[キャンプで”火”を使いこなせ!]LIGHT MY FIRE「火の灯り」
キャンプに行って感じるのは
炊事棟などに付けられた蛍光灯の灯りが
明るすぎるくらいに明るくて、
しかも青白い冷たい光だということ。
キャンドルの灯りの暖かさを見ると
じっくり、ほのぼのしてしまうのだ。
BikeJIN2024年7月号 Vol.257掲載
クルマでキャンプに行くときはお気に入りのコールマン200A赤ランタンを持って行ったりするけれど、キャンプツーリングの時には灯りはできるだけミニマムなものにしている。こぢんまりとしたキャンプサイトには最低限のほのかな灯りの方が似合っているような気がするし、テントサイト全体を照らす昼間のように明るいランタンは、なんだか無粋に思えてしまうのだ。
黒澤明監督の映画「夢」の中で、主人公が電気を使わない自給自足の村へ行った際に、笠智衆扮する村の老人がこう言う。「夜は暗いからいい。明るすぎる夜なんかいらない」と。都会のふだんの生活では24時間営業のコンビニはじめ、明るすぎるくらいの明るさが当たり前になってしまっている。キャンプに行くと、ふだんどれだけ明るい中で生活しているかが分かるハズだ。トイレに行くときにもヘッドランプの灯りが当たっているところしか明るくなく、他は闇。最初はとても心細いが、慣れてくるとその心細さや怖さが嬉しくなってきて「これがホントなんだよな」と思うようになってくる。たまにはそういう気持ちを思い出すのも悪くないだろう。
光量の点ではマントルを使用するランタンの方が圧倒的なパワーを誇るのだが、一度空焼きしてから使うマントルは、衝撃や振動などに弱く、バイクの走行中に壊れてしまいその都度交換しなくてはならないという欠点があり、大光量のランタンから離れ気味の僕のキャンプでは出番が少なくなってきてしまった。
僕が気に入っているランタンはキャンドルやオイルを使用するものだが、最近はガスランタンの中にもマントルと呼ばれる発光体を使用せず、キャンドルランタンのような揺らぐ炎のランタンもあって、調理のために使用したガスカートリッジを使い切りたい時などに重宝している。
話は変わるが、僕は部屋に油の匂いがついてしまうから、家では揚げ物をあまり作らない。だからその反動のようにしてキャンプで好きなだけ揚げ物を作る。皮付きジャガイモのフレンチフライなどは最高である。気になる廃油の処理は「固めるテンプル」などの凝固剤を使ってオイルキャンドルを作る。空き缶にタコ糸などの芯を入れておき、そこに凝固剤入りの廃油を流し込むだけだ。翌日からの灯りはこれで賄う。多少ススは出るけれど屋外ならほとんど気にならないし、完璧なリサイクルだ。
最後に、キャンプの灯りの安全面の話をしよう。寒い時期のキャンプではテントの中にキャンドルランタンやガスランタンが1個あるだけでとても暖かいのだが、これは非常に危険な行為なので厳に謹んでいただきたい。ガスランタンやガソリンランタンは燃焼時に大量の一酸化炭素を発生させ、実際にキャンプ場でカップルの死亡事故も起きている。キャンドルランタンも生の火を使うので火災の危険性がある。テント内で使用する灯りはLEDランタンなどの電気式の灯りを使っていただきたい。