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【Thinking Time 53】「BLF in南国みやざき」でライダー誘致と電動化

第12回となるバイクラブフォーラムが宮崎県宮崎市で開催された。ライダーを誘致したい地域行政に求められるものと地域交通衰退による。移動困難者対策としてのコミューターの電動化について議論された

※BikeJIN vol.264 2025年2月号参照

昨年の9月27日、宮崎県宮崎市の宮崎市民プラザで「第12回バイクラブフォーラム in 南国みやざき」が開催された。バイクラブフォーラムは、世界に通用する素晴らしいバイク文化の創造、バイク産業の振興と市場の発展などを目的とした取り組みで、毎年1回、関係者らが集まってシンポジウムを開催している。12回目となる今回は、宮崎市が開催地となった。

なお、バイクラブフォーラムに関連した取り組みは経済産業省や二輪業界団体、地方公共団体らが中心となって進められているが、決して閉鎖的な組織や取り組みではない。個人としての参画も歓迎されており、シンポジウムの会場には一般席が用意されているほか、質疑応答にも参加することができる。ぜひ読者の皆さんにも会場に足を運んでほしいと思う。

2025年バイクラブフォーラム開催地は“バイクのまち”埼玉県小鹿野町
次回のバイクラブフォーラムは“バイクで町おこし”の元祖、埼玉県小鹿野町に決定した。同町はライダー向けの観光マップ作成、施設へのバイク駐車場設置、協賛店でのライダー向け特典のほか、「おがのライダー宿」などのイベントも開催している(写真)。

バイクツーリズム活性化と原付電動化について議論

さて、今回のバイクラブフォーラムは4つのパートで構成されていた。まず、開催地の宮崎市からツーリングユーザーへの魅力や観光資源を紹介する発表が行われた。ライダーを誘致しようという動きはコロナ禍以降、多くの自治体で行われているが、宮崎市はまさに今それを始めようとしているところだ。開会の挨拶では宮崎市長の清山知憲さんに加え、宮崎県知事の河野俊嗣さんも登壇し、二輪車産業とバイクツーリズムの振興を歓迎した。

続いて、バイクラブフォーラムにおける取り組みの道しるべである「二輪車産業政策ロードマップ2030」の進捗が発表された。経済産業省製造産業局自動車課の是安俊宏さんと開催実行委員会の飛田淳司さんらから、コロナ禍以降の二輪市場の動向と取り組み状況、課題などについて詳しい説明があった。特に国内市場では新車販売台数や二輪免許取得者数が増えるなど喜ばしい状況である一方、二輪乗車中の交通事故死者数も増えていることへの対策が喫緊の課題とされ、日本二輪車普及安全協会専務理事の小椋道生さんからビギナー向けの「ベーシックライディングレッスン」についての説明が行われた。

第3部では、バイクツーリズム活性化による地域振興について、SSTRを主導するオートバイ冒険家の風間深志さんと宮崎市で観光を担当する本間彰人さんが対談した。成功事例としてのツーリングイベント「SSTR」とはどういうものか、イベントを始めたきっかけや目的、自治体も交えた建て付けのほか、成功のために求められる地域住民からのおもてなしの精神などについて、風間さんが本間さんにレクチャーしていくというスタイルとなった。

最後のプログラムでは、電動二輪車の利活用推進をテーマにパネルディスカッションが行われた。2050年カーボンニュートラル達成に向けて国や二輪業界が取り組む中、原付領域においては都市部と地方部の両方で電動化に多くのメリットがあることが説明された。特に、国内4社が標準化に合意した交換式バッテリーを用いたバッテリーシェアリングを活用することで、現在の車体・バッテリー性能でも様々な用途のユーザーにフィットするということが解説された。

また、その先行事例として鹿児島県日置市が進めている電動原付スクーター・自転車を用いた「電動バイクシェアリング」実証事業についての説明も行われた。県立吹上高校生徒の通学や職員の業務に利用することで二酸化炭素排出量の削減と中山間地の移動の課題改善を目指したものだ。

