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【正直ディーラー】今後のバイクライフを彩る愛車を探しているのですが……

とある街に、主要な国内外二輪ブランドの現行モデルをすべて正規販売できるという
ディーラー契約の規定が厳しい現代の日本では実現不可能と思われた二輪販売店がある
「正直ディーラー」と呼ばれるこの店舗を支えるのは、凄腕セールス担当者の本音語男
今日もまた、愛車選びに悩むバイク乗りがショールームを訪れ、語男に助言を……

包み隠さず本音のの営業トーク!?

正直ディーラー・セールス担当

本音語男(ほんね・かたろお)
国内と海外の二輪メーカーが販売する現行車に精通する凄腕の二輪ディーラー営業マン。自身もツーリングやサーキット走行やモトクロス遊びで多彩なバイクに乗りまくり、その経験もセールストークに活かす。好きな言葉は「誠実」、嫌いな言葉は「忖度」

今回のお客様

妻(50代・リターンライダー)
若い頃に“中免”を取得し250㏄スポーツに乗っていたが、妊娠を機にバイクから離れた。リターンライダーとして自分時間を楽しもうと画策中。日本人女性の平均より少しだけ高い身長160㎝だ
夫(50代・バイク歴35年)
大学生時代から途切れることなく乗り続けてきたベテランライダー。「ここらでバイクライフにもうひと華……」と目論んでいる。身長175㎝で、ほとんどの車種で足着きに大きな問題を感じない体格

夢見るオトナが陥るあれもこれも……の罠!?

本音:いらっしゃいませ。ご用件がありましたらお声がけください。

夫:あのぉ、ちょっと最新機種を見たいと思って来たのですが、こちらはあまりに車種が多くて……。少しお話を聞いてもいいでしょうか?

本音:はい、もちろん! それで、どのような車種をお探しで?夫 いやもう、その段階から悩んでいるんです。いつの間にか50代を迎えちゃって、人生の中でバイクに乗れる時期もとっくに後半戦。ここらで一度、新しいバイク遊びにも挑戦したいと思っているのですが……。

妻:この人、昔から目移りしやすいんです。まあオンナに関しては、この顔じゃあ私以外に目移りしたところで相手にされないでしょうけど。

本音:そうおっしゃるということは、こちらの方は奥様ですね。ご一緒にバイク屋までいらっしゃるご夫婦というのは少ないので、もしかして奥様もバイク乗りで?

妻:じつは、中免(※現在の普通二輪免許)は持っているんですが、いまは乗っていないんです。でも、ようやく子どもが手離れしたんで、20数年ぶりに復活しようかと。だから私のバイク選びも、お時間あれば相談に乗っていただきたいんです!

本音:なるほど。では順番に、まずは旦那様のほうから次期愛車候補を絞りましょう。で旦那様は、今後どんな遊びを予定していますか?

夫:それが、考えれば考えるほど夢が膨らんじゃって……。もちろんこれまでのように日帰りツーリングも行きたいですが、北海道とか九州も走りたいし、サーキットにも興味はあるけど、ダートも走ってみたいんです。そう考えると、やっぱりアドベンチャーがオススメですか?

本音:確かにいま挙げられた遊びを一番カバーできそうではありますが、アドベンチャーはあくまで適応範囲が広いだけで、旅には最高ですが、じつはそれ以外のシーンでは、悪く言うと中途半端になりがち。そもそも、多用途なバイクはあっても、すべてにおいて高いレベルで万能な機種はまずないし、だからこそ余裕のある人やコアなバイクフリークは、複数台所有が当然なわけでして。

夫:そうか、やっぱり遊びは絞らないとダメですよね……。それなら極端な遊びはひとまず置いておくとして、普通にツーリングするのにオススメバイクってあります?

