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【カタナ専門ショップ・ユニコーン⑪】もっともコスパがいいバイクの楽しみ方とは?

専門的二輪車の世界には道を突き詰める楽しさあり!
スズキ・カタナシリーズのスペシャリストとして活動する横浜市のユニコーンジャパン
その代表を務める池田隆さんは極めて豊富な経験と知識を持つ世界最高峰の“刀職人”だ

(BikeJINvol.242 2023年2月号より抜粋)

前回は、触れたように、ユニコーンジャパンではカタナ(基本的にはGSX1100S カタナ)に関する「無料問診サービス(初診)」を実施しています。これは、カタナオーナーに愛車の状態をお伝えして、今すぐ必要な整備や修理、近い将来に予定しておいたほうがいい整備項目などを、無料レクチャーするというものです。 GSX1100Sカタナというのは、初期型であれば発売から40年以上、最終型でも20年以上が経過したバイク。とはいえ、価値のあるレジェンドバイクなので、外観が美しく保たれているカタナはかなり多いのですが……。

この無料問診サービスでは、持ち込まれたカタナになんらかの不具合を発見する確率がほぼ100%。しかも、外装はピカピカだけどタイヤは劣化でヒビ割れているとか、ドライブチェーンが劣化して恐ろしいほどのフリクションを発生しているなどのカタナが散見されます。まあ、1100カタナのチェーンはノーマルだと630サイズなので、アレが切れるなんてよほどのことがないとあり得ないとは思いますが、とはいえチェーンがそんな状態では本来のパフォーマンスを発揮できないですし、タイヤの劣化は危険に直結。リヤホイールのハブダンパーゴムが劣化しているとか、スイングアームピボットのベアリングが錆びて機能を失っているなんて車両もよくあります。

バイクのタイヤは、不具合が危険に直結する。ユニコーンジャパンで販売される中古車は、もちろんタイヤのコンディションもすべてチェック済みだ

個人が長く所有しているカタナだけでなく、どこかのショップで購入して間もないカタナでも、そういう状態であることは多々。中古車価格を抑えるためにそのような状態で販売してしまうんだと思いますが、これは同業者としてとても信じられません。タイヤの劣化なんて、命を失うことにもつながるわけですから……。そんな状態で販売してしまうショップにも問題ありますが、旧車オーナー自身も外観の美しさばかりでなくメンテナンスにもっと目を向けてほしいと願っています。

かつて、ユニコーンジャパンが中古車として販売したGSX1100S。新車以上のコンディションと美しさを狙う入念な整備が施されている。もちろん、すぐに必要な整備はない

もちろん、メンテナンスにはコストがかかります。だからこそ、壊れて不具合が生じるまでショップに持ち込まない人が多いわけですし、お金の問題以前に不具合を認識していないオーナーも多くいらっしゃいます。カタナの専門店として、1台でも多くのカタナに長く残ってもらい、1人でも多くのオーナーが安全にカタナの世界を楽しんでもらいたいという想いで、無料問診サービスを続けています。ダメな部分を探して人に伝えるというのは、少なくとも相手をいい気分にさせることはないので、損な役回りだなあ……とも思うのですが。

新車販売から年数が経ったバイクは、どこかしらに不具合がある可能性が本当に高く、それらにしっかり対応しようとすれば、それなりのメンテナンス費用を常に投入していく必要があります。だからもしかすると、もっともコスパがいいバイクの楽しみ方は、新車を購入して、エンジンオイル交換程度の軽い整備だけやりつつ最初の車検が切れる3年間乗ったら、それを下取りにして次のバイクに乗り替えるというプランかもしれません。コロナ禍になって以降、中古車価格は全体的に高めですから、下取りや買い取りの価格も期待できますしね。

カタナということでは、19年からスズキがKATANAを販売してくれています。以前と完全に同じスタイルというわけではありませんが、カタナの世界観を継ぐモデルです。

19年5月に発売が開始されたKATANA は、GSX-S1000をベースに初代カタナを思わせるデザインを与えてある。22年型でマイナーチェンジ

では、私がこのKATANAをどう思っているのか? あるいは初代カタナを開発した横内悦夫さんはどう思っていたのか? 次回は、そのあたりのことをお話ししましょう!

ユニコーンジャパン代表:池田隆さん
85年にスズキ専売店「神戸ユニコーン」を創業し、徐々にカタナシリーズのパーツを開発。94年に神戸から横浜に移転し、自社生産カタナの販売などで注目を集めてきた

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