最後に、次回行われる第13回バイクラブフォーラムは首都圏の中山間地である埼玉県小鹿野町で開催されることが発表された。元祖〝バイクのまち〞として知られる小鹿野町は秩父地域にあり、高校生のバイク通学も行われている。残留三ない運動と移動課題、高校生への交通安全教育、再生エネルギー活用などの議論にも期待したい。

主催団体のひとつ経済産業省課長は今年もツーリングを実施

経済産業省製造産業局自動車課長の伊藤政道さんは、今年も課のメンバーと日帰りツーリングに行った様子を報告。「やはり走りが楽しい、気持ちいいということに尽きます」と感想を述べ、バイクの魅力を1人でも多くの方に感じてもらうことが大切なことと語った。

二輪車産業政策ロードマップ2030の進捗免許取得者増も交通事故死者数も増えた

二輪車産業の成長戦略をまとめた「二輪車産業政策ロードマップ2030」の進捗発表では、国内外の二輪市況について報告が行われた。国内新車販売台数は40.5万台と横ばいながら大型・普通ともに二輪免許取得者は増加し、20代以下および女性の比率も向上。一方で、バイク乗車中の交通事故死者数も増えたことが喫緊の課題とされ、業界として取り組んでいることを伝えた。

バイクラブフォーラムでは時勢に即した4つの政策課題と11の実施施策を設定し様々な取り組みを行っている
過去5年の年代別・自動二輪車乗車中の死者数推移。20代以下と60代以上で急増し、20代以下は人数も多い状況だ
20代以下・60代といったビギナー・リターンライダーを対象としたベーシックライディングレッスンの取り組みも紹介

SSTR大成功の秘訣とは?宮崎市担当者が風間深志代表から学ぶ

ライダーを呼び込むバイクツーリズムについて、宮崎市観光商工部の本間彰人さんとライダーズフォーラム代表でオートバイ冒険家の風間深志さんが対談。風間さんが主導し、国内最大のツーリングイベントに成長した「SSTR(サンライズ・サンセット・ツーリング・ラリー)」の魅力やノウハウ、石川県からの歓迎とおもてなし、ライダーによる地域貢献、募金活動などが話された。

「ライダーを歓迎してくれる環境整備と住民の人情、おもてなしがあれば必ずライダーは来ますよ」と風間さん(右)
宮崎市が掲げたライダー歓迎都市への目標。風間さんから本間さんに「もう言っちゃったからね」と圧がかかる場面も(笑)
SSTRの経済効果も示された。羽咋市では宿泊・飲食等の一次効果で約5000万円、二次効果も含めると約20億円にも上る

地方でこそ活躍の可能性がある!?電動コミューター活用について議論・提言

パネルディスカッション「電動二輪車利活用による社会課題(脆弱な二次交通)解決」では、電動二輪車の活用について「モビリティー革命の背景と地方部交通網の課題」「電動二輪車“ならでは”の特性を活かした利活用推進」「地方部における社会課題解決に向け、電動二輪車ができること」の3つをテーマとして議論された。

バッテリー交換ステーションを面で設置すべき都市部と、駅やコンビニなど点で設置すべき地方部の違い。どちらも電動コミューター導入のメリットは多い
カーボンニュートラルを推し進める自治体の事例として鹿児島県日置市が紹介された。エネルギーの地産地消は地域経済にとっても重要な取り組みだ
国内二輪4社共通仕様・交換式バッテリーのシェアリング事業を行う株式会社Gachaco(ガチャコ)・CEOの渡辺一成さんは交換ステーション展開の現状や課題を説明
電動スクーターでの通学実証を行う日置市
日置市役所の井上英樹さんからは、通学バスが廃止となった県立吹上高等学校における電動原付スクーターを通学等に用いるシェアリング実証事業について詳しい説明があった

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