本音:う~ん、その質問に答えるのが一番難しいんですよね……。だって一般的なツーリングは、舗装された公道を走るわけで、メーカーがナンバー付きとして市販しているバイクは、どれも問題なく公道を走れるようになっているわけです。もちろん、前傾がキツいとか航続距離が短いとか乗り心地が悪いなど、車種ごとにネガはありますが、それでも気合いと根性と体力さえあれば、ツーリングできますから。

妻:そういえば私、若い頃からレーサーレプリカのカタチが好きで、北海道とかも走りました。レーサーの伊藤真一さんが好きだったから、ホンダのCBR250RRで。まあ、旦那はどちらかと言うと伊東四朗寄りのルックスですけど。

夫:いま、オレの顔は関係なくね?まあでも言われてみれば、昔はみんなそんな感じだったなあ……。でもあれって結局のところ、当時はみんな若かったというだけでは?

本音:もちろん、それもあります。世界的なアドベンチャーブームは、みんながダートや林道に目覚めたわけじゃなくて、ライダーが高齢化して、前傾がキツいバイクに乗るのが辛くなったからというのが通説ですしね。

夫:ほら、やっぱり!もうスーパースポーツでツーリングするような時代じゃなんですね。

本音:いや、そうでもないですよ。レースで勝つためのマシンは別ですが、スーパースポーツの中にも乗り味は優しい車種がいくつもあります。昔はほぼすべてのレーサーレプリカが、レースユースを意識して速さを優先する傾向でしたが、ルックスで分類されることが多い現代では、例えばホンダのCBR650RやCBR400R、スズキのGSX250R、カワサキのニンジャ650みたいに、ワンメイクとか草レースを除けば基本的にレースと無縁の車種もあります。まあGSX250Rやニンジャ650は、シャープなカタチのフルカウルスポーツというだけで、これをスーパースポーツに分類していいのか、そもそも微妙ですが……。

夫:じゃあ逆に、いま挙げられたような車種は、サーキットを走るのは厳しいということですか?

本音:いや、そんなことありません。ツーリングと同じようにサーキット走行も、走行会レベルなら基本的にどんなバイクで走っても楽しいです。ただ、そのときに走りのレベル……、つまり速さがどれくらいかという違いがあるだけで。

夫:つまり、カタチから入ろうとしすぎると遊びの幅を狭めてしまうってことか。でもそうなると、これまた車種選びが難しいですね。

本音:これはひとつのご提案ですが、自分の気持ちに素直に、憧れのバイクを選択してみてはいかがでしょうか? 旦那様は50代とのことでしたが、そうなると、バイクを本気で楽しめる旬の時期というのは、あと10年くらいだと思うんです。

夫:一応、バイクは一生乗り続けるつもりではいるのですが……。

妻:「カッコいいバイク乗りのじいちゃんになって、学校で孫に自慢してもらう」が口癖だもんね!

本音:いや、スイマセン。60代でバイクに乗れなくなるという意味じゃないんです。体力的なことを考えると、とくに大型クラスの場合、その車種が持つ性能や世界観を味わい尽くせる年齢がそれくらいまでなのではないかという推測です。そしてそれなら、まだ体力があるうちに憧れのバイクに乗っておいたほうが、たぶん楽しいと思うんです。

夫:確かにそういう考え方もありますね。そうやって考えると、人生設計と同じでバイクライフの未来を計画しておくことも大事なのか!

妻:でも、ウチにそこまでぜい沢する余裕はないよ!!

本音:まあ、どこのご家庭でも奥様はたいていそうおっしゃいます。でも、これを奥様にバラすのはなんですが、終のバイクという究極の言い訳をすると、家族の承認を得やすいんですよねえ。

夫:つまり、そのバイクに一生乗るから、代わりに価格で妥協せずスゴくいいバイクを買うということ?

