【バイク日和】カレシでダンナでムスコ 愛するニンジャとどこまでも
バイクの楽しさを知らない人にバイクの魅力を理解してもらうのは難しい
それが家族であれば尚更だ
絶対に安全だとはいえない乗り物だから愛車のニンジャを溺愛する坂田理紗さんも紆余曲折あってバイクライフを手にした一人
真摯に家族とバイクに向き合う姿勢は全てのバイク乗りへの示唆に富んでいる
今時のフツーの女子がなぜ鉄人系ツアラーに?
愛車を手に入れ2年に満たないが、すでに3万㎞以上を走破。日帰りの走行距離800㎞! 午前2時スタートで23時帰着! そうしたハードなツーリングを日常的にこなしているという坂田理紗さん。かなりのハマりっぷりだが、身の回りに影響を受けたバイク乗りが居たわけでもなく、バイクとの運命的出会いも覚えがないという。坂田さんは、なぜライダーの道へと足を踏み出したのか?
「小さい頃の日曜朝、テレビで仮面ライダーを観ていたんです。私はプリキュア(女児向けアニメ)が観たかったんですけど、兄にチャンネル争いに負けちゃって……。でも、そこでバイクに興味を持ったというわけでもないんですよ。煩くてイヤな乗り物だなって感じていたくらいですし。母は〝あなた、仮面ライダーを観て、バイク!バイク! って騒いでいたわよ〞と、言うんですけど(笑)」
本人は意識していないようだが、どうやら幼少期にバイクへの想いが刷り込まれていたようだ。ちなみに仮面ライダー激推しだったお兄さんは、現在まったくバイクに興味がないというから面白い。
普通二輪免許を取得したのは、大学二年生の時。だが、親御さんはバイクに良い印象がなく、免許の取得こそ認めてはくれたが、バイクの購入は〝社会人になってから、自分の責任で〞と言って、首を縦に振ってはくれなかった。「ですから、レンタルバイクを利用していました。でも、走ることが楽し過ぎて……。多い時には、週に二回借りたりもしましたね」
便利なレンタルバイクだが、学生の身分では費用がバカにはならない。そしてとうとう家族に内緒で、愛車の購入を企てる。「社会人になったら好きにしていいという親の考えは、金銭面を誰にも頼らず責任は自分でとることだと解釈しました。ならば、その通りにすれば、文句はないだろうと思ったんです」
一目惚れしたニンジャZX‐25R SEを契約。駐輪スペースも自力で確保しなければと、賃貸ガレージの手当もつけた。全て、自分一人で行った。そして、納車を待ち侘びウキウキしながら過ごしていた時、事件は起きた。
「ひょんなことから、バイクを買ったことが親に知れてしまったんです。怒られるというより諭される感じで〝社会人になったらという約束だったよね?〞と言われ、私はやってはいけないことをしてしまったんだ、と……」
親子間で内戦が勃発しそうな場面だが、坂田さんは自らの非を認め、すべてを白紙に戻すと決めた。親御さんの意見が正しいか否かではなく、大切な家族との約束を破ってしまったからだった。だが、娘の想いを汲んでか、親御さんがバイクの購入を許してくれた。
「雨の日は危ないから乗っちゃダメとか、いくつかの条件はつけられました。何処で何をしているのかと心配するので、スマホの位置情報を親と共有しています。連絡があっても、走っていると返信できないじゃないですか? なら、勝手に確認して! って(笑)。最近は、あまり口煩く言われませんね」
自分勝手を通すのではなく、家族の理解を得られるように、最大限の努力を尽くす。坂田さんの誠意が伝わったのか、親御さんのバイクへの理解が深まってきたようだ。
坂田さんは現在大学四年生、この春には就職が決まっている。社会人として自立すればバイクライフはさらに大きく広がるだろう。
「大型二輪免許は欲しいですね。916系のドゥカティや、モト・グッツィV7とかが気になります。アナログメーターの、電子制御を前面に押し出さないバイクが好きなんです。あ、ニンジャは手放しません! あの子と一緒に、日本全国47都道府県を走るのが夢ですから。ニンジャは、動かなくなっても手放す気はありません!」
2000年、東京都出身。父、母、兄の、仲の良い四人家族で育つ。理系女子で、大学では卒業研究に追われる日々。特技は小学生から大学生まで取り組んだ硬式テニス