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【ハーレー和尚のバイク説法「不滅の法灯」】腰痛予防にも効果的?ツーリングに役立つ仏教の呼吸法と姿勢

BikeJIN2024年12月号 Vol.262掲載

ツーリングに生かす座禅のコツ:調身・調息・調心とは?

本瀧寺のシュウケンです。お恥ずかしいことに、夏の猛暑や疲れなどもあってか、先日少し腰を痛めてしまいました。ツーリングの秋となりましたが、読者の皆さんも長時間同じ姿勢でバイクに乗り続けて、腰などを痛めたりしないでください。

長時間同じ姿勢を続けると言えば、仏教の修行で座禅があります。私が修行した比叡山では、座禅のことを『坐禅止観』(ざぜんしかん)と呼びます。意味や方法は座禅と同じで、悟りを開くための大切な修行の一つです。身体中の力を抜いてダラ〜ンとしている方が楽そうに見えますが、じつは長時間続ける時には姿勢を正している方が疲れないものなのです。具体的に言うと、私の場合は、頭のてっぺんから糸で上に引っ張られているような感覚で顎を少し引き、背筋を伸ばします。最初はしんどいかも知れませんが、慣れてくるとこの姿勢の方が楽になってきます。

以前、座禅の基本で“調身・調息・調心”のお話しをしました。調身とは姿勢を正すこと。そして調息で息を整え、調心で心を落ち着かせます。どれか一つでも欠けると、正しい座禅を行うことができません。ちょうど日本の武道やスポーツで言う“心技体”と一緒で、3つが揃って初めて最大限の力を発揮できるのです。

この話をツーリングに例えてみましょう。まずツーリングには目的地があります。その目的地に行くためのバイクと、それに乗るライダーが必要です。この3つが揃って、初めてツーリングに出掛けることができるのです。目的地が大雨だったりすると、ツーリングを中止にする人も多いと思います。仮に出発しても現地で充分に楽しむことができません。

次にバイクですが、整備不良やエンジンなどの調子が悪いのに出発する人はいないと思います。最後にライダー、そう貴方自身です。体調が優れないのに無理をして出発すると、現地で楽しめないのはもちろん、途中で事故を起こしたりする可能性が高くなります。体調なら自分で判断して、出発を遅らせたり、中止にしたりもできますが、意外に判断できないのが、心の状態です。少し寝過ごして焦っていないでしょうか。友人が集合に遅れてイライラしていないでしょうか。体調はもちろん心の状態もすべて含めて、貴方のコンディションなのです。もし出発前や、道中で何かイライラした場合は、そのまま走り続けるのではなく、一度バイクを停めてください。胡座(あぐら)までかく必要はありません。バイクに跨ったままで構いませんので、調身・調息・調心で心を落ち着かせましょう。そしてすべてがベストなコンディションでツーリングを続けてください。きっと楽しいツーリングになるはずです。

合掌

シュウケン和尚と愛車のハーレーダビットソンのショベルヘッドFLH。仕事の関係でなかなかバイクに乗る機会がないものの、今年の10月に京都府南丹市で行われた「古き二輪を愛でる会」に参加。久しぶりに愛車とのツーリングを楽しんだ
“静”の修行の座禅に対して、本瀧寺で行う滝行は“動”の修行とされる。ともに自分自身に向き合い、精神力を鍛えるなど仏教ならず古くから武道などの世界でも取り入れられている。写真は本瀧寺境内の御滝
バイク寺として親しまれる大阪府能勢町にある「妙見宗総本山 本瀧寺」の執事長。40歳の時に大型二輪免許を取得。ショベルに乗るハーレー和尚として、バイク講話など交通安全普及に努める

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