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ハーレー和尚のバイク説法「冥加(みょうが)」

(※2024年vol.257 7月号参照)

本瀧寺のシュウケンです。今年のGWは天候に恵まれていたせいもあってか、たくさんのライダーが当寺に来られました。多くの人に来ていただくのは大変有り難いことです。しかし、一方で心配になるのが、やはり行き帰りでの事故。幸い事故があったと言う話もなく、無事GWを終えたことに感謝します。先日、豊能警察署の方が当寺にお見えになられ、今年の秋の交通安全イベントについて色々とお話ししました。その時、豊能警察署の方がおっしゃるには、この豊能町界隈ではバイク事故はあっても、ここ何年も死亡事故がないそうです。この話を聞いて、私は妙見山の加護を感じました。じつは妙見山と言う山は西日本を中心に全国にあり、その多くが信仰の対象とされています。当寺のある妙見山も同様で、古くから霊山として、この地域の人たちに親しまれてきました。

昨年の9月24日に本瀧寺で行われた豊能警察署による秋の交通安全イベント。今年も秋の全国交通安全運動期間中に本瀧寺で行われる予定だ。詳細など分かり次第、本誌でもお伝えしたい

仏教に『冥加(みょうが)』と言う言葉があります。冥加とは、私たちが知らず知らずのうちに受ける神仏の恵みのことで、加護と同じような意味です。今でも使われる言葉に冥加料や冥加金がありますが、これは神仏の加護や恵みに感謝して寄進する金銭のことを指します。信者や檀家などが仏様にお供えするお布施とは、少し意味合いが違います。

交通事故を防ぐ一番の方法は安全運転です。そのため私たちライダーは安全運転を心がけます。しかし、道路は自分以外にも多くの人が使っています。いくら安全運転をしていても、他者の不注意や無謀な運転などで事故に巻き込まれることがあります。バイクに限らず道路は常に危険と隣り合わせの場所なのです。そんな自分の努力だけではどうしようもない危険や災いから守ってくださるのが、冥加なのです。バイクだけではありません。私たちが平穏に過ごせているのは、神仏から加護を受けているからだと意識してください。そして、その加護に対して感謝と行動を示す必要があります。と言っても、お寺や神社などに金銭などを寄進する必要はありません。神仏への感謝の行動は、決して金銭や物だけではありません。では、どうしたら良いのでしょうか。それは他者への気遣いや思いやり、そして優しさを持つことではないでしょうか。時や場所を考えずに行う空ぶかしや、通行を妨げる迷惑駐車。その行為自体が直接交通事故に繋がるようなことはない迷惑行為はまだまだあります。恐らくそのような行為をしている人の多くは、それが迷惑な行為だと意識すらしていないと思います。思いやりや気遣いなどを持てば、そのような行為は決してできないはずです。

身につけて神仏の加護を授かれるものの一つがお守り。その対価として納めるのが初穂料。写真は本瀧寺で授与される守護鈴

仏様には物質的な望みはありません。すべての衆生を救い、平和な世界こそが唯一の願いです。他者への気遣いや思いやり、そして優しさ。それが私たちライダーの納めることができる、一番の冥加料ではないでしょうか。

合掌

バイク寺として親しまれる大阪府能勢町にある「妙見宗総本山 本瀧寺」の執事長。40歳の時に大型二輪免許を取得。ショベルに乗るハーレー和尚として、バイク講話など交通安全普及に努める

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