[キャンプで”火”を使いこなせ!]LIGHT MY FIRE「焚き火のウエア」
標高の高い場所にあるキャンプ場では夜になると涼しいを通り越して肌寒いくらいになるところもある
焚き火に近づきたくなる気持ちが高まるけれど、ここで気を配りたいのが焚き火の火とウエアの関係だ
BikeJIN2024年9月号 Vol.259掲載
バイクのライディングウエアは昔なら「革ジャン」か「革ツナギ」と決まっていたものだが、最近は化学繊維の優れたものもたくさんある。皮革製品に比べて手入れも楽だし、強度も負けてはいない。
ただ仕方のないことだが、一部の特殊な繊維を除いては、一般的に化繊は熱には強くない。つまり焚き火との相性はあまりよくないのだ。もっとも、当然ながらライディングウエアは強度や摩擦を考慮して薄手には作られていないから、火の粉が付いた程度では簡単に穴が開いたりはしないだろうけれど。
素材として考えた場合、焚き火の火の粉に強いのは革とコットン(木綿)素材のものだ。ライディングジャケットとしては革ジャンかベルスタッフやバブアーなどのオイル引きコットン素材のジャケットが適している。最近はオールドファションのバイクがまた流行っているので、これらのウエアも似合うだろう。
季節的に薄着でもいられ、キャンプ地についてからパッド入りのゴツいライディングジャケットを脱げるような場合には長袖のコットンシャツを羽織るといいだろう。火の粉が腕についたくらいなら何でもないという人なら、コットンTシャツ1枚でもいいかもしれない。
寒い季節の焚き火のウエアとして最も適さないのがダウンジャケットのように表面が薄手の化繊繊維で作られたものとフリース素材で作られたものだ。お気に入りの高級なダウンジャケットやダウンベストはSNSでは映えるかもしれないが、焚き火に当たって翌朝明るくなってから見てみると穴だらけになっていて、とても悲しい思いをすることになるだろう。そのままにしておけば、小さな穴でも開いていれば中綿のダウンが抜け出してしまうことになる。フリース素材は細い繊維の集合体で、毛布のように空気を含むようにフンワリと作られているから、燃えるには最適な素材構造だ。小さな火の粉でも簡単に穴が開くし、状況によっては一気に燃え上がり、大ヤケドをすることにもなりかねない。
比較的薄手で軽く焚き火に向いているウエアはないのかと言えば、最近はなかなかいいものがある。焚き火ブームのおかげでアウトドアメーカー各社が難燃素材のジャケット類を出してくれたのだ。化繊でも熱に強く、火がついても炭化して燃え上がらない。実際に赤く燃えた炭の小片を乗せてテストをしてみたのだが(そんな状況になることはまずないと思うが)、炭化して穴は空いても燃え上がることはなかった。大きめのサイズを選べば薄手のダウンジャケットの上に羽織ることもできるだろう。僕は薄手のパーカーとして秋冬は日常でも愛用している。
ただし、このような化繊系の難燃加工素材は洗濯する時に柔軟剤を入れると生地表面に柔軟剤の成分の膜ができてしまい、難燃効果が薄れてしまう。製品の性能を十分に発揮させるためには注意書きをよく読んで取り扱うことが重要ということだ。