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[アニメ聖地巡礼]ふらいんぐうぃっち

(BikeJIN2022年11月号より抜粋)

二次元マニアを指す呼称として80年代に誕生した「ヲタク」という言葉
インドア派と思われがちだが、好きな作品をきっかけとした彼らの行動力はスゴい
そんなヲタクの一人である私がハマっているのがアニメツーリズム
今回の舞台は、リンゴの生産量日本一の弘前市だ

見慣れた景色はもちろん、一度でも訪れたことのある場所がアニメに登場したときの興奮は、やはり特別なものだ。なんとなく記憶の片隅にある風景と合致するが、果たしてここはどこだっけ? などと悩むことの方が多いが、しばらく観ているうちに「あそこか!」と正確に思い出すことも稀にあり、あらためてバイクツーリングとコンテンツツーリズムの親和性の高さを実感している。

さて、今回取り上げるのは、青森県弘前市を舞台とした漫画「ふらいんぐうぃっち」だ。この作品を初めて知ったのは、東京モーターサイクルショーの自転車版、サイクルモードの弘前市のブースだった。地方自治体によってはサイクリストに的を絞った誘致に積極的で、弘前市もその1つ。2016年4月からこの作品がアニメ化されるにあたり、主人公の木幡真琴を大きく描いたクリアファイルと、コミックスに登場する場所を一覧にした非常に詳しい聖地巡礼マップを配布していたのだ。

実はこの前年、私は母親とその友人を連れて東北地方をドライブしており、ここ弘前市の主だった観光地にも訪れている。もらった聖地巡礼マップを見てみると、去年ここで記念写真撮ったじゃん! といった場所がいくつもあった。そんなきっかけからこの作品に俄然興味が沸き、すぐさまコミックスを全巻購入。間もなく始まったアニメにもドハマリし、結局2年連続で弘前へ。

真琴のクラスメイト、石渡那央の実家として登場する石場家住宅。ここも国の重要文化財であり、今も酒屋として営まれている。真琴と千夏が竹ぼうきに乗って店の前に降り立つシーンが、この写真とシンクロする
凜とした空気が漂う岩木山神社。アニメでは春の運び屋さんが登場するシーンで使われている。写真は国の重要文化財に指定されている楼門で、1628年(寛永5年)に建立

タイトルに「うぃっち」と付いていることからも分かるように、この作品は主人公の真琴をはじめ多くの魔女が登場するが、基本的には一般人との生活を淡々と描いた広い意味での日常系である。原作者の石塚千尋先生が同市の出身で、弘前の名所や風景が緻密に描かれているのも魅力の1つだ。

さて、私はアニメ放映前と放映後に2年連続で彼の地を訪れたわけだが、たった1年でこんなにも変貌するのかと驚かされた。まず玄関口であるJR弘前駅の構内には巨大なポスターが貼られ、弘南バスのバス停標識板には主要なキャラクターが登場。さらに弘南鉄道がラッピング車両まで走らせる(車両の中には真琴が飛翔する際に使う竹ぼうきも)など、妥協のない便乗ぶりにファンとしては嬉しくなってしまった。

住宅街の何の変哲もない場所にポツンと立つバス停看板。真琴が最初に弘前市に降り立つ場所で、放映当時はこんなイラストが描かれていた
喫茶コンクルシオのモデルとなった藤田記念庭園内の喫茶店をはじめ、弘前市内はアップルパイを出す店が非常に多い

聖地巡礼をして感じたのは、この作品で感じられるゆったりとした空気感が、現地でも同じように漂っていたことだ。これは作品を知る前には気付かなかったことであり、アニメツーリズムの醍醐味だと思う。

結局、この作品を通じて弘前市が好きになり、2019年にも再度訪れている。この年は北海道ツーリングの途中で寄ったので長居しなかったが、69のカーブが続く珠玉のワインディング、津軽岩木スカイラインを存分に楽しんだ。作品と合わせてぜひ弘前の魅力に触れてほしい。

ライダーなら一度は走りたい津軽岩木スカイライン。バイクの通行料金は1050円と高めだが、上りも下りも走りごたえは十分。オススメだ!

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