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[アニメ聖地巡礼]ゴールデンカムイ~旭川・網走編~

(BikeJIN2022年10月号より抜粋)

二次元マニアを指す呼称として’80年代に誕生した「ヲタク」という言葉
インドア派と思われがちだが、好きな作品をきっかけとした彼らの行動力はスゴい
そんなヲタクの一人である私がハマっているのがアニメツーリズム
今回の舞台は、旭川と網走にある博物館だ

 ツーリング中、旅行ガイドブックに載っている人気スポットへ寄るのはあまり好きではない。単に人混みが嫌いなのと、あとはライダーっぽい格好のまま乗り込んで、その場の雰囲気を壊したくないというのもある。ゆえに、博物館やテーマパークのようなところへ行くことはほとんどなかったのだ。ところが……。

 前回に引き続き、今回も取り上げる漫画「ゴールデンカムイ」の聖地巡礼において、その意識がガラリと変わったのだ。ここに紹介する二つの博物館、見学といってもせいぜい小一時間だろうと思っていたら、気が付けばどちらも3時間弱経っていて、次のキャンプ予定地を変更したほどだ。逆に言えば、各種史料にそこまでの興味を持たせてくれたのがゴールデンカムイであり、作者の野田サトル先生には感謝しかない。

 まず最初に紹介するのは、北海道旭川市にある北鎮記念館だ。ここは陸上自衛隊の広報施設で、旭川駐屯地に隣接している。北鎮と聞いてピンと来たあなたは鋭い! そう、ここは「北鎮部隊」とも呼ばれていた旧陸軍第七師団と、その前身である屯田兵、陸自第2師団に関する資料が約2500点(!)も展示されているのだ。入館して最初に目に飛び込んでくるのは、ホンモノの陸軍少将軍服。肋骨服とも呼ばれており、鶴見中尉に出迎えられたのかと思ったほど。付け加えると、実際にこれを着用されていたのが鶴見数馬氏という方と知り、もう何が何だかという状態に。ほかにも、作品に登場した銃や刀剣、衣類が豊富に展示されていたり、小さいながらもパルチザンの写真があったりと、次は朝から丸一日見学する! と誓った。

陸上自衛隊旭川駐屯地の敷地内にある北鎮記念館。旧陸軍第七師団が1901年に札幌からこの地へ移駐。後ろに見える柱は、当時の師団司令部の正門に建てられていた門柱だ
1869年の開拓使設置から1945年までの第七師団の行動や人事について記された資料。終戦直後に焼却を命ぜられたが、当時の曹長が油紙に包み畑の中に埋めて保管。1962年に自衛隊に寄贈された第一級の原本だ

 そして、何よりうれしいのはヲタク大歓迎なことだ。コスプレコンテストを主催したり、今はコロナ禍で休止中だが第七師団の衣装を貸し出したりと至れり尽くせりだ。さらに、1階の売店スタッフもガチなゴールデンカムイのファンで、グッズも豊富に並んでいる。第七師団が好きな方はぜひ!

北鎮記念館には開拓と防衛に関する貴重な資料が豊富だ。写真は歩兵上等兵の軍服であり、ほかに鶴見中尉風の肋骨服も。

 そしてもう一つが、道東における定番スポットの網走監獄だ。作品前半のクライマックスの地であり、舎房に入った瞬間、屋根から白石由竹が忍び込んでくる姿が脳裏に蘇ってきた。ここを訪れたのは一昨年の9月で、たまたま「二人の脱獄王」というミニ企画展示が催されていたのだ。脱獄王の一人は白石由竹のモデルとなった白鳥由栄で、何とインタビューに答えた当時の肉声を聞くことができた。白石は推しキャラの一人であり、これには大感激した。

正式名称は博物館網走監獄で、写真は赤レンガ門。入場料は大人1500円で、10%のネット割引券も用意。広大な駐輪スペースが好印象だ
土方歳三と犬童典獄が鎖につながれながら戦ったのが、網走監獄内にある教誨堂だ。一歩足を踏み入れた瞬間、そこには凜とした空気が……

 二つの博物館は、屯田兵も囚人も北海道の初期インフラ整備を担ったことを今に伝えている。一方、各地にあるアイヌの資料館に行くと、また別の印象を持つだろう。この作品は双方の視点で描かれており、だからこそ高く評価されているのだ。

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