【カタナ専門ショップ・ユニコーン⑦】名車カタナを維持するために大切なこと
専門的二輪車の世界には道を突き詰める楽しさあり!
スズキ・カタナシリーズのスペシャリストとして活動する横浜市のユニコーンジャパン
その代表を務める池田隆さんは極めて豊富な経験と知識を持つ世界最高峰の“刀職人”だ
(BikeJINvol.238 2022年10月号より抜粋)
今回からは、カタナを中心としたいわゆる旧車に関するパーツ事情と、それに対して私が思っていることを、もう少し詳しくお話ししていきたいと思います。
前回、「どんなにスゴ腕のメカニックでも、部品がなければただの人」なんて表現しましたが、これは本当にその通りで、だから部品の調達をどうするかは、カタナのようなレジェンドバイクを維持するためにとても大事。とくに、メーカーがすでに廃番してしまった部品、今後廃番となりそうな部品をどうするのかという判断には、知識と行動力、それから“先読み”して備えておくことが求められます。
例えば、ユニコーンジャパンでは現在、市販二輪車初のリトラクタブルヘッドライトを採用したナナハンカタナ(S3とも呼ばれる83年10月発表の3型GSX750S)を、販売用中古車として展示していますが、このS3からリヤサスではリンク式モノショックのフルフローターサスというちょっと特殊な仕様となっていて、これはもうどのメーカーもリプレイスパーツの製作や販売をしていません。かといって、当時のノーマルサスではとっくにオイルが抜けてスカスカ。後ろがふわんふわんで、まともに走れるような状態ではないでしょう。
つまり本当ならリヤサスに関しては“お手上げ”なわけですが、S3もだんだん年数が経ち、そうなることは予想できたので、うちではある時期から販売した車両はすべて、先読みしてオーリンズ製に換装しておいたんです。これならそう簡単に性能が劣化しないですし、オーバーホールも可能ですから。
うちで現在扱っているS3は、かつてのお客様が手放した車両など、1番のネックであるリヤサスの問題がクリアできていることが大前提。この年式以降の国産バイクは、エンジンオイルが漏れたなど、「まあしょうがないよね……」というトラブルはもちろんありますが、消耗品の交換だけマメに実施して普通に乗っているぶんには、“そんなに”壊れません。どうにもならないところだけ押さえておけば、意外と長く乗れるものなのです。
ちなみにS3の場合、リトラクタブルヘッドライトをオンにするとパカパカと開閉を続けて止まらないなんてトラブルもあるのですが、私は当時ちょっと研究して、ヘッドライトユニットの回路を自作。かつて製作した最終形のキットがまだ残っていたので、今回の中古車には念のためこれを装着してあります。
ナナハンカタナはまだそれほどでもないのですが、初代1100カタナなんかはすべてにおいてこのような感じで、部品に関してなるべく困ることがないよう準備を続けてきました。
最近は旧車ブームで新たに乗る人も多く、それは別にいいのですが、「乗るなら準備が必要ですよ!」ということは、私たちもこれまで以上に説明していかなければと感じています。
基本となるのは、「部品はあるうちに買え!」ということ。そして、なにがレアで今後どれが廃番になりそうで……なんて判断するためにも、ある程度の知識を得るべきです。同じバイクに乗る仲間を見つけるとか、専門ショップに通うなど、さまざまな方法で知識を増やしてください。もちろんカタナに関してはうちも、質問いただければ力になれると思います。
中古で巡り合うようなレアアイテムだけでなく、まだ新品購入できる純正部品もストックの重要性は同様。そしてこちらは、ストックしておいてもまるで“損”がありません。その理由は、また次回お話ししましょう。
85年にスズキ専売店「神戸ユニコーン」を創業し、徐々にカタナシリーズのパーツを開発。94年に神戸から横浜に移転し、自社生産カタナの販売などで注目を集めてきた