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【カタナ専門ショップ・ユニコーン⑫】現行KATANAに対する評価は如何に

専門的二輪車の世界には道を突き詰める楽しさあり!
スズキ・カタナシリーズのスペシャリストとして活動する横浜市のユニコーンジャパン
その代表を務める池田隆さんは極めて豊富な経験と知識を持つ世界最高峰の“刀職人”だ

(BikeJINvol.244 2023年4月号より抜粋)

前回予告したとおり、今回は現行KATANAの話題を……。

GSX1100S カタナに深く携わってきた私が現行モデルをどう思っているか気になる人は多いようですが、その前にまず、スズキのエンジニアとして初代カタナの開発責任者を務めた故・横内悦夫さんが、新型KATANAをどのように評価していたのかお伝えしましょう。

以前にこのコラムで紹介しましたが、私は横内さんの晩年にはマネージャーのような役割も担うなど、横内さんにとても親しくさせていただきました。そして横内さんは、新型KATANAが登場したことで「ようやく肩の荷が下りた」というようなことをおっしゃっていたことがあります。自分が生んだカタナというバイクが次の世代に引き継がれたことをとても喜んでいて、わざわざ取り寄せた写真データを印刷して、自宅に飾っていたほど。「新型KATANAの誕生を歓迎する」とコメントされていたことがあります。

一方で私は以前から、新しいカタナをスズキがメーカーとして開発してくれるよう働きかけていました。鈴木俊宏社長にも何回か直訴したこともあります。どういうカタチであれ、“カタナ”という名前やデザインモチーフを残せないものかと考えてきました。当然ながら、GSX1100Sというバイクは減っていくばかり。00年にファイナルエディションが発売されたのを最後に、歴史は止まったままでした。だから、「とにかくカタナという名前を冠したバイクを発売してほしい」というのが私の願い。というわけで、たしかに初代GSX1100Sカタナとは大きく異なるバイクですが、現行KATANAに対して歓迎はすれど否定する気持ちはまるでありません。

一部では「こんなのカタナじゃない」なんて意見もあるようですが、それを言ったら初代GSX1100Sがデビューした当時も、「こんなのバイクじゃない」なんて酷評も多くあったわけです。丸型ヘッドライトに丸みを帯びた燃料タンク、コッペパンみたいなシートのバイクばかりの時代に、初代カタナのようなデザインが登場したわけですから、多くのライダーが驚くのは当然のこと。横内さんいわく、好き嫌いが「どちらでもない」という意見の人はほとんどおらず、「好き」と「嫌い」がほぼ半分に分かれたそうです。

現行KATANAに対する評価も、たぶんあのときと同じ状況。結局のところ、ユーザー個々に守りたいアイデンティティや想いがあり、初代ならバイクとして在るべき姿、現行ならカタナとしての形が、自分の中にあるわけです。初代こそがカタナだと思っている人たちにしてみれば、同じ名前で違うバイクが登場したことで否定されたような感覚もあるのでしょう。

その気持ちは理解できるのですが、次世代のカタナというのが誕生しないと、後世のライダーたちはカタナというバイクを楽しめなくなってしまいます。そして、新型が登場することで現代のライダーたちが初代のレジェンドカタナについて興味を持ち、歴史などを調べたり想いを馳せたりしてくれることで、初代カタナは伝説として語り継がれていくわけです。

ただし個人的には、もう少しレジェンドカタナの姿に寄せてほしかったという想いも……。そこでユニコーンジャパンでは、「KATANA 3.27」というコンプリートモデルも製作しました。そこには、いつの日か我々のようなレジェンドカタナファンの意見をより多く取り入れた、さらに新しいKATANAの誕生につながってほしいという願いも込めてあるのです。

クレイモデルからデザインされ、コンプリートモデルとして披露されたKATANA 3.27。初代レジェンドカタナに最大限の敬意を払った、日本人の感性が詰まったデザインだ
燃料タンクサイドは、日本刀をモチーフとしたレジェンドカタナから継承したソードエッジラインを表現。全体的にシンプルな曲面の表現を活かしてある
市販ブラックチタンスクリーン(3万3000円)を、純正メーターバイザーを外して試作品メーターカバーとともに装着。より初代に寄せたルックスだ
ユニコーンジャパン代表:池田隆さん
85年にスズキ専売店「神戸ユニコーン」を創業し、徐々にカタナシリーズのパーツを開発。94年に神戸から横浜に移転し、自社生産カタナの販売などで注目を集めてきた

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