本音:「終のバイクだから!」というのは、家族の説得だけでなく、自分の迷いを振り切る言い訳にもなりやすいようですよ。

夫:なるほどねえ。50代で選ぶ終のバイクだから、元気なうちに味わっておきたい憧れの車種。ここまでの話でなんか少しだけ、自分が買うべきバイクが見えてきた気がします。

妻:でもアナタ、私もその言い訳を知っちゃったから、「終のバイク」なんて言葉は信じないよ? もちろん、数年後に買い替えなんて言いだしたら、「はぁ!?」ってなる。

本音:大丈夫です、奥様。バイクって、破損や故障や盗難のリスクはありますが、基本的には資産なんです。とくに近年は中古車相場が全体的に高めで、しかも次に乗り替えるなら年齢的にダウンサイジング傾向のはずなので、持ち出しナシで乗り替えられる可能性も十分あります。

夫:うぉ~、ナイスフォロー!! さすがはバイクショップのセールスマン。まあでも、本当にそうですよねえ。趣味の道具で、ここまでリセール価値が全体的に落ちない業界というのも珍しいと思います。

妻:一度奮発すると、そのバイクを壊さなければ、少額で乗り替えていける可能性もあるのか……。それなら私もいいバイクを買っておいたほうが?

本音:いえ、そこは少し考え方を変えましょう。ちょうどいいので奥様のバイク選びに話を移すと、お客様は20 年以上ぶりのリターンとのこと。そうなると最初は初心者とほぼ変わらないでしょうし、加齢による体力的な衰えもあるわけで、まあ400㏄クラス以下なら大丈夫だとは思いますが、あまりスゴいバイクだと苦戦する可能性もあると思います。

妻:確かに日常生活でも体力が落ちてきた自覚はあるから、本当は免許を取得して大型を……とも思っていたけど、まずは下のクラスで様子見も悪くないかもしれませんね。

本音:奥様は、見たところ身長1 60㎝くらいかと。女性の筋力ということも考慮すると、多少は足着き性のことも考えながら車種選択したほうがいいかもしれませんね。

妻:それなら、シート高はどれくらいまでなら大丈夫です?

本音:足着きは、メーカーが発表しているシート高だけでなく、シート前側の形状やステップと足が干渉するか否かでも変わるし、軽いバイクならつま先ツンツンでも大丈夫だけど重量級はムリとか、同じシート高でもリヤサスが柔らかい車種や体重がある人だとサスが沈んで足が着きやすくなるなど、いろんな要素が関係してきます。だから、数字だけで判断してはダメです。

妻:そうなんですか? でも、何かしらの目安は欲しい気が……。

本音:もちろんそういう意見も多いと思いますけどね。例えばホンダのCL250は、シート高の数字を800以下にしたかったようで、標準シートは790㎜に設定されています。ところが純正アクセサリーにあるフラットシートのほうが、足を着いたときも乗っているときも快適性が格段に上。しかも足を着くときにシートと太腿が干渉しづらいことから、スペックの30㎜アップほどは足着き性の違いを感じないんです。

妻:そういうことを聞くと、やっぱりまずは現車に一度またがって、自分の感覚で判断することが大切なんだって理解できます!

本音:足着きが悪すぎて何度も立ちゴケしてしまうようでは、そもそもバイクに乗ることを楽しめませんし、足着きもある程度は大事。でも、バイクはずっと足を着いて走らせる乗り物ではないですし、両足がベタッと着かなくても慣れたら支えていられるので、足着きばかりに固執して、本当に乗りたいバイクとか快適な乗り味を諦めてしまうのは、モッタイナイと思います。

夫:足着きの話は、男性にも当てはまりそうですね。なんかいろいろ話を聞いていて、いいヒントをもらった気がします。もう一度じっくり考えて、次はもっと具体的な購入相談をしたいのですが、そのときはまた力になってもらえますか?

本音:もちろんですとも。遅れましたがワタクシ、このディーラーで営業を担当している「ホ・ン・ネ」と申します。バイク選びに悩んだら、ぜひまたご来店を!

次期愛車選びで、まず考えるべき5つのこと

①この先、どんなバイク遊びをしたいのか?
②複数台所有を狙うのか、あくまで1台体制か?
③何年間くらい所有するプランなのか?
④予算と支払方法(現金orクレジットなど)は?
⑤夢や憧れに対する妥協をどこまで許容するか?

