ヤマハ・セロー歴20年超ライダーのバイクライフ「用途に応じたカスタムで個性的に仕立て上げる ~エンジン、フォーク編~」
2019年末、セローがおよそ35年の歴史に幕を下ろした
初登場時には軟弱バイクなどと揶揄されたりもしたけれど
結果的には多くのファンを獲得し、驚異のロングセラーモデルとなった
そんなファンのひとりとしてボクも22年間、旅の友として乗り続けている
Writer
モーターサイクルジャーナリスト
栗栖国安
子供のころから旅好きで、鉄道もバイクも旅を楽しませてくれるものだと考えて付き合っている。所有するバイクは現在3台。そのうち高速道路を走行できる唯一のバイクがセロー225WEである。著書に『バイクで行く廃駅・廃線めぐり』(山と渓谷社)がある
旅を快適にしてくれる装備はちょっとずつ増やしているところだけど、このセローに乗り始めたころから、エンジンとかサスペンションといったハード面でも快適性を高められないものだろうかと常々考えていた。
エンジンについてはいたずらにパワーを上げるつもりは毛頭なかった。最高出力20㎰の単気筒エンジンではたしかに高速走行でムリが効かないけれど、100㎞/h巡航できるから問題なし。ただし中間回転域(4000~6000回転あたり)のトルクが細い気がしていたので、ここを改善できたらいいなと思った。
そこで、東京町田にある『モーターサイクルドクター須田』さんにお願いして、ストリートでの理想的なエンジン特性を実現するIPTOS(イプタス)チューンを施してもらうことにした。ボアアップなどはしないで吸排気の加工でトルク特性を高めるステージ1を行った。吸排気口を拡大し、ベンチテストをしながらキャブレターセッティングを施していくのだが、ジェット類を変えてはテストするを繰り返して最良の状態にしていく。ボクのセローの場合、やはり中回転でのトルクが落ち込んでいたので、そこをフラットな特性に仕上げていくことを目指した。結果、中回転域のトルクを1.5倍に高めることができトルクの谷をなくした。おまけに最高出力も21㎰へとちょっとだけ上がったのである。実走したところ、発進加速が良くなり、60㎞/h前後の速度域でのコントロール性が向上した。一般道を走るうえで扱いやすくなったのである。ツーリングでは急坂を上る峠道を走ることも多いから、トルクアップは快適性につながったと実感した。
次に、乗り心地を改善するため前後サスペンションに手を加えることにした。そろそろフロントフォークのオイル交換もしなくちゃなとも思っていたときだったので、オーバーホールもしてもらうことにした。お願いしたのは昔から付き合いのあった東京調布のMHプロダクツさん。サスペンションチューニングでは海外にも名の知れたショップだ。
聞けば、分解できないはずのリヤショックも独自に加工して分解オーバーホールができるのだという。ならば前後サスペンションの乗り味が別物になっていることが理解できた。高価で高性能なサスペンションに換装したんじゃないか、と思ってしまうほど抜群の衝撃吸収性を発揮してくれたのである。以前は路面の荒れたところを通過するとグワングワンと3回くらいは車体が揺れていたのだが、オーバーホール後は1回で収束してしまう。しかも乗り心地までよくなっているのだ。
高速道路のインターチェンジなどの回り込んだカーブを走った際にも、ちょっとした段差を通過するとヨーイングを発生してしまっていたのだが、それがまったくなくなりコーナリング安定性が向上。スポーティさも高まったのである。
こうして軽快性と安定性が高まったセローは、ツーリングでより安全に快適に走ることができるようになった。なのでボクは、定期的にサスペンションのオーバーホールを行っている。