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【ThinkingTime 】㊺20代と60代でバイク死亡事故が急増! 多くの課題に業界と関係各所が取り組む

*BikeJIN vol.256(2024年6月号)より抜粋

第9回自工会二輪車委員会メディアミーティングでは
昨年急増した若年層と高齢層のバイク死亡事故の状況と関係各所による
安全運転活動についての振り返り、今後の取り組みが題材となった。
そこにある課題とは?

3月28日、第9回自工会二輪車委員会メディアミーティングが開催された。「二輪車の安全運転活動 2023年度の振り返りと2024年度の取り組み」というテーマで昨年度の交通事故状況を踏まえ、技術観点から見る事故死者ゼロへの取り組みと各団体の交通安全活動が説明された。

2050年事故死者数ゼロに向けて各所で取り組みが進められている
二輪業界は二輪車産業政策ロードマップ2030の目標において技術・仕組みの両面から「2050年事故死者数ゼロ」を目指すとしている。また、中間目標として2030年に二輪事故死者数半減とヘルメット脱落による死亡事故半減(共に2020年比 警察庁データ)を設定したが警察ほか関係各所との協力が必須となる。

昨年はバイク事故が増加!関係各所が事故防止へ

コロナ禍では2021年をピークに免許取得者数や販売台数が増えたが、昨年5月に新型コロナウィルス感染症が2類から5類となり社会全体が平常運転に戻った途端、やはりというか交通事故が増えてしまった。

死亡事故に関して言えば自動車乗車中の事故は減少したのに、バイクについては自動二輪・原付ともに死者数が増えている(表1参照)。自動二輪ではツーリング・観光・レジャー・飲食目的での利用で増加し、原付では通勤・ツーリングで倍増し、業務利用でも事故が増えている。

(表1)2023年 事故状況と状態別死者数
「二輪車乗車中」という行は「自動二輪(50cc超)」と「原付(50cc以下の原付一種のみ)」の数を合計したものとなる。また「その他」には、リヤカーなどの軽車両、歩行者以外の道路上の人(木や電柱の上など)、屋内や田畑など道路外の人身事故が含まれている。
自動車は減少したが二輪車は増加原付は通勤や業務で急増してしまった
表1にあるように、2023年は自動車以外の全カテゴリーで交通事故死者数が増加した。コロナ禍以降、2021年、2022年と二輪事故死者数は減少が続いていたが、全体で16.8%増となり、自動二輪(50cc超)では14%増、原付一種では27.2%も急増した。自動二輪車ではツーリングなどレジャーや通勤で増え、原付では通勤中の事故が倍増(18→39件)するなどしたのが要因だ

死亡事故を年齢層別に見ると、まとまった数の中では20〜24歳と60 〜64歳で約70%も増加した。数は少ないものの75〜79歳に至っては266%もの増加率となった(表2)。思い当たるふしはある。20 代で言えば第12世代バイクブームによる新規参入の増加、60代以上は定年以降の趣味としての長期ブランク組を交えたリターンライダーブーム。

出展:警察庁交通事故統計
(表2)2023年自動二輪車乗車中の年齢層別死者数の推移
20〜24歳は70.3%と大幅に増えた。大学生や新社会人などの年齢層で第12世代バイクブームを構成する層だ。60〜64歳でも急増しており定年後の趣味としてのバイク、長いブランクを持ったリターンライダーも含まれるだろう。

自工会を始めとした二輪業界および警察など関係各所も事故の減少に向けて対策に乗り出しており、今回のミーティングでは各団体による現状分析と取り組みについて発表があった。

自工会は主に安全装備について。事故を想定してのパッシブセーフティ対策に関して、胸部プロテクターの衝撃試験の様子と結果などを説明。試験結果を基に用品メーカーがプロテクターの保護性能を向上・改善させたという。ただし先進安全装備や車両相互通信(C‐ITS)による衝突回避などアクティブセーフティについては実現への困難も多いようだ。

