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【Thinking Time㊿】バイクの日に地域活性化イベント! 大学生が考える聖地の村おこし

8月19日、バイクの日にライダーの聖地、道志において大学生らによる
地域活性化イベントが開催された。多くのライダーが立ち寄る
道の駅どうしで行われたイベントの模様、その企画主旨や課題とは?

※BikeJIN vol.261 2024年11月号参照

8月19日のバイクの日、今年も全国各地で安全運転啓発に関するイベントが開催されたが、ここでは地域の大学生が村おこしについてライダーと協働しているケースについて紹介したい。

首都圏ライダーの聖地、道志ライダーウェルカムとなるか?
コロナ禍でのバイク免許取得、バイク販売好調のニュースは無関心層にも浸透しており、ライダーを活用した村おこしを考える自治体はここ数年でずいぶん増えた。しかしライダー誘致はウェルカムすればよいという簡単なものではない。多くの課題をクリアするために道志村がどう取り組んでいくのか注視したい。

道志村のライダー誘致には2つの課題改善が必要

イベント名称は「道志みちに恩返しバージョン3」というもので、首都圏ライダーの聖地でもある山梨県道志村の活性化を目的に、都留文科大学(山梨県都留市)のゼミ学生で構成された「道志村ぼ。」という団体が主催している。「道志村ぼ。」はバイクの日に合わせた本イベントを過去にも2回開催しており、ゼミの学生たちは学年により入れ替わるが、鈴木健大(すずきたけひろ)教授の指導のもと道志村での活動が継続されている。また同団体は、移住者向けの子育て情報誌「どうしでぎゅっ!」の作成や道の駅どうしでの商品考案、道志みちの沿道を網羅したグルメ冊子「道志ふうどブック(風土×Food)」の発行なども行っている。

さて、今回のイベント「道志みちに恩返しバージョン3」の内容は、ライダーが多く行き交う道志みちでの清掃・除草作業、休憩スポットとなっている道の駅どうしとその周辺の清掃作業、さらには交流会での交通安全マップの作成となった。本イベントでは、協力団体として山梨県警大月警察、大月交通安全協会道志支部、道志村役場、さらにはジャパンライダーズ宣言(日本二輪車普及安全協会)もクレジットされている。ステークホルダーの名称を見ても分かるように、道志村の地域活性化を目的とした本イベントの内容には、そのための目標と克服すべき課題の改善に向けた取り組みが盛り込まれている。

道志みち(国道413号)は、平日・週末を問わず多くのライダーが訪れる首都圏を代表するツーリングルートだ。神奈川県相模原市の青山交差点から富士山を望む山中湖までの約60㎞の区間は、一部に狭路もあるものの大小のカーブと程よいアップダウンが続き、走っているだけでライディングの楽しさが感じられる道だ。

ただし道志村の地域活性化を進める点では2つの大きな課題がある。ひとつは道志村がライダーの通過点となってしまい、村内の回遊性や滞留性がとても弱いこと。もうひとつはライダーが関わる交通事故の多さだ。道志みちは道志村を東西に貫いており、ライダーの足(バイク)を止める機会は多く作れそうなものだが、実際には道の駅どうしに集約されてしまい、その他のスポットの多くが素通りされてしまっている。また、神奈川県との県境である月夜野地区や山中湖村との境界(村の西端)である山伏峠付近などバイク事故が多発する場所も多い。

「道志村ぼ。」は道志村の魅力アップ、観光資源の開発といった点で役場とさまざまな取り組みで連携しており、バイク事故防止という点では大月警察署や交通安全協会と協力しながら安全運転啓発活動を行っている。来訪ライダーへのアンケートも実施しており、ライダーと地域の関係性を広く模索している最中だ。今後は施策について、より広くより深くライダーや関係団体との協働を目指していくことになるだろう。

道志村の課題は特殊なものではない。ライダー誘致を行う際には必ず課題として挙げられるものだ。ライダーが増えれば事故も増える。こんな印象を持たれてしまえば地域住民にとってもライダーにとっても良いことがない。「道志村ぼ。」が取り組むように、地域に認識・理解されるためのマナーアップ活動と安全運転啓発をセットで行っていくことがライダー誘致の前提となるだろう。学生たちの今後の活動にいっそう期待したい。

「道志村ぼ。」とは?

