[アニメ聖地巡礼]ろんぐらいだぁす!
(BikeJIN2022年5月号より抜粋)
二次元マニアを指す呼称として80年代に誕生した「ヲタク」という言葉
インドア派と思われがちだが、好きな作品をきっかけとした彼らの行動力はスゴい
そんなヲタクの一人である私がハマっているのがアニメツーリズム
今回は瀬戸内しまなみ海道が登場する作品だ
日本におけるテレビアニメの制作本数は年間約300作品で、その現場を支えるのがアニメーターだ。彼らの作業時間は1日平均約11時間、にも関わらず新人の平均年収はわずか約百数十万円という、雑誌編集者以上(!?)に過酷な労働環境なのだ。
こうした低賃金に加えてタイトなスケジュールなどもあり、そのしわ寄せが作画崩壊という形で現れることが稀にある。作画のクオリティが著しく低下している様子を指す言葉であり、今回取り上げるアニメ「ろんぐらいだぁす!」も、その現象でSNSを賑わせた作品の1つだ。
国道標識が赤い、グルメシーンなのに料理がまずそう、縮尺がおかしい、モブ(群衆)の顔が全員同じなど、タイトなスケジュールの中で修正が間に合わなかったと思われる箇所が多々発生。さすがに厳しかったのか、全12話のうち第3話と5話が放送延期となり、それに押し出される形で第11話と12話が1カ月以上遅れて放映される事態に。
さて、アニメ好きにはやや不名誉な記憶を残したこの作品。女子大生の主人公が自転車と出会い、長距離サイクリングの楽しさに目覚めるというのが物語の主軸で、三浦半島をはじめ、大垂水峠、ヤビツ峠、日光いろは坂など、関東のライダーがよく知るツーリングスポットが次々と登場する。そして、アニメ最終話で主人公を含む女子大生5人のチームが走るのが、サイクリストの聖地として世界的にも有名な、広島〜愛媛間の瀬戸内しまなみ海道なのだ。
BikeJINの特集「ライダーが選んだ絶景ロード」においてランキング8位に入ったこともある瀬戸内しまなみ海道。自動車専用道路の西瀬戸内自動車道を走るだけでも多島景観を楽しめるが、メインディッシュはなんと言っても新尾道大橋以外の各橋に併設されている自転車・歩行者専用道路からの圧倒的な眺めである。
ここは125㏄以下の原付二種まで通行でき、しかも各橋の通行料金は50〜200円と格安。ちなみに自転車も同額だが、企画割引として令和6年3月31日まで期間限定で無料化されるなど、しまなみ海道におけるサイクリストの歓迎ぶりがこのことからも分かるだろう。
私は、主人公たちと同じ体験を得たいがために、最終話が放映された翌月の17年3月に、新幹線で新尾道駅まで自転車を運んでいった。コロナ禍前だったのでインバウンドで賑わっており、アジアだけでなく欧米系のサイクリストも多く見かけ、本当に瀬戸内しまなみ海道は世界的に知られた聖地なんだと実感した。
広島県尾道市から愛媛県今治市までの距離は約60㎞。主人公たちは生口島にある住之江旅館で1泊しており、私もそれにならったが、それぐらいのペースで各島をのんびり巡るのをオススメする。調べたところ、原付二種以下のバイクをレンタルしているショップがいくつか見つかったので、次はヘルメットだけ持参してそれを利用した旅をしてみたい。