Knowledge#1 多用途に適応するバイクも、万能ではない。

“1 機種であらゆるバイク遊びを満喫できるバイク”なんて、この世には存在しない。例えばドゥカティのムルティストラーダシリーズは、「4 bikes in 1」をコンセプトに掲げているが、とはいえサーキットではパニガーレやストリートファイターといったシリーズほどの刺激は得られないし、本格的な林道遊びならもっと軽いバイクのほうが適している。「あれもやりたい、これもやりたい……」と夢を膨らませるのは自由だが、それをすべて1 台で実現しようとすれば、マシン的に無理が生じることも当然ながらあるのだ

Knowledge#2 同じカテゴリーでも旅への柔軟性は違う!?

ホンダ・CBR400R
ホンダ・CBR650R E-クラッチ
ホンダ・CBR1000RR-R ファイアーブレードSP

極論、どんなバイクでも気合いと根性があればロングツーリングだって楽しめる。もちろん、旅を意識してアドベンチャーやツアラーを選択することは悪くないが、カテゴリーに固執しすぎるとバイクライフの幅を狭めることにも……。そもそも、スーパースポーツでも意外と旅向きな車種もある。例えばホンダ・CBR シリーズだと、1000 は速さを最優先にした設計だが、650 と400 はライポジもキツすぎず、650 には自動制御機能のE- クラッチ仕様があり、400 は扱いやすいパラレルツインエンジンを搭載。旅でもツラくない

Knowledge#3 足着きがすべてではない。が、現実問題も……

※ホンダ・CRF250ラリーは、シート高830 ㎜の標準仕様と885 ㎜の< s >が選べる

日本では、足着き性をとにかく重視した愛車選びをするライダーが少なくない。しかしバイクというのは、足を着いている時間よりも走っている時間のほうが圧倒的に長いので、足着きばかりに固執して憧れのバイクに乗ることを諦めるのは、もったいない気もする。一方で現実問題として、「足がまるで着かなければ、発進すらままならない」ということもある。これでは、乗ることから遠ざかってしまうかも……。許容範囲をどこに設定するかは、車重やライダー個々の筋力と考え方でも変わるので、けっこう難しい問題なのだ

Knowledge#4 “終の愛車”は自分に対する最高の言い訳!?

カワサキ・ニンジャ H2 SX SE
BMW・R1300GS

最近は、新車乗り出し価格が300万円を超える高額な車種も増えてきたが、長いローンを組んででも、これらを購入して楽しんでいるユーザーは大勢いる。そのような方々に話を聞くと、よく返ってくる言葉が「これが最後のバイクだと思って」。これは「もうすぐ降りる」という意味ではなく、「一生買い替えず、乗り続けるつもりで奮発した」ということである。まあ、そんなことを言っていても10 年後にあっさり乗り替えるかもしれないが、とはいえ“終(つい)”を自分と家族の言い訳にしている人は少なくないようだ

Knowledge#5 バイクライフの“未来予想図”も考えてみたい

人生もバイクライフも、今後の計画を立てるのは本当に難しい。当然ながら、自分が何歳まで生きるかは誰にもわからないし、それと同じように、何歳までバイクに乗れるのかも不明だからである(体力や経済面での問題や周囲の反対もあるかも……)。とはいえ、今後のバイクライフが(夢や憧れではなく現実的に)どうなるかを予想してみると、だからこそ“今乗っておくべきバイク”とか“今後のために最適な愛車”が見えてくるかもしれない。50 歳以上なら、バイクライフの未来予想図を一度は考えてみたい

結論!

現実直視。“身の丈バイク”で再出発!
まだまだ乗る。だからこそ憧れの1台を!!

今回の夫妻は、語男のアドバイスも参考に、より具体的な購入車種選考段階に入った。夫の結論は、「一生乗るつもりだからこそ、体力のあるうちに大型バイク」。重量級に楽しく乗れるのは60 歳くらいまでと考え、現状でのリセールバリューも考慮して、スズキのハヤブサ(車重264 ㎏)を第一候補に設定しつつ、他の車種も検討している。一方で妻は、久しぶりのバイクということで、フレンドリーな250 ㏄クラスの一択。元々フルカウル好きということで、シート高780 ㎜で車重169 ㎏のヤマハ・YZF-R25 ABS などを候補に!

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