「道志村ぼ。」は2019年、都留文科大学地域社会学科、鈴木健大ゼミのメンバー11人で結成され、道志村の地域活性化のために活動している。「ライダーの皆さんに道志村の良いところを知ってほしい。交通事故という課題改善のためにも活動規模を拡大したい」と3期生の西野壱吹さん

今回のイベントには「道志村ぼ。」のメンバー8人と鈴木教授が参加。学生も参加ライダーも名札をつけており、和気あいあいとした雰囲気の中で行われた

ライダーにとって道志は通過点!?
「道志村ぼ。」の目的と課題、目標

①清掃活動で道志みちをきれいに
②道志みち以外の魅力を知ってもらう
③本企画を恒常化する

「道志村ぼ。」は道志村の地域活性化をライダーと協働するにあたり、来訪ライダーを関係人口に変えること、交通安全意識の向上、村全体で歓迎する雰囲気づくりの3点を企画の目的とした。また、目標としては上記❶〜❸を挙げている

ライダーらによるボランティア団体の「Riders in Action」も協働し参加!

今回のイベントにはライダーらによるボランティア団体「Riders in Action(ライダーズインアクション)」も協働した。SNS等を通じて参加ライダーを集めることに始まり、清掃活動やヒヤリハット地図の制作も積極的に協力。ライダーズインアクションは普段は宮ケ瀬湖(神奈川県)や奥多摩湖(東京都)などで清掃・地域活性化のための活動を行っておりノウハウも豊富に持っている。今後も「道志村ぼ。」との協働、さらなる発展的な取り組みに期待したい。

山梨県警大月警察署の白バイと一緒に記念撮影を行ったライダーズインアクションのメンバー。いつものオレンジ色のビブスを着て活動した

マナーアップと安全運転啓発をセットで推進

「道志みちに恩返し Ver.3」の様子を紹介する。学生らは道の駅どうしにテントを立て、9時30分から受付を開始。参加ライダーが次々に訪れ、熱中症予防のための飲料や塩分タブレットなども配布された。参加者同士が打ち解けるためのアイスブレイクを行ったあと10時過ぎから二手に分かれて清掃活動が始まり、1班は道志みちを歩きながら沿道のゴミを拾い、2班は道の駅と道志川河川敷も含めたエリアを清掃した。その後の交流会では山梨県警、交通安全協会、役場の職員も加わって道志みちでのヒヤリハット体験の共有と危険マップ作りを行い、最後は全員で記念写真をして参加者にSNSなどへの情報発信を促した。

道志みち沿いで清掃活動をする参加者たちの横をツーリングライダーやドライブを楽しむドライバーが行き交った。彼らへの見え方も工夫すべきかもしれない
危険箇所をプロットした交通危険箇所マップ。「道志村ぼ。」ではこれまでも山梨県大月警察署、交通安全協会と連携し、村のグルメガイドにマップを掲載するなど安全運転を呼び掛けてきた
交流会では道志みちを走るライダーならではのヒヤリハットエピソードを出し合った。大月交通安全協会道志支部の皆さんはバイク事故事例にも詳しく危険マップ作りの精度が高まった
道の駅どうしの裏手に流れる道志川は渓流釣りや川遊びで多くの人が訪れる場所だ。参加者は河川敷にも足を伸ばして、草むらに落ちているような小さなゴミまで拾っていた
猛暑のなか「道志村ぼ。」の大学生と社会人ライダーが一緒にゴミ拾いを行った。ライダーのためのトングや軍手などはあらかじめ用意されていたので手ぶらで気軽に参加できた

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