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【カタナ専門ショップ・ユニコーン⑬】カタナについて知識を得られる場を提供 ”ミュージアムの設立”

専門的二輪車の世界には道を突き詰める楽しさあり!
スズキ・カタナシリーズのスペシャリストとして活動する横浜市のユニコーンジャパン
その代表を務める池田隆さんは極めて豊富な経験と知識を持つ世界最高峰の“刀職人”だ

(BikeJINvol.246 2023年6月号より抜粋)

前回のコラムで話題にしたように、スズキが19年に新型KATANAを市販したことで、“カタナ”という名前やデザインモチーフは次世代につながりました。ユニコーンジャパンではこれまで、イナズマ1200をベース車両として使用しながら設計したGSX1200S や、GSX1400 を土台としたGSX1400Sをオリジナルモデルとして製作し、シリーズ累計では約500台を販売。我々の会社規模で考えたらこれはトンデモない数だと自負していますが、それでも日本のメーカーが手がけるのとは一桁も二桁も数が違います。もちろん販売価格も、コストがまるで異なるので大きな差が生まれます。だからこそ私は、“カタナ”というブランドを残すためには「メーカーが新しいカタナを手がけてこそ意味がある」と常々訴えてきましたし、前回書いたようにスズキの鈴木俊宏社長にも何度か直訴したことがあります。

現在のユニコーンジャパンも、サービス棟に併設して広いショールームが設けられていて、横内悦夫さんの愛車だったGSX1100Sカタナなど、カタナファン垂涎の貴重な品々が飾られている

また、イタリアのモトチクリスモ誌がGSX-S1000Fをベースとした「KATANA3.0」をコンセプトモデルとして発表して以降、デザイナーのロドルフォ・フラスコ―リさんや誌面の企画を担当したスタッフ、あるいは新型KATANAのライディングポジションを決定したドイツ人のテストライダーとも、いろいろ話をする機会がありました。それ以外にも、新型KATANAの誕生に関して、ここには書けないさまざまな深い関係性を持っていたので、自分が生んだ気になっているほど……。ですから、このバイクがさらに進化して、今後も長い間、カタナの歴史が続いてくれることを願っています。

そしてユニコーンジャパンとしても、カタナの歴史をつないでいくために構想していることがあります。それが、カタナに関するミュージアムの設立。初代のGSX1100Sカタナをデザインしたハンス・ムートさんや開発責任者だった横内悦夫さんに「これからも末永く、カタナのことを頼むよ」と託された身として、未来に何ができるかと考えたとき、これに行きつきました。

現在、弊社を頼ってくださるカタナユーザーの方々は増え続けていますが、整備に使用できる部品が減少してきていることも考えれば、今後どこまでの方々に新規で対応できるかは不透明。さらに、従業員も私も加齢により体力がなくなってくれば、生産性は落ちてきます。つまり、メンテナンスやカスタムなどの実務によりカタナ文化を支えていくのは、頑張ってもどこかで限界に達するわけです。

では、そのとき自分に何ができるのか……。これは、「伝える」ということだと思っています。

ミュージアムに歴代の珍しいカタナや部品、関連するグッズなどを展示して、来場者がカタナについて知識を得られる場を提供。あるいはそこまで堅苦しく考えてもらわなくても、昔を懐かしんでもらい、お食事やティータイムを楽しんでいただけるような空間になればいいと思っています。そしてミュージアムには、サービス部門やパーツ部門を併設。最終的に、高齢化により自分たちで多くの整備を受け入れることが難しくなったとしても、自分が生きているうちはなるべく部品の配給ができるように……というのが理想です。もちろんここにも限界はあると思うのですが、部品と知識の提供さえできれば、どこか他のショップが実作業を請け負ってくれる可能性はあるわけです。

現在のショールームにはラウンジスペースが併設され、スパイスと鶏肉にこだわって調理された特製ユニコーン・カリーが秘かな大人気メニューに!
「カタナの歴史や文化、整備に関することなどを、次世代に伝えていくことも自分の使命」と池田さん。若いユーザーたちにも心から慕われている

じつはカタナのミュージアム構想は、横内さんとも話したことがあるのですが、21年10月に横内さんがお亡くなりになったことで、設立を強く決意することになったのです。

ユニコーンジャパン代表
池田隆さん

85年にスズキ専売店「神戸ユニコーン」を創業し、徐々にカタナシリーズのパーツを開発。94年に神戸から横浜に移転し、自社生産カタナの販売などで注目を集めてきた

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