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【Thinking Time㊼】街なかにバイクの姿が戻る? 二輪車枠が当たり前の駐車場へ

国交省が3年にわたり「まちづくりにおける
駐車場政策のあり方検討会」を開催した
個別のワーキンググループには自工会二輪車委員会も参加
今年3月に第2回検討会を終えての自動二輪車の駐車改善方針とは?

いま、国土交通省が歩行者中心の街づくりを目指すうえで駐車場政策はどうあるべきかということを数年間にわたり検討している。有識者や関連団体、自治体関係者を招き、「まちづくりにおける駐車場政策のあり方検討会」を開催し、その検討会の下にワーキンググループ(WG)を設置して個別の検討事項についても情報や課題の共有、議論を進めてきた。今回はこうした動きの中から主に自動二輪車(50㏄超)の駐車に関わる検討事項について紹介する。

国交省検討会での今後の方針は? 四輪駐車場に自動二輪駐車機能
第2回「まちづくりにおける駐車場政策のあり方検討会」では、標準駐車場条例の改正の方向性に関して四輪用附置義務駐車場の余剰分を自動二輪に転用することが“機能”として示された。また自治体へのガイドライン見直しの方向性については共同住宅への自動二輪・原付の附置義務などが案として盛り込まれた。

四輪用からの転用が進む? 二輪枠は駐車場の“機能”

WGには「需給マネジメントWG」と「施設デザインWG」があり、需給マネジメントWGには自工会でバイクを担当している二輪車企画部会 二輪車利用環境分科会も参加して調査結果(図2)の共有や課題の提起などを行っている。

出典:「自治体の二輪車駐車場政策に関する調査 報告書(2023(令和5)年1月)」調べ(自治体の二輪車駐車場政策に関する調査/JAMA 2023(令和5)年 内25ページ)
自工会から自治体への調査で判明 事業者の採算性と具体的な場所
2022年7〜9月に自工会が都内23区、都下7市、政令指定都市20市の合計50団体に駐車場政策と現況、取り組みや課題について調査を行った。自動二輪車の駐車場整備を進めるための要件について聞くと、「民間事業者の採算性」「具体的にどこに駐車場が必要なのか」の2つが突出していた。「その他」では駐車場用地確保の必要性を挙げる自治体が多かった。こうした自治体の声を反映させた施策を推進することが求められている

なお、近々運用が見込まれている新基準原付の駐車場所はどこになるのかといったことも提言されている。100〜125㏄クラスでも原付一種と同じ駐輪場に置くのか、それとも自動二輪車駐車場に置くのか、こうした細かな、しかしライダーやバイク利用者にとってはとても大きな問題についてもしっかり検討されている。

今回掲載している内容は、過去2回開催されている検討会での事務局提出資料と各WGでの事務局資料のほか、国交省が定期的に公表している「駐車場政策の最近の動向(最新版は23年12月)」から抽出している。資料〝最近の動向〞は、ウォーカブルな人中心の街づくりを目指す「まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編は18年7月策定)」の発出以降、内容が充実し、掲載情報も増やしてきた。そして検討会(22年10月〜)が置かれて以降、各WGでの深掘りされた議論も加えられ、これからの街づくりの中で、住む人、訪れる人、関連企業、駐車場事業者、自治体など様々な視点・立場から駐車場という施設をどう捉えて、今後どう変えていくべきかが示されている。

自動二輪車に関する議論の中では、駐車場法のもと都市部で設置が進められてきた附ふ置ち義務駐車場(主に四輪用)に余剰分(供給過多)が出てきていること(図1)を踏まえ、今後は自動二輪車用等に転用していくことが考えられており、今後の方針としても示されている。

(図1)附置義務駐車場の需給バランス
「不明・その他」を除けば、④の供給過多の状態が目立つ附置義務駐車場(ほぼ四輪用)。3割強はこのような状態のため、自動二輪車や電動キックボードなど多様なモビリティに対応するよう整備が検討されている

自動二輪車の現状(表1)については引き続き都市部で駐車場所が不足しており、駐車場の新設が難しいことを考えれば、四輪用駐車場の余剰分や自転車駐輪場の一部を転用していくことが現実的だ。日本二輪車普及安全協会が継続的に調査している、駐車場設置に関する二輪ユーザーからのリクエストデータを見れば、東京都が依然突出していることが分かり、やはり都心部からこうした整備・改修を進めることが効率的だろう。

(表1)自動二輪車における需要と供給の課題
自動二輪車(50㏄超)の駐車場については都市部で引き続き不足しているという認識だ。駐車場法による附置義務条例を制定した自治体の数は横ばいだが、自転車等駐車場への125㏄以下受け入れは増加中。今後は需要のある場所の既存駐車施設を改修して自動二輪車を受け入れるなどの取り組み推進が求められる

ただし駐車場法による附置義務駐車場をはじめ、街中で目にする駐輪・駐車場には国が定めた法律や省令、そこに示された規定や基準、ガイドラインのほか、各自治体による各種の条例や要綱(放置自転車対策や建築整備基準など自治体によりさまざま)が関わっており、自治体や駐車場事業者も施設内の構造を自由に変えることはできないのが現状だ。

よって、国交省は今回の第2回検討結果報告において、自治体や企業・事業者が動きやすいように標準駐車場条例の改正やガイドラインの見直しの方向性についてきめ細かに示している。四輪用の余剰スペースを二輪車や電動キックボードなど多様なモビリティに転用する取り組みを附置義務駐車場の〝機能〞として記したことは今後の二輪車駐車環境にとって歓迎すべきことであり、自治体から事業者への助成拡大など整備・改修の推進に期待したい。

望むのは既存駐車場への柔軟な受け入れ
東京都渋谷区の代々木上原駅自転車等駐車場。小田急線高架下の自転車置き場に自動二輪も受け入れている。通路が狭く感じる部分もあるが、自動二輪車ユーザーにはありがたい

日本二普協による自動二輪車駐車場のリクエストデータから見るニーズ

日本二輪車普及安全協会のサイトで募集されている「バイク駐車場、ここにつくって!要望フォーム」でのリクエストデータによると要望の多い都道府県では、東京、神奈川、大阪と続くが、東京都が2位神奈川の約2倍を占めておりダントツ。北海道が10位に入っているのは意外だが、四輪との共用(四輪が駐めてあると利用できない)が多く全体的な収容台数の少ない札幌市中心部の特殊性によるものと思われる。駐車場が必要な場所についてはコロナ禍のテレワーク等を反映したのか「駅」が減り「施設」が増えた。

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