降8時間ごとに200円


エコステーション21 東町線バイク駐車場5
東遊園地沿いの路上にある125㏄以下用駐車場。一方通行の道路沿いなので安全が確保しやすい。駐車後1.5時間無料、以降8時間ごと200円と利用しやすい


神戸市立 三宮駐車場(南)
神戸市が管理する自動二輪駐車場の中でも最大の施設。料金は当日1回410円、定期利用の場合でも1か月6,110円とリーズナブル。旧居留地にもほど近い

