ハーレー和尚のバイク説法「情けは人の為ならず」
本瀧寺のシュウケンです。以前、お伝えしました豊能警察署さんの秋の交通安全イベントが、先日、当寺で行われました。交通安全協会さんなどのご協力もあって、当日は事故やトラブルも無く、無事終えたことを感謝します。
来られた方の中に気づかれた方もいらっしゃったと思いますが、当日、会場には大阪交通災害遺族会の募金箱が設置されていました。『大阪交通災害遺族会』とは交通災害、つまり交通事故で大切な家族を亡くされた人たちを支援する団体です。交通安全運動や交通時事故に遭われたご家族の相談窓口など、いろいろな活動をされています。その中の一つに交通遺児の育英事業があります。事故で一家の大黒柱などを失ったご家庭の中には、経済的な理由で進学を諦める子供もいると聞きます。そんな子供たちのために進学の際の経済的な支援も行っています。
『情けは人の為ならず』。よく聞く言葉ですが、意味を勘違いしている人も多いみたいです。困っている人に対して情けをかけると、その人の成長のためにならない。そう思われている方がいますが、じつは違います。人に情けをかけると、それが巡り巡って、最終的には自分の元に良い報いとして返ってくる。これが本来の意味なのです。仏教で言う『因果応報』と同じような意味です。仏教の考えに、『縁起』というものがあります。この世のすべてには因“原因”があって、その原因にいろいろな“縁”が関係して、今に続きます。例えば花。種という原因があって、それに水や太陽の光、栄養などいろんな要素、つまり“縁”が関係し、最終的に花を咲かせるという結果が起きます。
先のイベントの時、何人かの方が募金にご協力くださいました。仮にその方自身またはご家族が、将来大病を患って大変苦しい思いをするとしましょう。ところが、ある日、特効薬ができて病気が治ります。話を聞いてみると、その特効薬を開発したのが、遺族会の支援で進学した交通遺児の一人だった、なんて話があるかもしれません。また進学して猛勉強し、この世から一切の事故をなくす、なにか画期的な発明をする子がいるかもしれません。「そんなこと絶対ない」って断言できる人はいるでしょうか? 私のような年とった人間と違い、子供たちは、その存在自体が“因”という大きな可能性の塊なのです。その子たちの可能性を育てる、さまざまな“縁”の一つが今回の募金だったのです。
交通事故は誰一人幸せにすることはありません。今回のような交通安全イベントを通して、すべてのライダーが事故に遭わず、楽しいバイクライフを過ごしてほしいと思います。しかし、残念ながら、この瞬間にでも交通事故が起きています。そしてそれが原因で、苦しまれている方がいます。そのことを心の片隅に留めておいてくだされば幸いです。
合掌