警視庁は都内交通事故状況のほか、様々な安全運転普及活動について説明した。全国に比べて都内の二輪車死亡事故は割合が高く、特に通勤時間帯の事故が多い。昨年度はツーリング・観光・娯楽といった目的でも増加した。年齢層だと40〜60代で約6割を占めているのも特徴だ。ヘルメットのあごひも締結や胸部プロテクターなど安全装備の着用促進、二輪車ストップ作戦による街頭啓発、運転実技教室などに取り組んでいる。

警視庁による二輪車ストップ作戦の様子。通勤・通学、業務利用コミューターの事故を効果的に減らす手法を確立すべき

日本二輪車普及安全協会は安全領域活動について広く説明した。有識者等によるシンポジウムについては今年からメディアの取材がOKとのことで期待。また、32年間継続実施されてきた二輪車安全運転講習会「グッドライダーミーティング」が今年から「ベーシックライディングレッスン」となり、初心者・若年層・リターンライダーを対象とする。既存のスクールと重複するようにも感じるが、実際にレッスンを取材したところ一時停止や左右確認など法規走行に重点が置かれており、公道走行に慣れたい、不安を解消したいライダーには最適だと感じた。

日本二輪車普及安全協会は安全運転講習会「グッドライダーミーティング」の参加資格・内容をより初心者向けとし、名称も「ベーシックライディングレッスン」と変更

せっかくのバイク免許、楽しいバイクライフを守るため関係各所が充実の動きを見せている。

自工会は技術的な観点から事故防止の研究成果等を発表

自工会二輪車委員会は二輪車法規戦略部会長の三留崇史氏が技術的な観点から事故死者ゼロへの取り組みについて説明した。特にパッシブセーフティ(事故が起きた際の安全装備)のヘルメット着用率、胸部プロテクターの安全性について分析報告

胸部プロテクターを装着したダミー人形を用いた実車との衝突試験の様子。動画「梅本まどかと宮城光のセーフティライディング!」内で視聴可能だ
胸部プロテクター装着ダミーに打撃を与える衝撃試験。先端が平面のものと鋭利なもので衝撃値を比較。重傷以上の傷害発生率が半分以下となる効果を確認

警視庁は都内の事故状況と安全運転普及活動を発表

警視庁は交通部監理官の川嶋泰雄氏が二輪車死亡事故の発生状況等について説明。死亡事故のうち二輪車の割合は全国(19%)に比べて都内(32.4%)が高く、ここ数年で増加傾向にあり50代の割合が多い。安全運転活動や講習会についても報告した

日本二輪車普及安全協会は様々な安全運転普及事業を発表

日本二輪車普及安全協会は安全本部長の荒井龍介氏が安全運転推進運動、シンポジウム開催、安全運転講習会、全国各地の高校生への二輪車安全教育事業(2023年は189校で3068人に実技、6457人に座学を実施)等について説明した

今年からグッドライダーミーティングはベーシックライディングレッスンとなった。写真は4月14日に開催された東京会場の様子

国内4メーカーの安全運転普及活動

  • カワサキ:カワサキプラザ主催「Safety Riding School」/カワサキプラザスタッフの育成(安全運転教育プログラムの実施)
  • スズキ:U30セイフティスクール(若年層対象)/スズキ北川ライディングスクール(実践的)
  • ホンダ:Honda ライディングアドバイザー(認定資格)/Honda セーフティアドバイザー(認定資格)/Honda Motorcyclist school(HMS)/Honda GO Bike Lesson(超初心者向け)/教材やプログラムの開発と普及
  • ヤマハ:Yamaha Riding Academy(YRA)/YRAインストラクター/YSPライディングサポート/「乗らずに学べるバイクレッスン」などデジタル領域/事業者向け安全運転講習など職域活動
田中淳磨(輪)さん
二輪専門誌編集長を務めた後、二輪大手販売店、官庁系コンサル事務所への勤務を経て独立。三ない運動、駐車問題など二輪車利用環境問題のほか若年層施策、EV利活用、地域活性化にも取り組む

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