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【カタナ専門ショップ・ユニコーン⑭】ミュージアムの設立 目指す場所とは

専門的二輪車の世界には道を突き詰める楽しさあり!
スズキ・カタナシリーズのスペシャリストとして活動する横浜市のユニコーンジャパン
その代表を務める池田隆さんは極めて豊富な経験と知識を持つ世界最高峰の“刀職人”だ

(BikeJINvol.248 2023年8月号より抜粋)

前回このコラムで話題にした、カタナに関するミュージアム設立構想は、本当に少しずつですがプロジェクトを始動させています。すでに、ツーリング途中にも立ち寄りやすい神奈川県西部のとある場所に用地を取得。この土地には古民家や納屋などが残され、庭もかなり荒れた状態だったので、時間をつくり自分たちで少しずつ整備を続けています。

ユニコーンジャパンというのは、スズキの社員から独立した私が85年に創業した神戸ユニコーンがルーツ。つまり再来年には40周年を迎えます。私には跡を継ぐ息子がいるわけではないし、そもそもレジェンドカタナの今後ということを考えてみれば、存在数は今後減っていくばかりなので、現実問題として50年後まで継続できる商売ではないはず。このように考えると、ユニコーンジャパンというのはそろそろ「まとめ」の時期を迎えようとしています。

現在のユニコーンジャパンは横浜市金沢区にあり、サービス工場にショールームとカフェを併設しています。じつはここまでは、神戸ユニコーンを立ち上げたときに“夢”として考えていたこと。しかしその先はどうするのか……ということは、近年になるまでそれほど真剣に考えることはありませんでした。

ミュージアム設立を構想しはじめたのは、コロナ禍になる少し前あたりから。そして前号でも触れたように、21年10月に初代GSX1100Sカタナの開発責任者だった横内悦夫さんがお亡くなりになられたことで、強く意識しました。自分としては、初代カタナだけでなく、RG250 / 400ΓやGSX-R750など数々の名車を生み出した横内さんの偉大なる功績を、後世に伝えたいという想いが強くあるのです。

それと同時に、カタナのミュージアムを設立することで、カタナ好きやスズキファン、横内さんに縁のある方々などが気軽に集まれる場所になれば……とも思っています。おかげさまでユニコーンジャパンは、カタナに関して世界一の知識と技術を有するショップと称されることも多いですが、これはカタナのことだけをずっとやり続けてきた結果。そして弊社がそのように長くカタナに携われたのは、大勢のお客様やお世話になった方々に支えられてきたからです。そのような方々に、ミュージアムや付随する施設で楽しんでいただき、できることならそこから新しいコミュニティにつなげてもらうというのが、自分の仕事としては最後の大きな夢。ユニコーンジャパンに関わってくださった方々に、お礼の気持ちを込めて楽しい時間と空間を提供したいのです。

だから今回のミュージアム構想では、カタナの車両や関連する資料、グッズなどの展示に加えて、現在のショールームで営業しているよりも規模が大きなカフェ&レストランの併設とか、古民家をリノベーションした宿泊施設の運営、私が解説する宿泊者限定ミュージアムツアーの実施、横内さんが遺した貴重な資料の数々を使った特別展の開催など、さまざまなことを計画中。最終的に目指すのは、「カタナのテーマパーク」です。

訪れたときは新旧カタナが並べられていた、現店舗のショールーム。「神戸ユニコーンを創業したときから、現在に近い状態までは夢に描いていました」と池田さん

まあそうは言っても、まだプロジェクトは本当にスタートしたばかりで、これらはすべて頭の中で思い描いている段階。実際のところは、コストを削減するためにチェーンソーと装具を用意して自分たちでひたすら庭の木を切り、ミニショベルカーの操作を覚えて木の根を堀り、それらをウッドチッパーという機械で粉々にして、納屋に残されたゴミを処分して……なんていう状態です。40周年を迎える再来年までにある程度のカタチにするのが目標なのですが、さてどうなることやら……。

カタナミュージアム設立のために、池田さんが取得した用地の一部。納屋などがそのまま残されていて、清掃や修復にはまだかなり時間がかかりそう……。手前左に見えるのが、木々を粉砕するウッドチッパーと呼ばれる機械
探求心が強い池田さんは、いろいろ調べた挙句にミニショベルカーまで購入。すでに複雑な操作もほぼ完璧に習得しており、取得した用地の整地などに尽力中だ
ユニコーンジャパン代表
池田隆さん

85年にスズキ専売店「神戸ユニコーン」を創業し、徐々にカタナシリーズのパーツを開発。94年に神戸から横浜に移転し、自社生産カタナの販売などで注目を集めてきた

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